第10話 白猫のブランシュさん
街の端から数件の家を過ぎた頃、漸く落ち着いてきたので、じっくりと辺りを観察してみる。
家は木造と石造りが半々ってところかな?
足元は石畳かぁ。雨の日とか滑りやすそう。
それと、この辺はお店が少ないみたい。何て書いてあるかは読めないけれど、ちらほらと看板を掲げた建物が存在してる。
クンクン
鼻をひくつかせてみても、食べ物の匂いはしないから、食べ物屋さんではないみたい。
ちょっとがっかり。
道ゆく人達の肌は浅黒かったり、白かったり。髪の色も金髪や茶髪、黒髪だったりで、そこまで地球との違いはないように見える。
ふむ。
周りを観察していたら、なんだか冷静になってきた。
よく考えてみたら、今日の寝床も無けりゃ、夜ご飯もないぞ。
うう、早まったかな。まだジェイクさんの所でお世話になっておくべきだったかな。
むむむ。
道の端で、立ち竦んでいると、誰かが声を掛けてきた。
「おい、ちびすけ。そんなところで何やってる?」
へ?
ちびすけって私のことかな?
声のする方へ振り返ると、そこには青い目をした白い猫がいた。
猫だ!
「わあ、猫ちゃんだ!」
前世でいうノルウェージャンフォレストキャットに似た風貌の白猫は、怪訝な顔をする。
「あぁ?お前も猫だろうが。…んん?猫、いや狸か?」
「誰が狸かっ!見よ!このプリティなお手々に、キュートなボブテイル!それに凛々しいこのヒゲ!どっからどうみても猫でしょうが!」
思わず、ずいっと鼻先を白猫に近付ける。
するとその剣幕に、白猫は軽くのけ反る。
「おおう。落ち着け。」
これが、落ち着いていられるかいっ!
ライアンといい、この猫といい、乙女心が全く分かってないね!
「そうだな。お前は猫だ。……たぶんな。」
「何て?」
声が小さくて、後半はでよく聞こえませんでした。
「い、いや。それよりお前、子猫ひとりで何してる。親はどうした?」
「あ、かあさまは……。」
そう尋ねられて、無意識に俯く。
「…そうか、何となく察したよ。俺はブランシュ。お前、名前は?」
そう聞かれて、私はハッとした。
「なまえ…そういえば私、かあさまに名前で呼ばれたことが無い。」
「え、そうなのか?じゃあ、かあちゃんがお前を呼ぶときはどうしてたんだ?」
「えっと、可愛い子とか、私の妖精ちゃんとか。あと、ベイビーちゃんとか、いろいろ。」
やばい、言ってて何だか恥ずかしくなってきた。
前世を思い出して、精神は大人に近くなった気がするけど、よく考えたら今世はまだ子猫。
やっと、赤ちゃんを脱したようなもので、正直記憶もあやふやだ。
「お前、親に可愛がられてたんだな。」
ブランシュさんが優しい表情で、だけどどこか羨ましそうにそう言ってくれる。
「そうかも。…名前無いけどね。」
ちょっと、元気がなくなっちゃった。
「ま、本当は名前があったかもしれねぇけど、分からないんなら仕方ねぇな。自分で名付けりゃいい。呼び名が無いと不便だしな。それとも、ベイビーちゃんって呼んでやろうか?」
ブランシュさんがニヤニヤしながら言う。
「結構ですっ!自分で名付けるもんね!」
「ふっ、そうか。そうしろ。」
からかって元気づけてくれたのかな。ありがとう、ブランシュさん。まあ、言わないけどね。
ありがとうございました。




