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70.転生の真実?

『お察しの通り、オーグラドは召喚魔法を使って日本人をこの世界に転生させているらしい』

 らしい、ね。ある意味正直だな。

『これは部隊長以上でないと知らない情報だ。貢献ポイントが高い奴も知ってるだろう。裏を取って貰っても構わないよ。ふう……』

『自信満々のとこと何だが、俺もエスタも魔法陣の上で目覚めたりしなかったぞ』

 エスタが隣で頷いている。それはこれから話す、とジュンジがやや煩そうに声を飛ばして答えた。。

『オーグラドは元々奇妙な生物が生まれやすい土地柄らしい。その奇妙な獣を研究している魔法使いがフィールドワーク中に転生してきた日本人をみつけた。その魔法使いは日本人を故郷に帰してやろうと研究を始めたらしい』

 それはまた親切な奴だな。

『それが同盟の前身だということだ』

 ふーん……

『……』


『終わりかよ!?』

 黙りこんだジュンジに俺は思わず突っ込んだ。

『同盟の研究員から聞いたのはそれまでだ。これからは色々聞いた話しを継ぎ合わせた僕の推測になる。ふう……』

 続きはあるが、ちょっと怪しげだなぁ。

『日本人が転生しやすくなる魔法が存在し、オーグラドで使用されているのは確実だと思う』

『なんでそう思う?』

『2、3日後にどこそこの山近辺で日本人が生まれるから回収してこい、と言われるからさ。ふう……』

『転生を探知できる魔法を使ってるのかもしれんぞ?』

『国中という広大な範囲に効果を発揮し続ける魔法なんて存在し得ない。そこに居る人間は魔法使いだろう? 聞いてみるといい』

 ミリルフィアをちらっと見ると、何度も頷いていた。そんなものなのか……

『僕も自分で使えないから、これも聞いた話しだけどね。侵入者を探知する魔法は存在するけど、効果範囲を広げると必要なルーンの数が割に合わないほど増加するんだそうだ。どんなに頑張っても部屋1つ……宝物庫とかの警報に使うのがせいぜいだってさ』

 またミリルフィアが頷く。

『なるほど、だから召喚魔法を使ったから日本人が生まれてくるのがわかるんじゃないか、ってことか』

『そういうことだ。精度が悪いのか、狙った場所に転生させることが難しいみたいだけどね』

『俺は召喚位置が大きく反れたってことか?』

 オーグラド国境に近いっちゃ近いが、俺はキルグフィッツのココ村の近くで生まれたぞ。

『アルスさんは多分天然ものだと思う』

 人をマグロみたいに言いやがって。

『さっき、転生してきた日本人を見つけた魔法使いの話しをしたけど、つまり何もしなくても転生してくる日本人は居るんだ。そしてそれはある程度の地域に偏る』

 ははぁ、なんとなく読めてきたぞ。

『ココ村の北から東に接している山脈。それが日本人が生まれやすい土地って訳か?』

『トルム山脈ってこっちでは呼んでるよ。この山脈近辺では日本人が生まれやすいから、オーグラドの患者が商隊なんかに紛れてウロウロしてるのさ。僕達みたいな外回りが直接出向くこともある』

 ココ村を襲った奴らがそれか。商隊に紛れて偵察し、俺を見つけたから……んん?

『おい、今偵察って言ったが、ココ村はいきなり襲われたぞ。お前が話した通りなら、まずは挨拶から説得なんじゃねぇのか?』

『僕が襲った訳じゃないからねぇ……だけど、手荒な事を好んでやる奴らもたまに居るよ。そういう事なんじゃない? ふう……』

 ちっ、なんかスッキリしねぇな。つか、ジュンジがさっきからため息つきまくって非常に耳障りなんだが。


『ちょ、ちょっと待ってください!』

 俺がため息止めろ、と凄む前にずっと黙って聞いていたエスタが会話を遮ってきた。

『アルスさんが突っ込まないので、聞きたいんですけど。初めは日本人を帰してあげようって研究してたはずなのに、なんで今は日本人を召喚してるんですか?』

 あ~、特殊な能力や知識に目が眩んだんじゃないかなぁって思ってスルーしてたわ。

『日本人を召喚してるって聞いた訳じゃないから理由も聞いてない。だけど、僕たちの力や知識が使えるのを知って方向転換でもしたんじゃない? ふう……』

『そう、なんですか……』

 エスタがしょんぼりと俯いた。善意を信じたいんだろうが……


『で、日本人の能力や知識を使って絶賛侵略中って訳だ?』

『随分と向こうは好景気みたいだよ。再現に時間のかかる技術も多いけど、それが実を結び始めてるんだと思う。それで気が大きくなって長年の悲願である打倒キルグフィッツ、となったんじゃないか? 分かり易いね』


 本当に分かり易いねぇ。まったく。しかし、これで結構スッキリしたな。大体想像通りにヤバい感じだ。

 

『なあ、ミリルフィア。日本人が生まれてくる土地でキルグフィッツ領であるココ村って結構重要な拠点なんじゃねぇの?』

『そんな気がします。それを知ってれば作戦の立て方も……あ』

 ミリルフィアが固まった。

『どうした?』

『あの、日本人の方が生まれやすいトルム山脈ですが、その大半はオーグラドの領内にあって、キルグフィッツ領にはココ村辺りにちょっとだけ出っ張ってる感じなんですよ』

 む、なんだいきなり地理の話か?

『それがどうした?』

『アッセンやココ村をオーグラドに占領されたら、オーグラドが日本人を独り占めできますよね……』


 あ。


『なるほど、確かにそうだね。今回の戦争ってただの領土拡大欲求だと思ってたけど、その線もありそうだ。為になったよ。ふう……』

『東の前線は大丈夫なのか?』

『大丈夫です。叔父様が兵を率いて守ってらっしゃるのですもの!』

 叔父様……ああ、リーディンか。頼りにしてるんだろうが、日本人とかち合ったら負けると思うぞ。


『とにかくヤバい事態だということは確認できた。休んでないで、とにかく早くこの事を権力を持ってる奴に伝えた方がいいぞ』

『そ、そうですね。アルス君みたいな子が何百人もきたらどんなに叔父様が強くても負けてしまうかもしれませんし』

 リーディンは俺1人で十分倒せるよ。そうじゃなくて。

『能力もヤバイけど、日本人の知識がオーグラドに広まってるのがヤバいんだって! さっきも言っただろうが』

『そんなにですか? 確かに銃でしたっけ? あれは厄介だったという話しですが……』 

 ええい、ゲームで言うところのチートをオーグラドが使ってるってどう言ったらいいんだ……!


『……ミリルフィア様、た、大変な知らせが届きました!』

 いきなりアッセンの村長さんの声が飛んできた。

『どうしました? 私には何も聞こえませんでしたが』

『こ、声ではなく伝令の早馬が前線から来まして、ぜ、前線が』

 おいおい、まさか。

『ひ、東の前線が崩壊したとの事です。こちらにお戻りください……アッセンを脱出して頂きます』

 くそ! アッセン東の前線にはフィーナの父ちゃんやフィンが行ってるんだぞ!?


『大変なことになったな。ふう……』

 ジュンジ、お前そのため息を止めろ、そう言いかけた時、俺はふと、納屋の中を薄く薄く漂う陽炎に気がついた。なんだ、これは?

『ふう……』

 ある事がわかって見回すと、ジュンジがため息をつく度にジュンジの方から流れてきて……こいつ!?


『では、さようなら』


 納屋が爆発した。

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