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リリーフ・オブ・ザ・ライフ~inTS  作者: タカハシあん


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第22話 出発

 冬は穏やかに過ぎ、何事もなく春を迎えた。


「暖かくなると雪が溶けるのも早いもんだな~」


 気温は十二度。太陽も燦々と輝いている。冬の服では汗がじんわりと出て来るほどだ。


「マリーダ!」


 貫禄が出て来たイーダが小屋にやって来た。


「また子供を作ったのか?」


 冬の間に産まれた子なんだろう。オレくらいの背丈だった。


「ああ。五番目の子だ」


 もう五人目かよ。毎年のように産んでんな。母体、大丈夫なんか?


「名前をつけてくれ」


「たまには親がつけてやれよ。もうなんて名前にしていいかわからんわ」


 なぜかオレに名前を付けるようせがんでくる。名前を付けたからって特別な力が発動するわけじゃないのによ。


「なんでもいい。マリーダがつけてくれ」


「男? 女? どっちだ?」


 子供のうちは男か女かがわからんのよ。


「女だ」


「じゃあ、ハルウララだ。今の陽気から名前を取った」


 馬の名前からじゃないからね。


「いい名だ」


 それはなにより。たぶん、旅から帰って来たら忘れているだろうけどな。あ、カメラに収めておくか。他のヤツも忘れそうだしな。


 マギとルージーを呼んでデジカメの使い方を教え、ソーラーパネルとポータブル電源を二つ、プリンターにインクと必要な分を買って来た。


「アタシがいないときは小屋を使っていいからね」


 二人はここに残りたいようで、イエティたちと仲良くやっている。


 こんなところで生涯を終えるのもどうかと思うが、そこで生涯を終えても構わないと思っているオレにどうこう言う資格はない。好きにしろと言ってやったよ。


「はい。わかりました」


「お気をつけて」


 なんかオレを主人扱いしてくるんだよな、この二人。別に二人に給料払っているわけじゃないのによ。


 用意という用意はないのでテレキボードを操って村に向かった。


 準備を進めていたので出発はいつでもできる。サーグたちにどうすると尋ねたら今からでも構わないってことで出発することにした。


 天気がよく、道も乾いているので進みは順調だ。その日だけで三十キロは進むことができた。


「魔物がいない世界は進みが速いものだ」


 平和……でもない世界だが、あまりにも順調であくびが出る。オレは別に争いを求めてはいないんだけどな。


「てか、道はあるんだね」


 気にもしなかったが、馬車は道を進んでいる。あんな辺鄙な場所と往来があったんだな。


「昔はあったと聞いていますね。なぜ途切れたかまではわかりませんが」


 きっとイエティに転生させられてしまった同胞が生きていた頃だろう。人間と交流はあったみたいだとイーダが言っていたからな。


「そう言えば、帝国のお金って、これから行くところで使えるの? 換金出来る国交なの?」


「帝国の貨幣なら信用があるので使えると思います。換金も出来るはずです」


「それはよかった。使えないんじゃ意味ないからね」


 使えるなら商売を始められる。


「てか、どんな商売にしようか? サーグはなにやりたい?」


「宿屋をやりたいです。おれ、宿屋の息子で、家を継ぐはずだったんです。でも、借金返済で徴兵されてこんな辺境まで連れて来られました」


「借金返せないと徴兵されるんだ」


「はい。罰みたいなものです」


 あれか? 借金を返すために地下労働施設で働く的な感じか? 帝国っておっかねーな。いや、その帝国のアホどもを殺したオレのほうがおっかねーか。


「宿屋か。それはおもしろそうだな。どんな宿屋にしたいの?」


 旅は順調。魔物の襲撃もなし。おしゃべりだけが唯一の時間潰し。サーグや皆でどんな宿屋にするかを話し合った。


 村を出て五日。道が途切れたり崖崩れはあったものの、一日四十キロは移動できた。二百キロほどすぎると、小さな村が現れた。


 村は柵などなく、見張りが立っていることもない。本当に魔物がいない世界なんだな~。まあ、その分、戦争とかはよくありそうだがな。


 村との交渉はサーグに任せる。オレは村人に見える位置に立つ。柵がない村だからと言って余所者に優しいとは限らない。オレのような子供がいたら警戒心も薄まるだろうよ。


「一晩泊めてくれるそうだ」


 別に村に泊まる必要もないが、この辺のことを知らないといけない。酒を振る舞って情報を引き出した。もちろん、サーグがだけど。


「マリーダ様。ここでも帝国貨幣が使えるようなので、羊毛を買います」


「羊がいるんだ」


 もうこの世界に慣れたからか、獣の臭いにオレの嗅覚が反応してくれなくなっている。そんな臭い、全然気が付かなかったよ。


「はい。肉も売ってくれるそうです」


「それはいいね。焼き肉のタレを持って来るよ」


 この時代の羊なら塩だけでは物足りない。焼き肉のタレがないと美味しく食べられないだろうよ。


「あと、大きな町がこの先にあるそうです。屋台でも開いて串焼きでも売りましょうか? 胡椒やタレもありますからね」


「お、いいね。商売上手じゃない。宿屋開店資金を稼ごうか。ここで売れそうなものはあった?」


「はい。服が欲しいと言われました。持って来て助かりました」


 服は軽い。運ぶにも売るにもちょうどいい。ちなみに重いものはルームに入れてあるよ。

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