苺が好きな女の子
「続いているよね」
ポツリと、呟いた声が何を指しているのかわからなくて首をかしげた。
「あっ、雨?そうだよね。一昨日までずっと晴れてたのに」
あたしの能天気な答えが気に食わなかったのか、目の前に座っていた美紀が「違うわよっ!」って噛み付いてきた。
「あんたのアルマジロ病よ」
「アルマジロ病?」
「逢沢次郎に付きまとってるでしょう」
そうか。あたしはアルマジロ病だったのか。
そんな病気があったとしたら、確かに確実に一番先にかかってしまう。
「あんたって、本当に馬鹿よね」
あたしが何を考えているのか大体、読めたのか、目の前の美紀は深くため息をつく。
「あんたさ、何をされても逢沢次郎がスキだって言えるの?」
突然の質問に、あたしはきょとんとして、美紀を見つめる。
美紀は頬杖をついてあたしをじっと見つめていた。
妙にその目が何かを言いたそうで、あたしは恐怖を覚える。
「あたしは」
ちょっとあたしの声が震えているのがわかる。
「あたしは、どんなアルマジロくんでも好きだよ」
あたしの答えを、美紀はちょっと悲しそうに受け止めていた。
「んじゃ、見せてあげる」
美紀がケータイを取り出して、ポチポチと何か操作をした。
画面に何かを表示して、あたしに差し出してくる。
「それ、友達にもらったの。逢沢次郎の昔の彼女だって」
「えっ?でもアルマジロくんには彼女はいないって……」
「だから、それがあいつの唯一の彼女。逢沢次郎が愛したたった一人の女」
あたしは震える手で、画面に視線を落とした。
画面に映った写真には、アルマジロくんと女の子が映っている。
華やかな顔の、可愛い女の子。
あたしとは似ても似つかない女の子だ。
「アルマジロくん、幸せそうだね」
愛しそうに彼女を見つめるアルマジロくん。
こんな顔の彼をあたしは見たことがない。
アルマジロくんは彼女の抱き寄せて、ぴったりくっついている。
大好きだって、全身で表している。
「ケータイのストラップ」
二人が写真に突き出しているケータイ。
それにぶら下がっているストラップは、おそろいのもの。
ハートが二つに分かれていて、彼と彼女のストラップをあわせることでひとつのハートになる。
一対のストラップ。
「美紀」
「なに?逢沢次郎、追いかけるのを止める気になった?」
美紀の意地悪な言葉は、あたしの身体を素通りしていく。
「この子、苺が好きかな?」
「はっ?」
美紀は眉をひそめて、固まった。
あたしの目に映るアルマジロくんの唯一の彼女。
苺が好きなアルマジロくんの彼女。




