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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第35話 マジびっくり

 マルティーカ一家が静かすぎて拍子抜けだ。


 怒りに任せて襲って来ると思ったのに、あいつら隠れてしまったのだ。


「アタシ、失敗したかな? 大したことしてないのにさ」


 殺したのなんて十人かそこらだよ。あいつら、百人を越えた大組織だよ。高々十人くらい殺してもびくともしないだろうによ。


「いや、十二分に大したことしているから」


「え、そうなの? マジで?」


 オレ、なにをしたのよ?


「この子はいつもこうなのかい?」


 呆れた様子でブロイやミックを見ていた。


「いや、まあ、まだ大人しいかと」


「え、ええ。マリーダ様にしては大人しいかと」


 だよね~。大人しいよね~。てか、これからだったのに。大したことするの。


「なんなの、あんたら? マルティーカ一家よりヤバいじゃん」


「否定はしない」


「否定はしない」


 うんと頷くブロイとミック。ついでにオレも頷いておいた。マルティーカ一家など小程度のゴブリンの群れ並みだ。それを狩るヤツがヤバくないなんてあり得ない。てか、ブロイもミックも兵士だ。人を殺してなんぼだ。ゴロツキなんかと比べられたら失礼ってものだろうよ。


 ……レナたちペガサスから生き残った運もあるしな。並みであるはずがないんだよ……。


「どうしようか? 乗り込んで潰す?」


「あまり派手に動くと、マルティーカに代わってスピリッツが恐れられますよ」


「それもそっか。同じように思われるのも嫌だしね」


 ほんと、上手く行かないものである。


 どうしたもんかと考えていたら店にスジモンってわかる男が現れた。


「マルティーカ一家の若頭、バルドってもんだ。話があって来た」


 カチコミ、ではないようだ。本当に話に来たっぽい。


「スピリッツのブロイだ。サンベルクで商売をさせてもらっている」


 そのセリフに眉を動かした。あまり交渉は得意ってはなさそうだ。でも、頭は悪くはないようだ。


「あんたの上にいるってことかい?」


「そうだな。おれは三番目ってところかな? すぐ上の者は統括者的立場だ。もっと大きな町を仕切るようになるだろう」


「じゃあ、一番上の者は?」


「あまり表には出て来ないお方だ。裏でオレたちを支援してくれているよ」


 ここにいる者たちをゆっくり見回している。


「その子には手を出すなよ。スピリッツの影だ。悪さをしたらお仕置きするよう命令を受けている。おれより上と思ってもらっていい」


 よろしくと、にっこり笑ってみせた。


「……そうか。注意しよう」


「そうしてくれると助かる。この子になにかあればおれたちはこの町を灰塵にするだろうからな」


 その前にオレが灰塵にするだろうけどな。


「マルティーカ一家としてはあんたらと敵対はしたくない。島は半分渡す。どうかそれで手を打ってくれないだろうか? こちらは広場を仕切れたら町は譲る」


 そっちのほうが美味い、ってことなんだろうな。


「……わかった。それで手を打とう。こちらとしても無駄に恨みは買いたくないからな。縄張りを分けられるならそれに越したことはないさ」


「上に相談しなくていいのか?」


「おれがサンベルクを任された。上からも好きに判断して決断しろと言われている。失敗してもいい勉強が出来ただろうと許してくださるお方だからな」


 バカをしないのなら失敗なんて何度しても構わない。最大の失敗は死ぬことだからな。生きてりゃやり直しは利くものだ。


「寛容なんだな」


「味方にはな。敵には容赦しない。裏をかこうと思うなら絶対に勝てる算段をしてからにしろよ。中途半端なら勝てるまで大人しくしていろ」


 ブロイも脳筋ってわけじゃなくてなによりだ。それともミックが入れ知恵かな?


「……忠告はありがたく受け取っておこう……」


「そうしてくれ。あと、スピリッツとしてもそちらに挨拶に行くよ。どちらが上ってわけでもないんだしな。そっちのボスはなにが好きだい? 土産として持って行くよ」


 そうだな。挨拶は大切だ。相手がどう出るかも知っておくべきだろうからな。


「……それなら菓子なんかを頼む。うちのお頭は酒を飲まんのでな」


 だからウイスキーのよさを知らなかったのか。てか、甘党なんかい! なんのギャップ萌えだよ? キモデブ親父だったら詐偽で訴えるぞ。


「そうかい。考えておくよ」


「ああ。明日にでも連絡を寄越す。都合のいいときを教えてくれ」


 そう言って帰って行った。


 見張りがいないかを確認したら皆で話し合うことに。お互い、どう思ったかを聞かせてもらった。


「考えなしの欲望剥き出しってわけではなさそうですね」


「あんな男がいるんだ、それなりに人望は持ってそうじゃないか?」


「あの男が甘党だったとは知らなかったよ」


 概ね悪くない感想のようだ。


「ブロイに任せる。いいように決めていいから。不利な条件を飲んでしまっても気にすることはないよ。ゲスなら殺せばいいんだからね」


 ゲスやクズとの約束など守る価値なし。皆殺しにしてやれば問題解決だ。


「わかりました。菓子をお願いしていいですか?」


「任せて。美味しいものを用意しておくからさ」


 クッキー缶とかでいいだろう。贈り物ならな。

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