第51話 ラハチェさん
馬車の中にはいくつかの大きな鞄と木箱しかなかった。
「あれ?アランとリリーちゃんは?」
きょろきょろと見回しても、人間は蛇獣人の男性一人。私は男性に近付き話しかける。
「はじめまして、オヴィです!あのー、アランとリリーちゃん知りませんか?」
伝わらないだろうけど、一応男性に尋ねてみる。
「誰か探してるのか?」
「ええっ!?言葉わかるの?テイマースキルって以外と持ってる人多いの!?」
それなら話が早いや、と興奮しながら、胡座をかいている男性の膝に両前足をつく。
「おおっと。興奮してるとこ悪いが、言葉は分からないんだ。獣人だから何となく話してる意味が伝わるだけで。」
男性は申し訳なさそうに、軽く眉を下げた。
「そうだったんだ。アラン達の居場所を聞けると思ったのにー。」
「今がっかりしたのも分かるぞ。」
「ええ!獣人さんすごいね!」
「ありがとな。なんとなく感心したのが分かったよ。」
男性は私の頭を撫でる。
「私、オヴィっていうの。」
「自己紹介してるのか?ごめんな。お前の名前までは分からないよ。俺はラハチェ。前に会ったことがあるだろ?」
獣人さんと話したのはこれが初めて。サーカスの人と会ったのは、噴水広場で撫でられたピエロさんくらいだ。ん?
「もしかしてピエロさん!?」
「はは、気づいたか?」
ラハチェさんがにこりと笑う。
「わー、お化粧落とすと別人だねー!」
私はよく見るために、ラハチェさんの周りをちょこまかと歩き回る。気のすむまで見終わり、私ははっと気がついたっ!
「そうだっ!アランとリリーちゃんはどこなの?」
ぴょんと、ラハチェさんに飛びつくと二人の居場所を尋ねる。
「落ち着きのない猫だなあ。」
ラハチェさんは呆れたように、くすりと笑う。
「いいから、教えてよーー!」
ラハチェさんのお腹に大の字でしがみつきながら、体を揺らす。
「うーん。何かを尋ねてるんだろうが、俺には分からないな。…そういえば新しく入った子供がテイマースキルを持ってるって聞いたな。」
ラハチェさんは、片手で私を掴んでお腹から引き剥がすと、自分の顔の高さまで持ってくる。
「新入りにテイマースキルを持ったやつがいる。今日泊まる村に着いたら、そいつと話しをさせてやるから。それでいいだろ?」
新入り…子供…テイマースキル…アランだっ!!
「それきっとアランだよね!私が探してた子だよー!もちろんアランと話せるならいくらでも待つよ!よかった、よかった。」
やっほーい、とラハチェさんの手の中でうにゃうにゃと小躍りをする。
ラハチェさんは慌てて両手に持ち変えると、私をそっと床の上に置いた。
私は床でお尻を振りながら、上機嫌でダンスを踊る。
「アランに会える!リリーちゃんに会える!」
「…変な猫だな。」
ラハチェさんは小さくそう呟くと、木箱からクッションや毛布を取り出して床に敷き詰め、そこにゴロンと仰向けに寝転んだ。
「村に着くまで俺は寝るぞ?」
ふわぁ、と欠伸をしながら、ラハチェさんは目を閉じた。
「あ、それなら私も一緒に寝よーっと!」
ごそごそとラハチェさんのお腹の上に乗り、寝場所を整えるためにふみふみする。
「くははっは。やめろ、くすぐってぇ。」
またもや片手でがしっと掴まれ、ラハチェさんが寝ている横にあるクッションの上に下ろされた。
「ここで寝ろ。」
「しょうがないなー。」
私は今度こそ、クッションの上で丸くなると、眠りについたのだった。
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