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ノイレン〜黒の純真  作者: 山田隆晴
第七部『そして伝説へ』

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88/88

88『しっかりしなきゃ。』

 西街区を中心に王都全域に及ぶ自警団による大捜査網が敷かれた。

 狙いはノイレンただ一人。黒髪の長いポニーテールと珍しい柄のサーベルを提げている。手がかりはそれだけ。

 広い王都の中で女一人を探す。捜索は困難を極めると誰もが思った。ところが意外にもすんなりとノイレンの情報が集まった。

「ああ、その女の子ならすっごいキョロキョロしてたからよく覚えてるわ。」

「よく馬から落ちないなあと思って見てたよ。」

「知ってる! 黒髪の長いポニーテールだろ。見たよ。もうあちこち見回して(せわ)しなかった。お上りさんだな、ありゃ。」

 聞き込みをした街の人々が口をそろえて賑やかなお上りさんという印象を教えてくれた。

「幌付きの馬車と一緒だったよ。」

「そうそう、馬車には亜麻色の髪をした女の人が乗ってたな。」

「そっちのお嬢さんは恥ずかしそうにしてた。」

 馬車の中にいてあまり人目についていなかったはずのサフィアまでノイレンのせいでよく覚えられていた。

「それで、そいつらはどこへ向かった?」

 自警団員の質問に皆が指差したほうを辿っていくとカーツォ商会の王都支部のあるあたりに行き着いた。


 自警団本部でその報告を受けた団長は不敵な笑みを浮かべた。

「亜麻色の髪の女。間違いないそいつはカーツォの娘のサフィアだ。以前何度か見かけたことがある。黒髪はサフィアの連れだったか。それならあれこれ嗅ぎつけていてもおかしくない。」

 団長は副団長にヒソヒソと策を授けた。

「了解しました。早速愚連隊に繋ぎを取ります。」

 副団長は数人の部下を連れて本部から出ていった。



 カーツォ商会王都支部の周りに張り巡らしてあるバリケードの周辺に愚連隊の連中が(たむろ)って騒いでいる。

「あーっはっはっは!」

「いいぞ、いいぞ、もっとやれ!」

「なははは、足がふらついてるぞ。」

 連中は昼間から酒を(あお)って酔っぱらい、大声で騒ぎ、バリケードを蹴飛ばしたりしている。あまつさえバリケードの中に連中が放った野犬に向かって石を投げたりして人間への憎悪を掻き立て商会の人々が表に出づらくなるようにしていた。

 支部の建物の中から表の様子を伺っているノイレンは呟いた。

「よくまわりの住人が騒がないな。」

「騒いでも無駄だからです。」

「どうして?」

 ノイレンのそばにいる支部の者が教えてくれた。

 野犬は腹を空かせ、人間を見ると牙をむき吠えまくり、ところ構わず糞尿を垂れ流す。怯えた周辺の住民が自警団に通報しても、『カーツォが飼ってる犬だろう、奴らに頼め』と、にべもないことを。

「なんだそれ、じゃあうちらが飼ってる犬じゃないって自警団(やつら)に言えばいいじゃん。」

「言いましたよ。でも『それじゃこの囲いはなんだ? これは犬小屋のつもりなんだろう。』って。」

「それなら犬っころをバリケードの外に出しちゃえばいいじゃん。」

「それはダメです。まわりの住民の皆さんが怖がります。そうなるとうちの印象まで悪くなりますから。」

「はあ?!」

 ノイレンは呆れて大きな声を出してしまった。支部の者は肩をすくめて続けた。

「それだけじゃないんですよ。愚連隊のことを取り締まってくれと通報されれば自警団(やつら)はやっては来ますが、そこはそれ、愚連隊は自警団を見ると蜘蛛の子を散らすように逃げるんで、やっぱり何もしないで帰っていくんですよ。自警団(あいつ)ら。」

