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レーション

遅くなりました。すいませぬorz

2014年2/23 最後の部分を追加しました。

 夜間訓練で、川内と飯塚はペアを組んでいた。

 案の定、例の人質事件で不思議な行動をとった飯塚という青年は、バリアの能力を持っていた。

 だが、SPDOでの検査で最大出力でも盾程度のものしか出せないためと次の仕事が見つからないということで、白川がロストナンバーズへスカウトした。

 もちろん先日の吸血鬼で女性の人狼の富野もロストナンバーズとして入隊した。

「こんな時にレーション(非常食)食ってていいんですか?」

 飯塚は、レーションをかじる川内を振り返った。先日までただの民間人だっった飯塚は、こういう訓練だけでも緊張してバリアを放出していた。

「飯塚こそ、今無駄に体力消耗させてんじゃないわよ。それに今ここには誰もいないから。」

「どうしてそんなことがわかるんですか?」

「狼・・・元男だから、鼻が効くのよ。」

 川内は変わったレーションをかじりながら恥ずかしそうに答えた。川内の言葉に安心し、飯塚は安堵の溜息をついてバリアを解いた。

「ところでこれ、食べてみる?」

 飯塚たちに支給されているレーションとは違い、川内のものは手のひら大のビスケットのようなものだった。

「いいんですか?いただきます!」

 飯塚は目を輝かせながら川内のレーションを受け取ると、口に入れて力いっぱい頬張った。その瞬間

「あがーっ!」

 飯塚の悲鳴が上がった。

『川内、いい加減堅パンで新人おちょくるのやめろよ。』

 モニター室で監視していた白川が、川内を注意する。すると、館内が爆笑の渦にのまれた。

『お前らー、ちゃんと気合いれてやれよー、ったく。』

 皆、川内が『堅パン』という、成人男性でも素手で割るのが難しい堅いビスケットをその強靭な歯と顎で難なく食べることができるのを知っている。

 そして、新人の登竜門のひとつに、川内から堅パンのレーションを貰ってビスケット感覚で堅パンを頬張って歯と顎が痛い目にあわされるのだった。過去には歯が欠けるものも居た。

「あたたたたた・・・。そういうのは早く言ってくださいよ。」

「ごめんごめん、これやるの楽しくてさー。」

 川内が飯塚をからかっていると、どこからか悲鳴が聞こえた。

『川内、至急第3ブロックに向え!富野が暴れてる!』

 白川のアナウンスで、一瞬にして川内は狼へと変身し、第3ブロックへ向かった。その後を追うように、不思議そうに首をかしげながら飯塚は後を追った。

 そして、飯塚が到着した時、二匹の狼が暴れていた。

 ペアを組んでいた相手は、腰を抜かして首筋に手を当てて震えていた。

『飯塚、そいつ保護して病院に連れていくぞ』

 腰を抜かした男を片方の肩で担ぎながら、飯塚は白川の元へ向かった。

 富野とペアを組んでいた男は幸い酷い怪我はなかったものの、首筋にほんの少しの噛み傷があった。 

「何があったんだ?」

 心配そうに見守る気の優しそうな女医は、その場から席を外した。

 富野とペアを組んでいた男は未だに恐怖で震えている。

「と、富野さん、れ、レーション食ったばっかなのに、『あたしのレーションどこに隠した?!』って人狼化して噛み付かれそうになって・・・。」

「そうか・・・すまない。怖い思いをさせちまったな・・・。しばらくこの病院で休んどけ。」

 そう言って白川は男を励まし、先ほどの女医に詳細を話し、男のカウンセリングにあたって欲しいと伝えた。

 やがて白川と飯塚はロストナンバーズ専用の病院を後にし、車に乗り込んだ。

「富野さんのレーションも特別なんですか?」

 先ほどの川内のレーションを思い出して、飯塚は白川に質問した。白川は渋い顔をしながらあごひげを撫でた。

「富野は吸血鬼だから、レーションは血液なんだよ。たぶんなんかの勘違いで富野はアイツの血を吸おうとしたんじゃないかな・・・。」

 白川のその言葉に、飯塚は言葉を失った。ようやく、飯塚はそういう怪物たちと共に生活しているのだということを実感し、背筋がうすら寒くなった。

 しばらく車内は沈黙に包まれた。

 それから不意に、白川が話し始めた。

 「飯塚、お前、自分の能力が防御バリアだってのが不満みたいだな。顔に書いてあるぞ。」

 そう言われて、飯塚は両膝を強く掴んだ。

 「僕だって1番強いSクラスになって、敵をバンバン倒したいですよ。」

 「1番強いSクラスか・・・。」

 能力には様々なランクが付いており、1番強いとされるのがSランクと呼ばれている。

 「Sランク・・・。Sランク・・・。」

 白川は運転しながらつぶやく。

 「なぁ、SランクのSは何の略だと思う?」

 突然の白川の問いかけに、飯塚はムキになった。

 「スペシャルとか、スーパーのSですよね?」

 「いや、違う。」

 飯塚の答えを白川は否定した。

 「SランクのSはスレイブ(奴隷)のSだ。」

更新が遅くなってすいません。ようやく一話更新できました。


ところで、堅パンでググると本当にいろいろと本気ですごいのがいっぱいでてきます(主に堅さ)。

自分もたまに食しますが、紅茶に浸したり、紅茶と堅パンの破片を口に含んで柔らかくして食べないと本当に顎と歯が使いものになりません。

でもよく噛むおかげか、少量でもお腹が膨れた気分になります。

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