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第44話 この世界の子供は偉いなぁ 

「妖精さーん、あっそびましょー!」


「わーいオヴィきたー」

「オヴィー」


祭壇に到着すると妖精さん達がふわふわと飛びながら、私のもとへやって来る。


「オヴィ寝にきたのー?」

「オヴィ寝るのー」


ふたりが私の耳や髭を軽く引っ張ってくるので、体をブルブルさせて振り払う。


「わー」

「わー」


「違うよー。ふたりを遊びに誘いに来たんだよ!」


もうっ。妖精さん達は、隙あらば私を祭壇で眠らせようとするんだからー。


「あそびー?」

「あそぶー」


「そうだよ!一緒にサーカスに行こうよ!」


「わーい!さーかす、さーかす」

「さーかすー」


「サーカス知ってるの?」


「知らなーい」

「でもオヴィと一緒に行くー」


ふたりはくるくると宙を舞って嬉しそうにしている。



「オヴィ。」


「アラン!」


アランが孤児院からこちらに歩いて向かってくる。


「どうしたのアラン?勉強中じゃないの?」


いつもならこの時間は、孤児院の子供たちは勉強をしているはずだ。


アランは私を抱き上げると、自分の顔を私の体に押し付ける。これはアランが編み出した、スキルのことがバレないようにするための、猫好き風カモフラージュだ。


周りに人気はないが、アランは私にしか聞こえないくらいの小さな声で話し出す。


「今日は朝早くから仕事に行く日だったから、仕事が終わればその日は1日自由なんだ。」


「し、しごとーっ!?そんなに小さいのに仕事してるの?」


「うん。まだ月に2回程度だけどね。街の外にある牧場で働かせてもらってるんだ。これくらい普通だよ?」


こんな小さな頃から働いてるなんて。アランにちゃんと年齢を聞いたことはないけど、日本だったらたぶん小学校に入学したばかりくらいだよね。本当に偉いなぁ。


「知らなかったよ。アランは偉いね。いい子だね。」


抱き上げられている体勢のまま、一生懸命に前足を伸ばしてアランの頭を撫でる。


「急にどうしたのオヴィ。くすぐたいよ。」


アランは照れながら、更に顔を私の毛に埋める。


「ぐお、くるしい。」


「わわ、ごめん。」


そう言って、ほんの少しだけ顔を離す。


「そういえば、オヴィは何してたの?」


「そうだ!アランも一緒にサーカス行かない?」


「サーカス?ああ、あの街の入り口近くにあるやつ?」


「え、そうなの?街の端にあるのは知ってたけど。」


「そうだよ。今日も牧場から帰ってくるときに見たよ。」


へぇ、そんなとこにあったんだねえ。


「そのサーカスね、明日で公演が終わりなんだって!だから、今日観に行こうと思って!アランも一緒に行こうよー!猫の皆は興味ないって一緒に行ってくれないの。」


「それならリリーも一緒に連れていってあげたいな。だけど子供だけでサーカスなんて、ヘザー先生が許してくれるかな。」


「そうだよね。なら孤児院の皆で行くのを提案してみるのはどう?それでヘザー先生に付き添って貰うの!きっと遠足みたいで楽しいよ!」


「うーん。…うん、お願いしてみる。今から行ってくるよ!」


アランは私を地面へ下ろして、孤児院へと走って戻った。


「オヴィさーかすはー?」

「アランもいっしょー?」


「分かんない。様子を見に行ってみよう!」


妖精さん達を引き連れて、私はアランの後を追った。


窓から孤児院の中を伺うと、丁度アランがヘザー先生に皆でサーカスに行きたいと話しているところだった。


「そうねぇ。でもお勉強が遅れてしまわないかしら。」


ヘザー先生が頬に手を当てておっとりと言う。すると子供たちが次々と声を上げる。


「大丈夫だよ先生!俺、宿題頑張るし、予習だってするからさ!皆でサーカスに行こうよ!」


「そうそう。先生、お願ーい。」


子供たちはヘザー先生を見上げてお願いしている。


「ふふ、わかったわ。それじゃあ、皆で行きましょうか!」


ヘザー先生はぱちんと両手を合わせてから、首をすくめる。


「実は先生もサーカス観に行きたかったの。」


ハハハと皆で笑い合う声が響く。アランも笑っていたが、はっと何かに気づいたような顔をする。


「でもヘザー先生、お金が…」


そうだ!サーカスだってタダで観られるわけないよね。どうしよう。


アランの言葉に、子供たちは皆不安そうにヘザー先生を見やる。


「あらあら子供がそんなこと気にしないの。それに、たまに贅沢したってバチは当たらないわ。」


ヘザー先生はにこりと微笑み、皆を急かした。


「ほらほら、皆早く出かける準備をなさい。確かサーカスの公演は午後からだったはず。先生は早めのお昼ご飯を用意するから、それを食べたら皆で出かけましょうね。」


ヘザー先生は楽しそうにしながら、部屋から出ていった。子供たちもそれぞれ準備をするために、急いで自分たちの部屋へと走っていく。


窓辺に私がいるのに気づいたアランは手を振ってから、リリーちゃんの手をひいて部屋を後にした。


「私は皆の後にこっそりついて行けばいいってことかなっ!」


私は孤児院の玄関の近くで皆が出てくるのを待つことにした。





お読み頂きありがとうございました。



オヴィよ、頼むから早くサーカスに行ってくれ。

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