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僕はゼネラルマネージャーになって、プロ野球の世界で夢を叶える  作者: 柿井優嬉


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まさかの監督交代?

 我らが北信越ロケッツと、東京アローズは、激しい首位争いを演じていた。

 その渦中にいる大野監督の様子がおかしいことに、あるとき僕は気がついた。表情がとても暗いのである。

 とはいえ、「そりゃあ、彼女よりずっと若い男性だって、プレッシャーやストレスでくたくたになる立場なのだから」と一度は思った。が、二年以上に渡るこの監督の期間にそんな状態になったことはなかったのだ。

 もしかして、体の具合が悪いのか? もう高齢と言っていい歳なのだし。

 そう考え、僕は彼女に尋ねた。

「監督。近頃、元気がないように見えます。体調が良くないのではありませんか?」

 すると、そのときも冴えない顔つきで、大野監督は答えた。

「実は、そうなのよ……」

 え? 本当に?

「だ、だるいとかですか? あるいは、どこかが痛むんですか? 大丈夫ですか?」

 慌てて、つい乱暴に次々と質問を投げかけてしまった。

「私じゃなくてね」

 は?

「夫が……」


 なんでも、監督の旦那さんの体に、がんが見つかったという。


「どうしましょうか?」

 僕はオーナーに報告して、判断を仰いだ。

「どの程度のものなんだ?」

「ステージ四だそうです」

「一番上ってことか」

「はい」

 少し沈黙状態になった。

「監督を続けてもらいますか? しばらく休養、もしくは完全に、他の人と代わってもらいますか?」

「本人はなんて言ってるんだ?」

「迷っているようです」

 これまで務められた監督は、全員男性というのも影響したかもしれないが、配偶者がたとえ末期のがんであっても、辞めたり休んだりせず続投するのが一般的だっただろう。

 しかし、時代は変わってきている。妻の出産で選手が休養できるようになったりしているのだ。彼女が夫の看病に専念したいと申しでたら、とがめる人は周囲にいないと思うし、たとえ大手の新聞社やテレビ局であっても、批判しようものなら反対に炎上となるに違いない。

「本気で『やりたい』と主張する場合以外は、本人に決めさせないで、こっちから別の人間と交代させるかな」

 藤野オーナーはつぶやいた。

「そうですね……」

 大野監督は責任感が強いから、本音は辞めたくても、放りだすようなのは善くないと判断するかもしれない。旦那さんが「続けたほうがいい」と口にする可能性もある。でも、気持ちが入らないで中途半端な感じなったり、選手たちだって、その事実を僕らが伝えるにしろ伏せるにしろ、監督のふさぎ込んだ態度が気になってプレーに集中できず、チームにとって差し障りが出てしまうことも考えられる。優勝を逃しても、一人としてそのせいだったとは言わないし思わないにしても、誰も幸せにならないのであれば大野監督が指揮を執り続ける意味はないだろう。

「では、大野監督ときちんと話して決定しますが、高岡さんを昇格させる方向で進めるのでよろしいでしょうか?」

「だな」

 すると、今まで一言も発しなかった三浦社長が、突如口を開いた。

「いえ、交代する場合に監督を任せる人物は、高岡ヘッドコーチではありません」

 え?

「きみだ」

 ……はあ?

「何をぼんやりした顔をしているんだ。わかったのか? 監督はきみだよ、桜井くん」

「え? 私?」

 僕は自分を指さした。

「だから、そう言ってるじゃないか! 大野監督に代わってロケッツの采配を振るうのは、きみだ!」

「ええっ!」

 僕は思わず大きな声を出してしまったのだった。


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