おじいちゃんと家族
小学生の悠は、田舎に住むおじいちゃんが大好きだ。しかし、おじいちゃんは癌で死んでしまう。周りに愛され、周りから愛されたおじいちゃん。家族の愛を感じる、そんな涙が止まらなくなる物語。
これから話すのは、おじいちゃんと僕の話。
そして、おじいちゃんの大切な家族の話。
涙がこぼれてしまうかもしれない。それでも、僕は誰かに聞いてほしいんだ。
2021年、7月20日、僕のおじいちゃんは死んだ。
おじいちゃんは、山口県の田舎の町で生まれ育った。4人兄弟の長男として生まれ、写真を見る限り、昔はなかなかのイケメンで、運動神経抜群だったらしい。学生時代、体操の大会に出場した時の写真を、自慢げに見せられた記憶がある。おじいちゃん家の周りを散歩していると、お母さんがよく、
「母さんが低学年の頃までは、じじ、このれんげ畑でバク転してくれよったんよ」
そんな昔話を何度も聞かされた。そんなおじいちゃんも、僕が生まれる頃には、丸々太ったただのおじいちゃんで、僕や妹たちが逢いに行くと、嬉しそうに一緒に遊んでくれた。
近くの川に遊びに連れて行ってくれたり、夏休みの木工工作も手伝ってくれた。大工さんであるおじいちゃんの、本領発揮だ。
ビールもよく飲むし、煙草もたくさん吸っていたが、僕が生まれてからは、家の中で煙草を吸わなくなったらしい。孫の力は偉大なんだって、母さんが言っていた。優しくて、子供が大好きな優しいおじいちゃんだ。
おじいちゃんには、僕の母さんを含め子供が3人と、孫が5人いる。
まず、僕の母さん36歳。
次に、おじさんが2人いて、
慎しんくん34歳、達たっちゃん32歳。
おばあちゃんは5歳年下で、比較的早く結婚し、子供を授かり、ずっと生まれ故郷に住んでいる。
おばあちゃんは、56歳。銀行で働いていた時期もあるそうだが、母さんが生まれてからは、自営業であるおじいちゃんの手伝いをしていた。おじいちゃんが思うように働けなくなってからは、近くのスーパーで働き、家計を切り盛りしている。おじいちゃんの病院への付き添いや、少しでも僕らに時間を合わせるため、夕方からの出勤を選び、夜遅くまで働いているパワフルおばあちゃん。
僕の母さんの名前は絵美子。
当時は、名前に「子」の文字を付けるのが流行りだったと聞いた事がある。おじいちゃん25歳、おばあちゃん20歳の時に生まれた。
愛情たっぷり受けて育った母さんは、高校卒業後、レストランで仕事をし、そこで当時アルバイトをしていた父さんの悠太と出会い結婚した。父さんの仕事の都合で、2年間東京で生活したのち、僕の妊娠を機に父さんの地元に戻った。
現在は、2歳年上の父さんと、僕と妹達2人の5人家族。僕の名前は悠。
小学5年生で、長男。自分では、結構真面目でいい兄さんな方だと思うけど、たまに妹と喧嘩して手が出ちゃう。でも最近は、「そろそろ母さんに怒られそうセンサー」が働き、上手い具合に母さんの怒りを回避できたりもする。
そして、妹の葵あおいは小学2年生で8歳。とにかくよく食べて、どんどん育っている。1年生の冬に、アスレチックから落ちて足を骨折したが、
「じじと同じ松葉杖じゃ~ 」
と、嬉しそうに使いこなしていた。最後に、幼稚園の年少さんで、まだまだ可愛い桜さくら、4歳。僕が1年生になったばかりの頃、家族みんなで桜の出産に立ち会った。母さんは、
「痛い~痛い~ 」
うるさかったけど、それでも感動したのを覚えている。
僕の家から、おじいちゃんの家までは車で40分の距離だったが、下の妹が生まれるまでは、母さんは僕達を連れてよく泊まりに行った。父さんの休日出勤や出張が多いためだ。ただ単純に、母さんは実家にいると楽しそうだったし、楽だったんだと思う。おばあちゃんと、大きな声でおしゃべりばかりしていた。
2人とも、話し声が豪快で、とってもでっかい声なんだ。その間、僕らはおじいちゃんと畑で野菜を収穫したり、庭でトンボを採って遊んでもらったりした。田舎だから、春にはタケノコ掘りや山菜を採ったり、夏にはカブトムシや川で鮎だって採れる。流しそうめんだって、かなり長めのそうめんスライダーを楽しめる。秋にはおじいちゃんの栗山で、栗の収穫のお手伝い。冬には、いっぱいの雪で雪遊びをしたり、お正月には自分達で作ったお餅を食べる。
こんな楽しい場所で、生まれ育った母さんに、お礼を言いたいほどだ。
叔父さんの慎くんは、おじいちゃんに似てぽっちゃり癒し系。結婚はしてなくて、おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に暮らしている。僕らがおじいちゃんの家に遊びに行くと、慎くんの汚い部屋でゲームをさせてもらったりできる。適当でゆるい感じの慎くんは、大人になっても僕の母さんに怒られたりしている。
一方、達ちゃんはスラっと細身で、しっかり者のイメージ。結婚してカッコいい新居を立てたばかり。そして、達ちゃんには、小柄で可愛らしい澪みおちゃんという奥さんの他に、陽菜ちゃん6歳、蒼くん4歳がいる。
陽菜ちゃんは、澪ちゃんに似て小柄でそこらの子役の子より可愛い。蒼くんは、達ちゃんの小さい頃の写真そっくり。特に頭の形が似ていて、遺伝子ってすごいんだなって思い知らされるほど。
子供の僕から見ても、幸せいっぱいの家族でうらやましいくらいだ。間違っても、今の僕が不幸な訳ではない。大事な家族に囲まれて、おじいちゃんを失った今でも、やっぱり僕は幸せななんだ。それは、おじいちゃんも同じだと思う。
大切な家族に囲まれて、長い時間をかけて出来上がった幸せは、そう簡単に不幸へと変わったりはしない。幸せって、そう簡単に出来上がってはいないと、僕はそう思うんだ。だから僕は、
「おじいちゃんは幸せだったんだ。そして今も、幸せでいてくれている」
そう思って、おじいちゃんの死を、必死で受け入れていこうと思っている。
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