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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第49話 出産

 結婚式の準備は進み、町から酒や食料が運ばれて来る。


 主役の一人を働かせているのは申し訳ないが、オレに物事を仕切るなんて出来ない。誰かと一緒に生きて来なかったからだ。


「はい、ヒーリング終わりっと」


 やることもないんでじーちゃんばーちゃんたちにヒーリングをして回っている。


 治癒力を高めるヒーリングだから体力がないとポックリ逝ってしまうが、医療が発達してないところで六十まで生き抜いた者の生命力は一味違う。なんか十歳は若返ったかのようだ。どうなってんの?


「ありがとうございます、マリーダ様」


「構わないよ。元気になったらサーグたちを見てやってよ。アタシの家族だからさ」


 最初は殺伐とした出会いだったが、もう二、三年は一緒にいる。ボッチなオレが、だ。僥倖と言っていいだろうよ。


「マリーダ様! おかーちゃんが来て欲しいって!」


 一段落して休んでいたら子供たちがわらわらと駆けて来た。


「どうかしたの?」


「お腹が痛いって! 子供がって!」


 妊婦か? それはオレの管轄ではないんだがな。産婆を呼べよ。と思いながらも子供たちに引っ張られて向かった。


 やっぱり妊婦で今にも産まれそうな状況だった。


「どうしたの?」


 産婆に尋ねた。


「逆子だよ」


 逆子? ってなんなの? そういう知識、まったくないんですけど。


「普通は頭から産まれるんだが、逆子は足や尻から産まれるんだよ」


 で?


「引っ掛かって母親が死んでしまうんだよ」


 ……つまり、出せばいいってこと?


 出産シーンなどこれが初めてだが、いろいろグロシーンを見ているからなんとも思わない。赤ん坊の足をつかんでテレポさせた。


 赤ん坊は産婆に任せて母親をヒーリングする。


「出産って命懸けなんだね」


 全母親に感謝の敬礼。母子ともに健康ですって、こういうときに使う言葉だったんだな。


「赤ん坊はどう?」


 なんか静かだね。出て来たら泣くイメージがあったのに。


「息をしてない。喉を詰まらせているのか?」


 喉になにを詰まらせるんだ? 


「息をしてないのならさせればいいよ」


 赤ん坊にテレキをかけて振動させてやると、元気に泣き出した。おー凄い泣き声だ。


「これで大丈夫でしょう。母親にはヒーリングを掛けておくよ」


 年齢から出産の経験はありそうだ。体格もいいからヒーリングを掛けたらすぐに回復するだろうよ。


「じゃあ、あとはよろしく」


 オレにやれることはないので帰るとする。

 

 宿屋に帰ると、離れを造っている職人たちが休んでいた。


「お疲れ様。もうこんなに造ったんだね」


 この離れは従業員用のもので、オレの部屋も造ってもらう約束だ。

 

「エリーダ様、お疲れ様です!」


 いや、休憩なんだから一斉に立ち上がらなくていいよ。


 なんかもうオレが異界人であることは知れ渡り、なんか神格化されている。


 それはまあ、仕方がない。リュムを従え、ヒーリングで村の者を癒している。こちらとしては自分の居場所を作っているだけなのに。


 まあ、面倒になれば湖の小屋に戻ればいい。あ、サーグの結婚式が終われば一度帰ってもいいかも。オレに頼ることを覚えたら甘えが出て来るからな。


「いいものを造るのでご安心ください」


「楽しみにしているよ。でも、無理しなくていいからね。家族になにかあれば休んでもいいからさ」


 別に急ぎでもない。のんびりやってくれて構わないさ。


「痛いところがあったら言ってね。和らげることはできるからさ」


 無理して仕事している者もいる。腰痛に苦しんでいる者が結構いたっけ。スピリッツの立場をよくするためにもヒーリングさせてもらいまっせ。


「はい! ありがとうございます!」


 休憩の邪魔になるだろうからすぐに立ち去る。見られていてもやり難いだろうからな。


「お、もう客が来てんだ」


 宿屋の前には馬車が停まっていた。


 荷台にはなにも載ってなく、旅に必要な荷物が載っているだけだ。馬車で旅をしているのか?


 中に入ると、冒険者みたいなのが五人いた。いや、傭兵か? 


「あ、いらっしゃいませ~」


 宿屋の従業員みたいな感じで挨拶し、サーグに視線を向けた。


「ちょうどよかった。馬車を厩に運んでくれ」


 オレの視線を理解して、指示を出してくれた。


「ルイス。馬車を頼む」


 リーダーらしき男が唯一の女に馬車に付いて行くように指示を出した。


「了解」


 その女と外に出た。


「こんな辺境に珍しいですね。傭兵さんですか?」


「ええ。コンブーク傭兵団よ。辺境の先に向かうところなの」


 へー。なにか曰く付きのようだ。


「馬車はこちらです」


 女が馬車に乗り、宿屋の裏にある厩に向かった。


 まだスピリッツの馬がいるだけで、世話をしているのは村のじいちゃん。小遣い稼ぎで雇った者しかいないのだ。


「じーちゃん。お客だよ。馬をよろしくね」


 少女らしい態度にびっくりするが、そこは余所者相手にしているからだとすぐに理解してくれた顔になった。


「ああ、わかったよ。任せておきな」


「おねーさん。必要ものがあるなら宿屋の主に言うといいよ。町から仕入れているものをたくさん扱っているから」


 サーグから買わせて、買ったものから情報を探るとしよう。


「あ、アタシ、マリーダ。宿屋の小間使いをやっているんだ。村で必要なものがあるならアタシに言ってくれたら集めるから」


 オレは近くにいて情報を探るとしよう。


「そのときはお願いするわ」


 任せてと笑顔を見せた。いや、オレも女の子が板に付いてきたぜ。

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