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新しいgift

警察の内部に、名のない特殊部隊がある。

皆、俗に「接待部隊」と呼ぶその特殊部隊は、特殊能力を持つ者を含む部隊であり、陰ながら泥臭い任務を常に任させている。

しかし、そんな嘲笑を受けても彼らは自らの部隊を誇りをもって、こう呼ぶ。

その部隊の名は「ロストナンバーズ」。

 それはとある企業がテロに遭い、人質を取られたことから始まる。

 テログループのメンバーの1人が、交渉と見せしめのために、手足を縛った人質たちを値踏みしている。テログループのメンバーがか弱そうな女性を手にかけようとしたときだった。

「僕を・・・、人質にしてください。けして反撃も攻撃もしません。」

 人質の中のひとりの青年が名乗りを上げた。

「おお、見上げた根性だなぁ。若けぇのにそんなに早く死にてぇのか?」

 そんなテロの実行犯の挑発には乗らず、青年は真剣な眼差しでテログループを見た。

「まぁそんなに早く死にたいんなら叶えてやるさ。やれやれ、正義感の強い奴だなぁ。死んでも後悔すんなよ。」

 青年はそう言って冷やかして笑うテログループのメンバーに連れられ、青年は頭に銃を突きつけられた。青年は血の気の引いた顔をしているが、その目は何か強い意志が宿っていた。

 テログループは実行犯の人数や場所を知られないため、わざと電話を使って警察や先に避難した会社経営者らに取引の要求を始めた。

 しかし、実際は警察の特殊部隊に所属する超能力者によって、テログループの人数・人質の数・テログループの居る場所が特定されていた。そしてその情報はSAT(特殊急襲部隊)とロストナンバーズにも伝わっている。

 SATとロストナンバーズ達は息を潜めて命令を待っていた。

「それにしても勇敢な青年がいるもんだなぁ・・・。」

 ロストナンバーズを率いる部長の白川は、警察の指揮官達のいる会議室の隅っこで禁煙パイポをくわえながらぼやいていた。末席のロストナンバーズ部隊の部長の言葉など誰もお構いなしで、人質開放の作戦を練っている。白川は唇にくわえたパイポを2〜3度揺らし、

「タバコ吸ってきます。」

と言って部屋を出た。

 以前は警察庁の中が分煙化したことに白川は辟易していたが、思えばこれのおかげで上部の連中が把握しているリアルタイムの情報をこっそり確認することができることに今では感謝していた。

 白川はタバコを吸いに行かず、ひとけのない場所で、現場で待機しているロストナンバーズのメンバーの1人にスマートフォンで連絡をとった。

「内部の状況はどうだ?」

「だいぶ連中苛ついてるみたいです。」

「人質は男らしいが、大した奴か自殺志願者か・・・。人質の特徴は分かるか?」

 白川の言葉にメンバーの男が答える。

「見てみないとわかりませんね・・・。何か格闘技でもしてたんでしょうか?」

「さぁなぁ。お前がSクラスの連中から見せてもらった内容じゃどうだった?」

「明らかに格闘技経験者らしき人物はいないように思われます。」

「そうか・・・。お前、ちょっくら中見ることできるか?」

「OKです。余裕あります。アプリ開く準備しといてください。」

 男は白川にそう言って通話を切った。男はバディに白川からの通話を手で伝え、それからバディの前から姿を消した。この男の能力は、最大3分自分の身に着けているものまで透明にする能力を持っている。

 男は姿を透明にしたまま、内部の状況を覗きこむ。そこには座り込んだままの人質たちと、屈強な肉体のテログループのメンバーに銃を突きつけられている中肉中背の青年の姿があった。男のヘルメットに装着されたカメラから、白川は内部の様子をスマートフォンで確認する。

ーいやー、本当にいい世の中になったもんだ。

 暗がりの中で白川は送られてくる画像を見ながら技術の進歩に感謝していた。

 だがその時、とうとうしびれを切らしたテログループが人質の青年の殺害を実行に移すと言い、受話器をテーブルに置いたまま青年の頭に銃口をしっかりと突きつけた。青年はまぶたを強く閉じ、ただ祈るようにしていた。

ーなんだこいつ?なんで怖がらない?

 スマートフォンの動画を見ながら、青年の人質にあるまじき状態に白川は疑問を持った。なぜなら、今から殺されるとなれば誰でも怯えて泣き叫ぶものだ。しかし、青年は怯える様子も命乞いをする様子もなく、ただ目を閉じている。

「何を隠してやがる・・・。」

 白川は不思議な青年の動きにひとりごちた。

 その時、とうとう引き金が引かれ、人質の青年の頭に衝撃が走る。思わず白川はスマートフォンを強く握った。人質たちは青年の死を見ないよう、発砲音と共に目を閉じた。

 しかし、次の瞬間、弾丸は青年の頭を突き抜けず、引き金を引いたテログループの銃が暴発し、火薬の暴発によってテログループの男の手はズタボロになり、銃の破片が顔中に突き刺さった。

『ぎゃぁーーーーーー!』

 暴発した銃で負傷した男の断末魔のような叫び声が、白川が持つスマートフォンから流れた。

 テログループで負傷した男と比べ、青年は倒れて気絶して倒れているものの、外傷らしきものは見当たらなかった。

「すいません部長、もう限界です。」

「OK、ありがとう。」

 透明だった男はとうとう能力を使い果たし、白川に連絡を取りながら物陰に隠れた。白川も不測の自体に慌てて本部の会議室に戻った。

「白川部長、突入の合図をお願いします。」

「了解しました。」

 白川はSATの指揮官の指示を受け、ロストナンバーズのメンバー全員に指示をした。

 そして、人質は全員無事に保護された。

 警察庁に人質とテログループが来るまでの間、SATの指揮官が白川に耳打ちした。

「どうやらあの人質は能力者らしい。」

「そうなんですか?!」

 白川は状況をリアルタイムで把握しておきながら、全く知らない振りをして驚いてみせた。しかし指揮官も白川の性格を分かっているのだろう。

「ふん、お前もどうせ隊員にカメラ付けて見てたんだろう。」

 指揮官の言葉に白川がニヤリと笑いかけて黙った。

「とりあえずあの青年に話を聞こう。」

「聞いてどうするんですか?」

 指揮官の言葉に白川は真剣に質問する。

「彼の希望ならSPDOで検査して、この国の為に活躍してもらう。」

「もしB1以下なら・・・?」

 白川は嬉しそうに指揮官に尋ねた。

「そうじゃないことを祈るが、もしそうならお前の交渉次第だろ?」

 そう言って指揮官は白川の横を通りすぎて行った。

「あああ・・・だといいなぁ・・・。」

 指揮官が去ったあと、白川はぼやいた。時を止める能力を持つ大村が寿退職して以来、なかなかいい能力のある人材が見つからない状況だった。

ーさてさて、どうなることやら。

 白川は青年がやって来るのを待ちわびた。そして白川はもう1人、人質の中でおかしな行動をする人物がいた事に気がいついていた。

 その人物は、青年がテログループから発砲された時に、じっと青年のことを見て舌なめずりをしていた。まるでそれはまさに餌を見る飢えた獣のようだった。

前回は夢で見たものをモチーフにしましたが、今回は完全オリジナルです。(前回http://ncode.syosetu.com/n0311bo/)

新しいメンバーが加わり、(おそらく)バトルシーンありの物語になる予定です。

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