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サツジンキ  作者: Hukkuらはぎ
2/2

「迂闊だった。軍手はめていくの忘れてた」

私は1人実家のベランダに寝そべり、月明かりに照らされた血まみれの手を眺めていた。

「今日で2人…か。1ヶ月でたった2人しか救えなかったなんて…」

しかも、1人目は殺せずに敗戦したとか、やっぱり私には向いてないのかもしれない。

「1人で考え事かな?赤崎さん。いや、見上刹那さん」

私を頭の方から覗き込む人影。そして、私の2つの名前を知っている人影。この人影こそ、私の1人目のターゲットにして、私を敗走させた人物。

「噂をすれば、何とやらですか?」

「1人で噂ね。随分と面白いことを言うね。と言っても、1人になったのはついさっきかな?いやぁ、全くもって無情だよね。無情。無情。君が…まさかね」

彼は気味の悪い笑みを浮かべながら、くるくると回り始めた。

「私は救いを求める人なら誰でも救うと決めてるの。ところで、いつも一緒にいる彼女はどこです?」

「彼女?あー、唯のことか。あいつといると調子が狂っちゃうんだよ。ま、本音を言うと今日は君と過去の話に浸りたかったから、置いてきたんだ」

過去の話?この男と過去の話?何でも無情に置き換えるこの男の過去に違いなどあるのだろうか?

「私はあなたとだけは過去の話などしたくはないのですが」

「冷たいな。確かにツンデレは最近の流行りだとは思うけど、実際にやられると結構腹が立つもんだよ?」

「ツンデレなんて私のキャラではないです」

「天然なんだね」

「これ以上、話をしても無駄です。帰ってください」

頼むから出て行ってくれ。私は心の底からそう思った。しかし、男は

「それはごめんだね。俺は話をしに来たんだ」

どうやら、引き下がってはくれないようだ。暖簾に腕押し。まさにこのことだ。

「わかりました。ここではなんなので、私の部屋まで移動しましょうか」



「では、改めまして、お久しぶりだね。見上さん。俺…いや、僕のことは憶えてる?ねぇねぇ、憶えてる?」

「ええ。憶えていますとも。それとあまりきょろきょろとしないでください。正直気持ち悪いです」

「気持ち悪い!?酷い表現だなぁ。言葉はもっと慎重に選ぶべきだよ。言葉で人も殺せちゃうからね」

男は不気味に頬を吊り上げる。

「相変わらず、気持ち悪い笑みですね。ところで話とはなんの話でしょうか?」

「君はもう少し雑談を楽しめないのかね?」

「私はあなたに一刻も早くこの家から出て行ってもらいたいのです」

「これはこれは、酷く嫌われたものですね。見上さんに嫌われるようなことしましたっけ?いや、どちらかと言うと、見上さんの方が僕にいろいろ嫌がらせをしているような気がしますが」

「私が何をしたというの?」

「僕の後ろをつけたり、家に忍び込んだり」

な…。全部バレていたのか。

「当然気づくよ。ところで何が目的なのかな?」

「全てを無情と捉えるあなたには一刻も早く救いが必要です。だから、殺そうと思い、様々なアプローチを仕掛けていました」

「救いなんて僕は求めちゃいないよ?」

「私の見た目で救いが必要だと感じたので」

「歪んでるねぇ。いったい誰が見上さんをそれ程までに歪めてしまったのか?いや、本題はそうじゃないな。確かに殺人は理由さえあれば、正当化される。社会の悪は殺しても罪にはならない。だけど、見上さんの場合は社会になんの影響も与えない一市民を殺しているし、殺そうともしている。これは駄目なことなんじゃないかな?」

この男の持論も大概にズレてると思うのだが…

「私は私の正義を貫いているだけです」

「そう言うと思ったよ。見上さんは初めて会った時から何も変わってやしないな。ま、だから、会いに来たんだけど」

「そろそろ本題を話して戴いてもよろしいですか?」

「本題は閑話休題の中にあったりして」

昔はもっと冷静で無口な奴だと関西弁の男が言っていたが、本当に昔はそうだったのだろうか?それとも誰かの影響を受けてこうなってしまったのか?1人称の使い分けでキャラを変えているのだろうか?

「過去の話ではなかったのですか?」

「そうそう。過去の話ね。でも、僕らって出会ってそんなに時間経ってないよね?いつだっけ?1年前?それくらいだったよね?」

「そんなことはいいです。話とは何でしょう」

「怖いね。そんなに睨まないでよ。話はもう終わったよ?」

「は?」

この男は本当に掴みどころがない。いや、この表現は相手を美化しすぎだ。コミュニケーションすらまともに取れない。このくらいの評価が妥当だろう。相手の話を飲み込まず、自分だけの世界で話をしている。そんな印象だ。自分の記憶の中でもここまでコミュニケーションを取れない奴ではなかったはずなのだが・・・。そういえば、関西弁の男が影響されやすいやつとも言っていたような。ということは、テンションの高さは唯ちゃん、コミ障はどこかの誰かさんということか。それではこの男の元の人格はどこに行ってしまったのだろうか?もはや死しかこの男を救う手段はない。歪んだ意見でもなんでもなく、一人間としてそう思った。いや、そう考えること自体が歪んでいるのかもしれないが。

