第九話 破局
*秋も深まり、今年も残す所1ヶ月あまり。直也は、年末に向かって仕事はどんどん
忙しくなっていく。毎日残業が続いている。優子の事は気がかりではあったが、仕事を遅くまでこなす毎日であった。
優子は、大きな決断をする。いったい優子に何があったのか?優子にどんな心境の変化があったのか?直也は、まだ知ることはない。
直也が予想もしていない展開が待ち受けていた。さてこの先、優子と直也はどんな展開になるのだろうか?その新たな展開は、突然の1本の電話からはじまったのである。
12月も中旬が過ぎた金曜日の12時半頃に、直也が店で仕事をしていると、1本の電話がなった。レジの女性が出たら、「勤務中恐れ入ります直也さんお願いします」との電話で、レジの女性は、直也へと取り次ぎ電話に出ると。優子からであった。
<直也>
・もしもし。お電話変わりました。
(いつも通り元気に電話に出る)
<優子>
・仕事中ごめんなさい。直也君?優子です。
(声のトーンは普通に聞こえた)
<直也>
・はい。直也です。優子さんお久しぶりです。どうかしましたか?
(優子の声のトーン聞いてよい報告?と思う)
<優子>
・直也君。急で悪いけど、今日の夜って時間あいてる?会って報告したい事あるの。
(落ち着いて話す優子)
<直也>
・いいですけど、頑張って20時なら、会う事可能だと思います。それでもいいですか?
(きっと結婚?のよい話かなって?思う直也である)
<優子>
・いいよ。私も仕事で17時に終るから、それから電車でそっちに向かうから。
駅で待っているから。ごめんね。仕事中なのに。
(申し訳なさそうに話す優子)
<直也>
・大丈夫です。20時に駅で。改札出てクリスマスツリーの前で待ってて。
(ずっと残業続いているから今日は早く帰ると直也は決める)
<優子>
・うん。20時に待っているね。じゃ~また。
(優子が電話を切る)
*直也は電話を切った後、20時の約束に間に合うように、仕事をこなした。優子との待ち合わせの駅までは、職場から車で10分もあれば行ける場所にある。12月も中旬という事もあり、夜の冷え込みは厳しくなってきていた。
優子の勤務地は、直也のお店からは、車で1時間はかかる山沿いの小さな町で
ある。優子は17時で仕事を終えると、職場の前のバス停から、駅へと向かい、
18時半の電車で、直也の住む町へと向かった。直也の住む町の駅まで電車で50分の道のりになる。待ち合わせの時間の40分前には、優子は駅についた。駅のホームにおりて、階段を上り、改札を出た。駅の外には、大きなクリスマスツリーが飾られており、カップルの待ち合わせ場所になっていた。優子は綺麗なツリーを見上げていると、チラチラと雪が降ってきた。優子が待つこと30分。約束の時間10分前に、
直也は駅の駐車場に車を入れて、優子の待つツリーの前に急いだ。直也が優子を見つけた。
<直也>
・優子さん。こんばんは。お待たせしました。寒かったでしょ?と直也が巻いてきた
ベージュのマフラーを外して、優子の首元へ優しく巻く。
(寒い中待っていた優子を見て自然に手がマフラーにいった)
<優子>
・こんばんは。直也君ありがとう。マフラー暖かいよ。
(直也の優しさに優子は嬉しい気持ちになる)
<直也>
・優子さん寒いから、お店に入って。暖かいの食べようよ。何がいい?
(風邪ひかれたらと気遣う直也)
<優子>
・ラーメン食べたいな。ニンニク入り食べたら、暖かくなるよ。
(優子はニンニク入りラーメンが大好き)
<直也>
・駅裏にラーメン屋あるからそこに行こう。5分歩けばすぐだから。
(2人で歩きながらラーメン屋に向かう)
<優子>
・歩きながら優子は、直也君急にごめんね。どうしても会って話したかったんだ。
(優子は、表情も何かすっきりしている感じがした)
<直也>
・まずは、ラーメン食べて暖まろうよ。話はそれからにしよう。
(ラーメン屋について、カウンターに座りラーメンを注文する)
<優子>
・うん。そうだね。
(お腹すいてきたからね)
*2人で注文したラーメンを暖かいうちに食べる。優子は、ニンニク入りで頼んで、
美味しそうに食べる優子をみて、直也はホッとするのである。寒い中を待たせて、
どんな話?と思うだけでも不安なだけに、ラーメンを食べる優子を見て安堵する直也であった。ラーメンを食べ終えると優子が直也君、話してもいい?と言ってしゃべりはじめた。
<優子>
・どうしても、直也君に会って報告したいことがあったの。今まで色々私の彼の事で相談に乗って貰ったけど、結論から言うと彼とはこの前別れたんだ。
直也君にはかなり相談とか乗って貰って、結局別れる事になってしまって、申し訳なく思っているんだ。直也君が一生懸命私の為に考えて動いてくれたのにこんな結果になってしまって。一言どうしても会って御礼が言いたかったの。
(優子はすっきりした感じで直也に淡々とはなす)
<直也>
・え?別れたの?直也はびっくり!!して。思わず何で?もしかして俺のせい?と
優子に問いかける。
(結婚報告ではなく、別れたとの報告に直也はちょっと動揺)
<優子>
・直也君のせいではないから安心して。それに私もう吹っ切れた。直也君のお陰でね。
(確かに優子を見ると失恋した後には思えない)
<直也>
・俺のお陰で?吹っ切れた?俺何もしてないよ。
