ラプンツェル
木の下か給水タンクの上の秘密のデートは時折、こっそりと開かれた。
デートだと思っているのは、あたしだけかもしれないけれど。
あたしがアルマジロくんを見つけるときは、たいていお昼寝しようとしているときだった。
あたしのこと、邪魔だって思ってないかなって心配になった。
不安がつのって、アルマジロくんに聞いてみると、彼は「別に。ウサコはうざくないからいいよ」となんとも言えない答えが返ってきた。
微妙な答えだけど、あたしはアルマジロくんの傍にいていいってことだよね?
そう解釈したあたしは、今日もアルマジロくんの隣を陣取っている。
***********************************
寝っ転がっているアルマジロくんが、あたしのお下げを引っ張った。
「おまえって本当に髪、長いよな」
あたしの三つ編みは、とても長い。
背中の半分を超えるほど、長く伸びている。
「うーん、何年も切ってないからね」
あたしの髪を手で弄んでいるアルマジロくんが首をかしげた。
「おまえみたいな女が出てくる童話なかったっけ?」
「あたしみたいな女?」
「髪が長い女」
髪が長い女の童話ってなに?
髪が長い女が出てくるなんて言われると、一瞬、ホラー映画かなにかじゃないの!?と思った。
だけど、ホラー映画だとしたら、すっごくあたしに失礼だよね、アルマジロくん。
あたしの視線に気がついたのか、アルマジロくんは首を横に振った。
「なんか、塔に閉じ込められているやつ」
そのヒントでぴんときたあたしは「ラプンツェルのこと?」って訊いた。
「そんなようなタイトルだっけ」
「塔の上に囚われているラプンツェルは、王子様を上に呼ぶために自分の髪の毛をたらすの。王子様は髪を伝って、会いにくるんだよ」
あー、そんなやつだったかもな、なんて自分で話題を振ったくせに妙に興味がなさそう。
「ラプンツェルなんて良く知ってるね」
「前に、妹が読んでた気がする」
「ふーん」
妹ちゃんは童話が好きな子なんだ。
「ねぇねぇ。あたしの髪、長いでしょ」
「ん?そうだねぇ」
アルマジロくんは気のない声で言葉を返す。
「だからね、大丈夫だよ」
脈略ないあたしの言葉に彼はきょとんとする。
「何が?」
「どんな場所にいても、あたしとアルマジロくんはちゃんと会えるよ」
アルマジロくんの目が大きく見開かれた。
「ばっかじゃねーの。塔の上にでもこもる気かよ」
「塔にはこもらないと思うけど。でも、あたしがどこにいても、アルマジロくんがどこに居ても必ず、会える。この髪が、その証だよ」
「へぇー」
「今日のあたしのメリットね」
アルマジロくんは、呆れたように笑った。