「話が終わったあとは、交渉だ。僕らの仲間になってよ」

「は?」

「断った場合は俺がこの場で消す」

「ちょっと待って。急すぎます。少し時間を」

一人称が僕から俺に変わったということは、この男、断れば確実に私を殺しにかかるだろう。その場合、私は確実に殺される。しかし、この男の仲間に入る?冗談じゃない。内部を知っている人間としては、あんな組織には天地がひっくり返りでもしない限り入りたくはない。平気で人を殺す組織なんて、救いに必要のない人たちすら殺してしまうような組織なんて。

逃げよう。

でも、どうやって?出口は男の後ろだ。どうやって・・・。打つ手なしそう思った瞬間、奇跡は起きた。いきなりドアが開かれ、部屋に青年が飛び込んできたのだ。

「お前ら、手を上げろ!」

青年は拳銃を取り出し威嚇する。しかし、私たちには銃などただの飾りでしかない。だからこそ隙ができた。拳銃を見て余裕の笑みを浮かべる男の脇を通り過ぎ・・・

「逃がさないよ」

私の行動は男の手刀によって完璧に封じ込められた。

「え?」

ただの手刀ではない。私はその場で倒れ込んだ。

「人体って急所を狙えば簡単に機能停止するんだよ。ま、君なら知っているだろうけど」

そこで私の記憶は途切れた。



「よお。そろそろ起きや。ワイもそんな気ぃ長い方やないからな」

「えっくん。あんまり女の子をいじめちゃダメだよ」

「そうだよ。女の子は優しく扱ってあげなくちゃ」

「気絶させた上に拉致してきた人が何を言ってるのかな?あっちゃんも気をつけなきゃダメだよ」

朦朧とする頭に数人の男女の声が響く。

「う・・・」

まだ、身体は痺れて動かないようだ。

「やっと目ぇ覚ましたか。まったく、何が殺人のプロじゃ。ただのか弱い女やんけ」

「だから、えっくんはどうしてそうゆう言い方しかできないの?」

「他人の気持ちなんか知ったこっちゃないなぁ」

「もう。だからお友達できないんだよ。えっと、見上ちゃん大丈夫?ごめんねいきなり誘拐なんてしちゃって」

女は私に無邪気な笑顔を向ける。この笑顔・・・そうか、私はあのあと気を失って…

「いえ、大したことはありません。心配してくださってありがとうございます。唯ちゃん。まだ、身体は痺れていますけど、数分もすれば問題なく動けます」

「それはよかったよ。ほら、あっちゃんごめんねしないと」

「…ごめんなさい」

「あなたは断れば殺すと言っていましたよね?赤刀斬夜さん。でゃ、なぜ私は生きているのですか?」

「殺すつもりだった。見えないところで。でも・・・」

「お前が貴重な戦力やからな、簡単には死ねせへんで」

自分が仲間と認める人の台詞なら大いに感激する台詞だが、自分が仲間と認めていない、ましてや嫌悪している相手の台詞となると裏を感じざるを得ない。そういえば、私の部屋に踏み入った刑事さんはどうなったのだろう?殺されたのだろうか?いや、殺すだろう。この連中はそういう人間の集まりだ。

「いやぁ、殺してないよぉ。むしろ、負っていた傷を完治させて、捕まえる前より元気だよぉ」

私の耳元で男が囁く。

「いやぁ、彼は面白い個体だったよぉ。何度催眠をかけても振り払っちゃうんだもん。人間の秘めたる力は半端ないねぇ」

「離れてください。気持ち悪い」

「でもね、人間の秘めたる力をも凌駕できる僕も素晴ら…」

「鬼田くん。近いよ」

唯ちゃんが鬼田という男を私から離す。

「ごめんね。彼は鬼田くん。一応医者だよ」

一応…。たしかに金髪でイヤリングをしているところを見ると医者っぽいとは言えない。

「鬼田さん。次、さっきみたいな近さで話しをすると首が飛ぶと思ってください」

「怖い怖い。気を付けようかなぁ」

「気を付けてください。ところで、さっき催眠がどうこうと言ってましたが、どういうことですか?」

「んん。その話だねぇ。とりあえず、後ろに振り返ってごらん」

私は言われるがまま、振り返った。

「これは、どういうことですか?」

「どういうこともないねぇ。こういうことだよ。僕はこの男、井上勇輝刑事に催眠をかけて、僕の思うがまま操っているのだよぉ」

虚ろな目をした刑事は私を見つめ、軽く会釈をする。

「もういいかな?そろそろ動かないと間に合わない。当面、見上さんは僕と一緒に行動してもらう。唯は引き続き情報収集頼む。あとは…」

「勝手に仕切んなや。殺人鬼。ま、その流れで構わんねんけど、わいは誰かに自分の行動を制御されるのが嫌やねん」

「わかってるよ。だから、お前はそのまま自由行動だ。でも、暴力沙汰は避けてくれよ?」

「それは承知のしとるがな。わいは本戦まで温存や。てなことで、待たせたな。じゃあ、始めるで。閑話休題は終わりや」



赤刀斬夜《せきがたな きりや:あっちゃん》殺人鬼。

益静夜《えき せいや:えっくん》チームのリーダー。

楔刀唯音くさびがたな ゆいね殺人鬼一族楔刀家の生き残り。

鬼田櫂人きだ かいと医者。

見上刹那みかみ せつな殺人犯。

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