(コップを左手で持ち水を飲む優子の指には指輪がなかった)
<優子>
・直也君のお陰と言うのは、直也君と5月に初めて会って、夜の中庭を2人で散歩して、
初対面の人の胸を借りて涙して、私の話を真剣に聞いてくれて、私の彼とは全然違う性格を見せて貰って、私ね。彼が直也君のような性格ならいいのにと何度思ったことか。直也君には、心許せたと思うんだ。
直也君に彼に嫌な事聞いて貰ったのも、自分で聞くのが怖かったのも事実だけど、
普通は、私のお願いは引受けてくれないのが当たり前だと思ってたのに、嫌な顔しないで引受けてくれて。私ね。直也君のそんな姿を横で見て、他人に嫌な事頼んで、自分だけは普通にしているなんて出来ないと後から思ったの。だから、その時に決めたの。彼が私に対しての行動がなければ、もう別れようと決意したの。
そんな自分と向き合う勇気を教えてくれたのは、直也君だよ。
直也君が彼に電話で話してくれた、翌日に彼に呼ばれて会って話したのね。彼ね。
一番最初に、彼何て言ったと思う? 優子卑怯だな?だって。それ聞いて私ショックだった。
確かに直也君にお願いしたことは、卑怯かもしれない。でも私が悩んでいた回答が最初ではないし、それに私を一番に考えてくれていたのなら、言い方もあると思ったしね。それにもっと酷い事があったの。いつ挨拶に来てくれるのときいたら、今週末とその時言うから、両親に話したのね。父は、私が人より小さいから結婚なんてと心配してた。父を母が説得してくれて、週末に彼の挨拶を受けるといってくれた。娘の幸せを願わない親はいないでしょ。当日は、挨拶に来てくれるという事で、両親は料理も準備して待っていたのね。約束の時間に、彼は、スーツを着て玄関をあけて、茶の間に入り、両親には挨拶をすませたのね。そこまでは良かったけど、そこから全然結婚の話も何もせず、ただ無言のまま準備していた料理を口に運ぶだけで、何も話さないから、私がちゃんと言ってと!と怒り口調で言ったのね。でも何も言わず。
父が娘との事をどう考えているか聞いても無言で・・・。結局肝心な事を何も話さず、ただ料理食べにきただけ。私もあきれてさ。
もうそこで、私は、この彼とは別れようと決めたの。両親が挨拶にくると言う事で前日から準備してくれてたのに、裏切られた気持ちと両親に申し訳ないと思う気持ちでいっぱいになった。彼とは、話があるからと言って、挨拶の帰りに会社まで乗せていってと話して。会社の駐車場に着いて、別れ話をした。彼は別れたくないと言われたが、今日の挨拶でもう限界と伝えた。さよならと一言告げて、バス停へと向かう。
(優子の自宅は会社から更に山奥。車で50分の小さな村である。毎日バス通で会社まで通っていた)
彼と別れバス停まで向かう途中、彼に対してではなく、両親に対して申し訳ない気持ちになって、涙が止まらなかった。完全に自信なくした事もあるけど。彼と別れた後にバスで自宅に戻る途中、どんな顔して両親に顔向けしたらいいか分からず、ダムが見える場所で下車して、しばらくそこで泣いたの。涙は両親に対して申し訳ない気持ちで中々止まらなかった。ダムに向かって婚約指輪を外して、投げ捨てた。このまま・・・。私も・・・・。と1度は自殺も考えた。でも直也君の言葉が頭を過ぎり思い留まったの。死ぬきなら何でも出来るとも思ったしね。
自宅に戻って両親に謝ると、両親は何も言わず、気にするなと肩を2回ポンポンと叩いて目を見て微笑んでくれた。私嬉しかった。だから、もう彼の事は、吹っ切れたんだ。直也君に色んな事を教えて貰ったよ。ありがとうね。これが話したかった全部だよ。
<直也>
・色々大変だったね?直也は、優子の気持ちを考えると、慰める言葉が見つからなかったが、必ずいいことあると信じて頑張りましょうだけ伝えた。優子さん遅いから送るよ。
(時計を見たら、21時過ぎていた)
<優子>
・悪いからいいよ。電車最終まだ間に合うと思うから。
(バスの最終は、間に合いそうもなかった)
<直也>
・いいから。送るから。どうせ2人とも彼氏・彼女いないフリーでしょ?
それに、今から電車・バスと乗り継いだら何時に家着くかわかんないし。
ただ、ラーメン代は優子さんのおごりね(笑)
<優子>
・ラーメン代がタクシー代ね?
<直也>
・随分安いタクシーだね(笑)
*優子のおごりでラーメンをご馳走になり、2人にラーメン屋を出て、雪が舞う中、駐車場へと向かう。直也は、駐車場につく前に自販機で暖かいコーヒーを2本買って、優子に1本渡して、駐車場で優子を助手席に乗せて、車が温まるのを2人で待った。
駐車場から待ち合わせしたクリスマスツリーが見えて、カップルが腕を組んで眺める様子が見えるのであった。すると優子から、直也君クリスマスの予定は?と聞かれ、俺仕事ですと答えた。優子さんは?と直也が聞くと、フリーです(笑)って?別れて日が浅いのに誰かいたらびっくりでしょ?(笑)直也は確かにとうなずく。
直也が、お互いフリーだから来年いいことあるように、初詣一緒に行こうかと誘う。
優子もそうだね。一緒に行こうと言ってくれた。31日20時に駅待合室で会う約束をして。直也は、優子と夜のドライブをしながら、自宅まで送っていった。
*さてこの2人は、今後どうなっていくのか?初詣の約束をして、また新たなる展開が待っている。




