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男女比偏極社会  作者: 綾汰


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29話 配信

夜。部屋の明かりを落としたころ、スマホが震いた。小百合さんの配信開始通知だった。


なんとなく開くと、画面の向こうで小百合さんが椅子に座り、少しだけ気怠そうに笑っていた。


「こんばんは〜。今日も来てくれてありがとね」


明るく振る舞っているけれど、その声の端に、どこか寂しさが混じっているように聞こえた。


コメント欄が流れる。


「明日夏祭りだよね!」

「浴衣着る!」

「人多そう!」


小百合さんはそれを見て、ふっと目を伏せた。


「夏祭り……いいなぁ。私、明日は行けないんだよね」


ロラムさんが横から顔を出す。


「小百合、行きたかったんじゃないんすか?」


「うるさいよロラム。仕事なの」


ロラムさんは女性らしい声で笑いながら、軽く肩をすくめた。


「でもさ、小百合、絶対行きたかったでしょ。ほら、例の人と」


コメント欄が一気に騒ぎ出す。


「例の人って誰!?」

「隣の人?」

「あの優しい人?」


小百合さんは慌ててロラムさんの肩を押した。


「ちょ、ロラム!そういうこと言わない!」


頬が赤くなっている。画面越しでも分かるくらい。


ロラムさんは悪戯っぽく笑った。


「だって、明日その人、会社の人たちと行くんでしょ?親睦会で」


「……うん」


小百合さんは少しだけ視線を落とした。


「親睦会なんだって。仕事なら仕方ないよね」


明るく言おうとしているのに、声がほんの少しだけ震えている。


コメント欄はさらに騒ぐ。


「小百合ちゃん寂しそう」

「隣の人と行きたかったの?」

「二日目行けばいいじゃん!」


小百合さんは画面を見て、少しだけ笑った。


「二日目……か。うん、行けたらいいな。誰かと一緒に……」


その言葉が、妙に胸に引っかかった。まるで、こちらに向けて言っているように聞こえた。


ロラムさんが言う。


「ほら、誘ったらどうすか?二日目なら行けるし」


「ロラム、ほんと黙ってて……」


小百合さんは顔を赤くして、マイクに向かって小さく言った。


「二日目いけたらいいな。一緒に……」


その声は、配信者としての明るさではなく、ひとりの女の子としての本音だった。


胸の奥が静かに揺れる。


雑談が終わった後、ロラムさんと小百合さんが酒を飲みながら、祭りをテーマにしたホラーゲームをやることになった。


ほぼ泥酔状態になった二人は操作がうまくできなかった。ゲームオーバーになるたびに怒りを頻繁に表しながらも、なんとかクリアした。


「やったーーー!」


『おおおおおおおおおおおお』

『やっとかー』

『時間かかりすぎでしょwww』


コメントが素早く流れていった。


そして、


「おつー」

「お疲れ様ですー」


そう挨拶をした後に配信は終わった。


その後、スマホに小百合さんからメッセージが届いた。


画面には、


「明日の親睦会、楽しんでね。私は行けないけど、応援してるよ」


とだけ書かれていた。


私は少し微笑んで、画面を閉じた。


明日は親睦会で美夏課長、橋本さん、野々花さん、雫さんと夏祭りへ行く。


そして二日目は――小百合さんと二人で行くことになるかもしれない。


そんな予感がする。


小百合さんがぽつりと言った。


「二日目いけたらいいな。一緒に……」


その言葉が、心の奥に静かに落ちた。

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