第10話 一年
冬が来た。初雪から猛吹雪だよ。酷いものだ。
小屋の雪を落としてから眠りについたが、朝起きたら小屋が埋まっていた。
「こんなに降るときがあるんだな」
まあ、そんな年もあるだろうと、テレキで雪かきをする。
小屋の周りを終えたら洞窟まで行ってみる。この世界のイエティは雪の中をあまり歩いたりしない。歩くとしたら狩りのときだそうだ。
洞窟までは二キロくらいだろうか? イーダたちが毎日通っていたからまっすぐな道が出来ている。迷うことなく洞窟までやって来れた。
出入口も雪で埋まっていたので雪かきし、氷柱を排除した。
「マリーダ、助かる」
「ああ。皆は大丈夫かい?」
「快適に過ごしている。ただ、出入口が雪で塞がれていたからどうしようかと考えていた」
さすがのイエティも三メートルも積もったら戸惑うレベルなんだな。
「マリーダ。仕事場に行けるか?」
職人となりつつあるヤツらは仕事が出来ないと精神的に辛いようだ。
「行けるよ。雪かきもしておいた。いつものように出来るよ」
よしと気合いを入れて小屋に向かいって行った。元気だね~。
「マリーダ!」
「マリーダ、遊ぼう!」
今年生まれた子供たちがわらわらとやって来た。
生まれて半年も過ぎてないのに二メートル近くあり、オレを簡単に持ち上げられている。
まだ力加減が出来ないのでテレキで防御しながらじゃないと握り潰されてさしまう。子供の相手は疲れるよ。
まあ、でっかい犬と遊んでいるようなもの。嫌ではない。思いっきり遊んでやった。
冬はやることがないので毎日のように洞窟に通い、子供たちに積み木やジェンガで知育する。ついでにひらがなや簡単な計算も教えた。
若いからか脳ミソが柔らかいのだろう。教えたことをどんどん吸収しているよ。
飽きたら物語を聞かせてやり、言語能力も高まっているような気がする。
洞窟に泊まることもあってか子供たちに懐かれ、なんか兄、いや、姉か? 今の状態では。ねーちゃんねーちゃんと呼ばれるようになったよ。
晴れの日には周辺を散歩し、雪合戦をしたり氷が張った湖でスケートをしたりもした。
冬はどんどん過ぎて行き、雪も徐々に解けて行く。この世界で生まれて一年が過ぎたか。時が過ぎるのは早いものだ。
「ねーちゃん、鹿だ!」
鹿も冬を乗り越えたか。今年の大雪で食べるものがなかったんじゃないか?
気持ち、痩せているように見えるので狩ることはしない。まだブーダも生きている。もっと肥えてから収穫するとしよう。
「秋になったら狩りに連れてってやるよ」
一歳になったら狩りも出来るだろう。まったく、イエティの成長は早いもんだよ。
雪が日陰にしかなくなったら新たに畑を耕す作業を始める。今年はじゃがいもを植えるとしよう。
子供たちも手伝ってくれ、かなり広い土地を耕すことが出来た。
芋だねを植えたら子供たちに世話をするようお願いする。冬に消費した薪を調達しないといけないからな。
生活は単調だが、このスローライフ感はいいものである。
「マリーダ。鹿狩りに行こう」
そろそろ鹿が肥えた頃、イーダが狩りの誘いに来た。イ○ノ、野球しようってノリだな。
去年、五十匹以上狩ったのに、まったく衰えてないほどの数の鹿がいた。自然とは凄いものだ。
「鹿が増えすぎるのも問題が出そうだな」
「そうだな。前まではマニッシャーが襲っていたからたまにしか見れなかった」
「結局、あれ一匹だったな。どこから流れて来たんだか?」
あいつがどこからか逃げて来た場合、もっと凄いものがいるってことだ。そんなもんとは戦いたくないものだよ。
「ロケットランチャーでも買っておくか?」
ドラゴンとかだったら勝てる気がしない。そんときは現代兵器に頼るとしよう。
「パトロールするか」
畑や家畜の世話、道具作りはイーダたちがやっている。オレの出番がなくなってきたところだ。外敵がいないかパトロールでもしよう。
「そうなると広範囲のパトロールになるな」
さすがに歩いては無理だし、テレポでは見えない場所には行けない。自転車以上の速度が出せて、細かいところにも行ける乗り物……なんてないか。
いや、あるか。別に自転車や飛行機がなくともオレには超能力がある。オレ自身、空は飛べないが、物を空を飛ばすことは出来る。
「……サーフボードがいいかもな……」
なんかサーフボードに乗ったロボットアニメがあったような記憶がある。アニメは観てなかったのでよくは知らないがな。
とりあえず、そこら辺の木を伐ってサーフボードを作ってみた。
テレキで持ち上げられる重量は約百キロ。一個につき百キロだ。最大百キロを十個までは持ち上げたことはある。かなり精神力を使ったけどな。
おもしろいことに百キロのものに四十キロくらいの石を乗せても苦ではなかった。あくまでもテレキで持ち上げられるものに作用している感じだった。
さすがにまったく負荷はないとは思うが、今のオレが乗っても問題はなかろう。四十二キロしかないのだからな。
試しにサーフボード(試作)を浮かべ、そこの上に乗ってみる。
負荷を感じることはない。ってまあ、サーフボードを出しても五十キロはないのだから当たり前か。
「うん。これでいいや」
あとは好みの形にして色を塗ろう。さて。どんなのがいいかな~?




