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第49話 孤児院へ来たわけ

「やっとだやっとだよ。」


ようやく3日が経った。あれからムールさんに会いに行ったり、祭壇でお昼寝したりして時間を潰した。サーカスも今日中に街を出るらしく、街への人の出入りも通常に戻っている。


「やっとアランと感想を言い合えるけど、時間が経っちゃって、ちょっと感動が薄れてきたかも。でもアランやリリーちゃんの顔も見たいし、こっそり顔だけでも見に行こうかな?」


孤児院までやってくると、アランが庭の大きな木の下に座っているのが見えた。

辺りを見回して、他に人がいないのを確認する。


「アラン。」


小声で呼びかける。するとアランは顔をあげて私を見つけ、笑顔をみせた。でもその笑顔はどこか悲しそうに見える。

心配になって近付くと、アランはガバッと私を抱きこんで、小さくうずくまる。


「どうしよう、オヴィ。」


アランの顔は見えないが鼻をすする音が聞こえた。


「どうしたのアラン?泣いてるの?」


アランは私に顔を押し付けるように首を横に振る。


「アラン、何があったのか教えて?」


「サーカスの人が、僕とリリーを引き取りたいって。」


「嬉しくないの?」


アランは無言で頷く。


「断れないの?」


「断れるよ。だけどサーカスの人は僕のスキルに気付いてるんだと思う。先生には言わなかったけど。」


「どうしてそう思うの?」


「だって僕に動物と仲良しなんだねって、それならサーカスの動物達ともすぐに仲良くなれるだろうって言うんだ。そういう特技のある人間を探してたって。オヴィ達と話すところを見られたのかも。」


私のせいでスキルがひとにバレちゃったんだ!


「私のせいでごめんなさい!アラン。」


「ううん。僕も気が緩んでたから。」


「それでサーカスのひとは、アランを絶対に引き取りたいって?」


「うん。僕一人じゃ行かないって言ったら、リリーも一緒に来て良いって。」


「アラン、前に引き取られるならリリーちゃんと一緒がいいって言ってたね。」


「そうだけど、僕この街を離れたくないんだ。サーカスで働くなら、きっと遠くに行くよね。」


「そうかもね。色んなところに行くだろうね。」


アランは黙りこんでしまう。


「色んな国に行けるかもよ?楽しそうじゃない?」


「だめだよっ!そしたらお父さんとお母さんを探せなくなっちゃう。うう。」


ぽたりと私の顔に水滴が落ちてくる。


「お父さんとお母さん?」


そういえばアランとリリーちゃんがどうしてこの孤児院に入ることになったのか知らないな。


「僕とリリーは2年前にこの孤児院に来たんだ。僕は5才でリリーはまだ赤ちゃんだった。お父さんとお母さんは僕らを捨てたんじゃない!」


アランの話はこうだった。

5才のアランと生まれたばかりのリリーちゃんは馬車でどこかへ向かっていた。両親は用事を終えて後から来る予定だった。出発したのが夜中だったこともあり、アランは馬車の中で眠ってしまう。起きたら一緒に乗っていた乳母や御者は消えていて、怖くなったアランが赤ん坊のリリーちゃんを抱えて馬車の外に出ると、森の脇の街道に置き去りにされてしまっていた。どうすればいいか分からず途方に暮れていると、遠くに松明の明かりが沢山見えたらしい。自分達を助けに来てくれたと、安堵した。けれどしわがれた大きな声で怒鳴るように男達が、自分達を探す様子に恐ろしくなって、森へ逃げてしまったのだそうだ。


「ええ?一体なにがあったの?それに森に入って大丈夫だったの?」


「僕にも分からない。森に入ってしばらくしたら、狼の親子が助けてくれたんだ。ご飯を食べさせてくれたり、寝る場所を用意してくれたり。」


「そっか。スキルのおかげで狼さんと話せたんだね。」


「うん。母狼がどこかから山羊の乳を貰ってきてくれて、リリーのお世話も手伝ってくれたんだ。」



それから数ヵ月ほど狼の親子と森の中を歩いて、この街まで送ってもらい、街に入ったところを保護され、孤児院で暮らすようになったらしい。


「きっとお父さんとお母さんは僕たちを探しているはずだよ。だから孤児院を出たらしばらくは近くの牧場で働かせてもらって、リリーが大きくなったら一緒にお父さんとお母さんを探す旅に出ようと思ってたのに。」


「お父さんとお母さんの名前とか、どこで暮らしてたかとか、どこに向かってたのかも覚えてない?」


アランは悲しげに頷いた。


「覚えてない。でも馬車で何ヵ月もかかるような場所じゃないと思う。お父さんとお母さんはきっと僕達がどこにいるか知らないんだ。だから僕とリリーが二人に会いに行ってあげないと。」


そう言うと、ぎゅっと自分の胸元を苦しそうに掴んだ。


私には両親が二人を探せない状況なのか、それとも探す気がないのか、はたまたもうこの世にはいないのか、分からなかった。


「だったらサーカスについていって、こっそり両親を探そうよ!申し出を断れないなら、利用しちゃえばいいんだよっ!」


「だけどもし見つからないうちに遠くの街とか、国に行くことになったら?」


不安そうにアランは私を見つめる。


「その前に見つけ出そう!私も二人と一緒に行く!両親を探すのを手伝う!」


アランは思い迷った後、力強く頷いた。


「ありがとうオヴィ。」


「ちなみにいつ頃この街を出るの?」


「今日の夕方だよ。」


「ええーっ!そんなすぐなの?あわわ、こうしちゃいられないよ!」


私は急いで街の方へと走り出す。


「オヴィ!?」


「大丈夫!挨拶したらすぐ戻ってくるからーっ!」


せめてブランシュさんと妖精さん達には、この街を離れることは伝えておかなくちゃ!




お読み頂きありがとうございました。


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