第13話 ボスさんに挨拶に行こう
「ちびすけを見てたら、これが思い浮かんでな!わざわざ、店から持ってきちまった。」
そう言って鏡に触れてから、こちらを見る。
「お前は毛の色や瞳がキラキラして綺麗だから、それにちなんだ名前にしようかと思ったが。うーん。だがやっぱり、丸っこいなあ。ハハハ。」
笑いながらも、私を両手で包むようにしながら、怖がらせないよう、そっと持ち上げる。
「うむ。オヴァール。オヴィ、うん。オヴィがいいな。」
わあ、可愛い名前ですね!
因みにどんな意味かお聞きしても?
わくわくしながら、お爺さんに向かってひと鳴きする。
「今日から、ちびすけをオヴィと呼ぶぞ。卵形という意味だ。」
た、たまごがた…。え、もしかして私ってぽっちゃり?
まあ、狸とか言われるよりは、ずっと可愛いからいいけど。
「お爺さん、ありがとう!今日から私は、オヴィって名乗ります。」
うん。響きが可愛いから、やっぱり嬉しいや!…卵形だけど。
「良かったな、オヴィ。」
ブランシュさんが、決まったばかりの名前で私を呼ぶ。
「えへへ。何だか照れ臭いなあ。」
「ふっ。いいから、早く残りの飯を食っちまえ。挨拶に行く時間が無くなっちまうぞ。」
私に向かってそう言ったあとで、ブランシュさんはお爺さんにもひと鳴き声する。
「じいさん、そいつを下ろしてやってくれ。悪いがのんびりしてらんねえんだ。次の予定があってな。」
「おお、悪いな。ほらオヴィ、まだ飯が残ってたんだな。さっさと食っちまえ。」
お爺さんがゆっくりとご飯の入ったお皿の前に下ろしてくれる。
「はーい。」
私が残りを食べ終えたのを確認すると、お爺さんに撫でられていたブランシュさんがこちらへ近寄ってくる。
「じゃあ、ボスに挨拶しに行くぞ。」
さっと身を翻し、来た道を引き返す。
「またな、ブランシュ、オヴィ。」
お爺さんがそう言うと、ブランシュさんはふさふさの尻尾を大きく揺らし、返事をした。
「ご飯、ありがとうございました!またね、お爺さん!」
私もお爺さんに返事をしてから、小走りでブランシュさんの後を追ったのだった。
表通りに戻ると、ブランシュさんと一緒にボスの元へ向かう。
「お爺さん優しかったね。」
「まあな。あそこは、俺だけが知ってる穴場なんだぜ。じいさんの顔って、厳ついだろ。だから、猫好きなんだけど、他の奴等は怖がって寄り付かねぇんだ。くくっ。」
そう言われれば、お爺さんの表情は厳めしかったかも。
「でも、ブランシュさんを呼ぶ声も撫でる手も、とっても優しかったよね!」
「そうだな。」
「また、一緒に会いに行こうね。」
「ああ。…っじゃなくて、飯を食いに行くんだ!べ、別にじいさんに会いたくて行ってるわけじゃねぇよ!」
会いたくて行ってるんだね。ブランシュさん。
「ほら、早く歩けっ!」
「はいはーい!」
少しだけ早足になったブランシュさんに、駆け足でついて行く。
「ねえ、ところでボスさんってどこに居るの?」
とことこと、ブランシュの横を歩きながら、話し掛ける。
「あそこだよ。」
ブランシュさんが鼻先で指し示すそちらを見やれば、少し遠くに周りの建物よりもひとつ頭の飛び出た大きな建物が目に入る。
「街の中心にある時計塔兼、教会がボスの住処だ。」
「ほほー。何だか凄そうですねえ。」
聞いてみたはいいものの、街の中心に近付くにつれて食べ物屋が増えたのか、そこかしこでいい匂いがしていて、そちらに気をとられる。
人通りも増え、道の端を歩いているとはいえ、気を抜くと逸れてしまいそうだ。
「おいっ、よそに寄ってる暇はねえぞ。また今度案内してやるから、今はしっかりついてこいっ!」
「はいっ!」
ブランシュさんを見失わないように必死に後をついて行くと、噴水のある広場に辿り着く。
その奥には5階建てくらいの大きな時計塔が聳え立っていた。
「わあ。キラキラしてる。凄く綺麗!」
装飾の施された時計塔と噴水から溢れだす水に、夕陽が反射して、光輝いていた。
「オヴィ。こっちだ。」
「ぶふぉ。」
ブランシュさんが私の顔を豊かな尻尾でふぁさりと撫でてから、時計塔の裏へと進んでいく。
「あ、待ってよー!」
ありがとうございました。




