第一話 すべてはこの出会いから始まった
初投稿です。宜しくお願いします。
人生の終着点。
その景色は俺にとって、どのようになものなのだろうか?
綺麗な星空のような輝かしいものなのか、それとも光もない真っ暗闇の景色なのかだろうか。
少なからず、あの頃の俺はそんな事を考えてもいなかった。
もし、その当時の俺に将来の景色が見えていたのなら道を間違う事なく幸せな人生を送る事が出来ていただろう。
叶うことなら、あの時に戻りたい。そう思いながら夜の星空を見上げる。
その度、俺の目からは大粒の涙が零れ落ちる。
最愛の妻のために今は泣いてはならない。涙を流しちゃならない。
そう思っていた。だけど、涙が止まらない。
「なぜ、俺はあの時、ああしなかったんだ……」
そんな後悔だけが綺麗な星空とは裏腹に頭を過ぎる。
そう、すべての始まりは今から30年前――俺こと、直也と優子との出逢いから始まった。
***
当時19歳だった俺は、5歳年上の晴美(24歳)と直也の職場で知り合い、付き合っていた。
直也は身長が高く180cmで仕事熱心。晴美は、一人っ子でちょっと我がままなお嬢様だ。
ある時、晴美から5月の連休に、私の高校時代の親友優子と優子の彼の4人で温泉旅行に行こうと誘われた。直也も晴美の親友なら「いいよ」って返事をした。
旅行当日は、現地集合と打ち合わせしていたので、約束の時間に間に合うように向かった。
温泉旅館は、新緑に囲まれたとても素敵な所で、チェックインを済ませて、夕食の会場へ2人で移動した。扉をあけると親友の優子と優子の彼が待っていた。
2人の印象は、優子は、130cmくらいで子供?と思うくらい背が小さくとても驚いたが、顔は大人でとても可愛いい女性でした。優子の彼は年上の45歳で職人らしく無口で、直也から見たら自分の父親くらい年の差もあるし、21歳も年上の彼?とびっくりするような組み合わせに、驚きを隠しきれなかった。
挨拶も済ませて4人で楽しい時間を過ごし始めた。お酒も進み話も盛り上がって来た時、
晴美から優子達年内に結婚すると聞かされて、優子の幸せそうな表情に嫉妬したのか、
私は「いつ結婚出来るか分かんないよね」って?直也に強い口調で話す。
晴美は自分の思うようにならないと、すぐに機嫌が悪くなり態度に出るし、優子に先に結婚される事がよほど面白くないらしく、お酒のピッチも早く、1時間もしないうちに酔い潰れてしまった。優子の彼も口数は少なく、ただ酒を飲むだけで、晴美が潰れると同時くらいに、酔いが回ったらしく先に休むと言われた。直也は、酔いつぶれた晴美を優子と2人で自分達の部屋に連れて行き布団に寝かせた。直也が優子を部屋まで送って行こうとしたら、優子が酔い覚ましに散歩しませんかと?と誘われ、月明かりのある中庭を2人で散歩した。直也は何を話していいかわからないまま、無言で歩いていると優子から、直也君、少しお話しようかと言われて、中庭のベンチに座って、私の方からちょっと聞いていいと?言われた。
ここから2人の会話がスタートした。
<優子>
・晴美のどこが好きで付き合っているの?と聞かれた。
<直也>
・どこが?好きって?付き合って2年になるけど、この頃は、晴美のわがままな性格が苦痛にさえなってきて居ただけに、特にこれと言ってないですよ。
<優子>
・そうなの~?晴美のわがままは、昔から変わってないんだ。どんなわがままあるの?
<直也>
・例えば、予めデートコースを2人で決めて向かっている途中に、急に別な場所に行きたいと言われ、喧嘩になったり、食事に行っても注文した後に、別な店がいいと
言ったりして、自分の思うようにならないと、機嫌を悪くする事が多いですよ。
<優子>
・直也君は、楽しいデートも疲れることが多いね
<直也>
・そうですね。この頃は、喧嘩ばかりだし、それにさっき飲みの席でも優子さんが結婚すると聞いたら、嫉妬する態度分かりましたよね?正直限界に近くなってきてたので、少し距離を置こうと考えてましたよ。
<優子>
・距離をね。歯車が上手く噛み合っていないのなら、少し離れる事で、お互いに何か
見えるかもしれないしね。
<直也>
・近いうちに距離おいて見ようと思います。あっ?すいません。優子さんこれから結婚して幸せになるのにこんな暗い話しをしてしまって・・・。今度私から優子さんに聞いてもいいですか?
<優子>
・いいですよ。
<直也>
・私まだ若いから、結婚は考えられないですが、優子さん結婚きめて彼と幸せそうで良かったですよ。
<優子>
・えっ?直也君から見て幸せそうに見えたの~?ちょっと優子の頬から涙が・・・。
<直也>
・何か悩みあるんですか・・・?
<優子>
・大人には、色々とあるのよ・・・。
<直也>
・大人って?子供扱いしないでくださいよ。俺だってもう立派な大人だし、それに
優子さんとだって5歳しか違わないじゃないですか?
<優子>
・ごめんなさい。子供扱いしたつもりはないのよ。私の彼って、直也君のお父さん
位の年齢だから。大人にはって言ったけど、気を悪くしないでね。
<直也>
・子供扱いしてないのなら、もう一度聞きます。悩みありますよね?そうじゃなければ、結婚決まった人が涙流さないじゃないですか?
<優子>
・え?涙?直也君に見られちゃったね?ちょっと悩でることは、あるよ。でも話すと長くなるし、晴美にも知られたくないしね。それにそろそろ部屋に戻らないとね。
<直也>
・まだ部屋に戻らなくても大丈夫だよ。俺で良ければ話してよ。
<優子>
・直也君、私大丈夫だから、部屋戻ろうよ。
<直也>
・気になって、部屋に戻っても寝れないよ。
<優子>
・話す前に一つだけ約束してくれる?
<直也>
・いいよ。何?約束って?
<優子>
・私が悩んで居る事を話すけど、絶対晴美には言わないと約束してくれる?
<直也>
・分かった。約束する。
<優子>
・約束ね。今悩んでいるのは、彼との結婚の事なんだ。直也君も感じたとは思うけど、
私の彼無口だし、会話も私が話した事に対してだけ回答するだけで、ほとんどしゃべらないし、それに自分から積極的に行動するタイプじゃないし、私の両親への挨拶もいつにすると聞いても、はっきりしないし、本当に私の事好きなのか不安だしね。それに、一番の原因は、私の背が小さいから・・・だと思う。直也君も私みてびっくりしたでしょ?
<直也>
・悩みは?結婚の事だったのですね。確かに優子さんを見た時、え?
子供?って思ってしまいました。ごめんなさい。つい本当の事を・・・・。
<優子>
・いいの。気にしないで。直也君とだって身長差50cmあるし、驚かれても
当然だよ。世間から見たら、皆そう思うよ。やっぱり私のような背が小さい人はお嫁さんにはなれないのかな~?幸せになれないのかな~?
優子はしばらくの間、星空を見上げながら涙を流した。その姿に直也は、言葉をかける事が出来ず、無言でハンカチを差し出した。突然優子が1分だけ、このままでいさせてと直也の胸に飛び込んできた。直也は、小さな優子の体を優しく抱きしめた。
きっと誰にも相談できず、悩み苦しんでいた優子の気持ちを感じる直也であった。




