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第30話 ボロいらしい

「へいへーい!そこの妖精さーん私と一緒に教会行かなーい?」


祭壇に片手をついて格好つける。


「わーオヴィすぐ来たー」

「わーい、オヴィが来たー」


昼間にも来たのに、こんなに歓待されると、照れちゃうなー。


「早くここで寝てー」

「早く早くー」


妖精達が祭壇の上でぴょんぴょん跳ねる。


「はいはい。よいしょっと!」


祭壇の上に飛び乗れば、またあの光に包まれる。


「ふぁ~、気持ちよくて眠たくなっちゃうよー。」


うとうとしてしまい、ハッと目を覚ます。

危なかったー。寝るとこだったよ!


「ふたりに話があって来たんだよぅ。」


「なになにー」

「はなしー」


「昔はここに祭壇だけじゃなくて、祠もあったって言ってたでしょう?」


「うん、祠あったー」

「お気に入りの人形もー」


「それがなんと、街の教会にあるらしいんだよ!」


「やったー見たい見たいー」

「教会どこー」


「明日私と一緒に見に行こうよっ!」


「行くー」

「今すぐ行くー」


「いや、今すぐは見られないよ。それに、月に一度しか公開してないんだって。」


「?」

「?」


ふたりは良く分からない、と首を傾げる。


「えーとね、明日、日が昇って教会に行ったら精霊の人形が見れるの。だから今日はもう寝るのです。オーケー?」


「おーけーおーけー」

「オヴィたくさん寝るー」


…まあ、いいや。一緒に教会に行くなら。もしかして、妖精さん達だけなら教会に行って、こっそり御神体を見ることが出来るのかな?…黙っとこう。こんな純粋そうな子達にそんなことさせらんないね。


「一緒に寝るー」

「寝るー」


妖精達が体にピトリとひっついてくる。


「はいはい。おやすみなさーい。」


「おやすみー」

「おやすみー」


そういえば、ここで寝てたら全然お腹が空かないんだけど。私の体、大丈夫かな?




パチリ


朝日を感じて目を覚ますと、妖精さん達はまだ私にひっついて眠っていた。


「ほら朝だよー!起きて起きてっ!」


「ううーんオヴィ温かーい」

「まだ寝てよー」


まさか私が一番に起きるとはね。実は楽しみ過ぎて早く起きちゃった!へへへ。


「ほら早く起きなさーい!教会に行くぞー。」


プルプルと、体を振るわせて妖精達を引き剥がす。


「せいれいー」

「見に行くー」


「そうそう。御神体見に行くよー!」


「どこー」

「教会どこー」


「あそこだよ!あの時計塔のところ!」


街の外れからでも見える、時計塔を指して伝える。


「それじゃあ、しゅっぱーつ!!」


ゴーゴー!


って意気揚々と時計塔を目印に教会へ向かいだしたのはいいんだけど、アラン達が教会来るのって何時くらいなんだ?


まあ早く着きすぎたら、教会の近くで待ってればいいかー。


それにしても、楽しみだなー。精霊の人形って、本当に私に似てるのかな?でもそれならどうして、街の人たちは私が精霊だと気づかないんだろう?


…まさか精霊としての神々しさが0だから?んなわきゃないか!ま、たとえ神々しさが0だとしても、可愛さ100でちゃらですなー。わはは。


「オヴィ教会まだー」

「早く人形見たいー」


「もうすぐだよー。」


妖精達に急かされつつも、教会前の噴水広場に着く。


朝早すぎたのか、教会の扉は閉ざされている。


「オヴィ早くー」

「人形ー見るー」


「えっとねー、あっ見て噴水があるよ。綺麗でしょう?」


「わー綺麗ー」

「キラキラー」


妖精達がちゃぷちゃぷと噴水の水で遊びだしたのをみて、気を逸らせたことにひとまず安心する。


「ふぃー。」


汗はかいてないけれど、つい額を拭う仕草をしてしまう。

辺りを見回せば、毎日立っている筈の朝市が今日はやっていない。


「あれー?今日は朝市やっていないのかなー?」


「んん?オヴィか?随分早起きだなー。」


噴水のそばにあるベンチの下でコトラさんが寝ていたようだ。


「コトラさん。おはよー!へへへ。今日って教会が御神体ってやつを公開する日なんでしょ?それを見に来たんだー!」


コトラさんはまだ眠そうに前足で顔を洗っている。


「にしても早すぎだろー。今日は朝市もないんだぞー。」


「ねぇ、どうして今日は朝市やってないの?」


コトラさんは寝転んでだらけきった体勢のまま会話を続ける。


「今日は人間にとって安息日ってやつだからだろ?」


「なあにそれ?」


「たしか神様が人間達に、月に一度はしっかりと祈るように言った日とかなんとか。それが本当かどうかは知らないけどなー。」


「猫も祈った方がいいかな?」


「さあねー。俺は祈ったことないけど、なーんにも起きてないぞ!でも、人間達は今日は一日中家や教会で祈るんだとさ。」


「そっかー。そうだ!コトラさんは教会にある御神体見たことある?」


「おう!あるぜ!遠くからチロっとな。」


ドキドキしながら、コトラさんを見る。


「ど、どうだった?」


「んー、なんかボロかったな!」


「ええ、そんなあー。」


「何でがっかりしてんだ?」


「何でもなーい。」


しょうがないよね。アランの話によれば随分と前の物らしいし。


コトラさんと話をしていたら、そんなこんなでいつの間にかしっかりと日が高くなっていた。


それにつれて、教会前はガヤガヤと騒がしくなってきた。


教会前に人々が並びはじめると、そのなかに子供の集団を発見する。


「あっ!アランだっ!じゃあね、コトラさん!」


「おーう。」


コトラさんはぐでーんと伸びきって、目を瞑った。また寝るみたいだね。


急いでアランの元へ向かう。そんな私を妖精さん達が慌てて追いかけてくる。


「わーオヴィ、置いてかないでー」

「オヴィ待ってよー」


人混みを避けながら、さっとアランの足元までやってくると、体を擦り付ける。


「おはよう!来たよっ!」


「ああーねこたーん。」


お、妹のリリーちゃんも一緒だね?


「おはよう!リリーちゃん!」


「おにいちゃん、ねこたんさわりたーい。」


アランはリリーちゃんに頷いてから、私を抱き上げる。それから、引率者らしき大人の女性に話しかけた。


「ヘザー先生。この猫も一緒に中に入ってもいいですか?」


アランにヘザー先生と呼ばれた女性は、笑いじわのある優しそうなおばさまだ。


「そうねえ。猫ちゃん、大人しく出来るかしら?」


屈んで私を見ながらおっとりと尋ねる。


「はいっ!大人しくしてます!」


ヘザー先生に向かってひと鳴きする。


「あらあら。まあまあ。猫ちゃんなら、教会に入っても問題はないでしょう。でもアラン、しっかり見ておいてね。」


「はい、先生。」


ふう~。一緒に入れることになって、とりあえずは一安心だね。





お読み頂きありがとうございました。

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