 ノイレンはだんだん腹が立ってきた。

「そういうことなら誰か一人捕まえてくっか。」

 そう言うとノイレンは両肩をぐるんぐるんと回しながら表へ出ていった。

「ワンワンワン!!」

「ヴウ〜!」

 バリケード内に放たれている野犬たちがノイレンを見て牙をむき、唸り、威嚇してきた。ノイレンは深く息を吸うと腹の底から思いっきり大きな声で吠えた。

「わんっ!!」

 野犬たちはその咆哮に(おのの)いて萎縮し尻尾を垂らした。

「へっ、可愛いもんじゃねえか。」

 その咆哮に気づいた愚連隊の連中がバリケードの上から顔を覗かせた。

「なんだあの女?」

「よく見りゃ上玉じゃねえか、ヒヒヒ。」

「よう姉ちゃんオレたちと楽しいことしようぜぇ。いっひひひ。」

「裸見せてくれよ。ひゃっひゃっ。」

 バリケードの上に顔を出して口々に声をかけてきた。そいつらの顔つきはどれも下衆と呼ぶに相応しくいやらしい。ノイレンはその下衆なニヤケ顔ににっこりと微笑みかけるとおもむろに剣を抜き、そいつらの頭の上すれすれに弧を描いた。するとネオソードの刃が巻き起こした風に乗ってそいつらの頭髪がはらはらりんと空中に散っていった。一瞬のことにそいつらは声も出ず呆然としている。剣を納めるとノイレンはニヤリと口角を上げてそいつらを見た。

「まだまだ寒いからな、風邪引くなよ。」

 皆揃って頭のてっぺんがカッパ禿げのように薄くなったそいつらは涼しくなった頭を押さえてキャンキャン鳴いた。

「ぐあぁ〜、やりやがったなこのスケ!」

「許さねえぞ、このやろう。」

「ふざけんじゃねえ、裸にひん剥いてやる。」

「てめえの髪も切ってやる。逃げんなよ。」

 ノイレンは人差し指だけくいくいと動かして挑発した。

「じゃあこっちに来いよ、相手になるぜ。」

「やってやろうじゃねえか、このスケぇ!」

 カッパ禿げの一人がバリケードを乗り越えてノイレンに飛びかかってきた。ノイレンはまた腹の底から吠えた。

「わんっ!」

 すると遠巻きに見ていた野犬たちがそのカッパ禿げに襲いかかった。

「ぐわあっ、やめ、やめ、痛たた、」

 そのカッパ禿げの戦意が完全になくなったのを見て取ったノイレンは「ぱんっ」と手を叩いた。野犬たちはピクっと耳を動かして襲うのを止めた。

「いい子たちだ。あとでお菓子あげるよ。」

 ノイレンは野犬たちににっこり笑いかけるとそのカッパ禿げのシャツの襟を掴んで支部の中へ引きずっていった。バリケードの向こうでそれを見ていた残りのカッパ禿げたちは、野犬を操るノイレンに恐れをなし、腰が抜けて動けなくなっていた。

 そこへ数人の部下を連れた自警団の副団長がやってきた。愚連隊の連中は示し合わせたように散り散りに逃げていった。腰を抜かしたカッパ禿げたちも犬のように四つん這いで逃げ出した。

「お前たちはここで見張っていろ。」

 副団長は部下をバリケードの前に待機させると一人で建物の陰に消えた。


「ノイレンさん、見てくださいあれを。」

 カッパ禿げを引きずってきたノイレンに支部の人が表を指さした。

「自警団?」

「そうです。誰かが通報したんでしょう。でもああやって自警団(やつら)は逃げた愚連隊を追いかけもせずしばらくその場にいて警戒してるフリをするんです。」

「なるほどね。やっぱ自警団ってどこも中身は同じだな。それより、」

 引きずってきたカッパ禿げを椅子に座らせると剣を抜いて彼の目に切っ先を突き付けた。

「な、な、な、なにすんだ・・・」

 カッパ禿げは怯えて膝がカタカタ震えている。

「選べ。意地を張って死ぬか、洗いざらい話すか。」

「ど、どど、どういう、」

 カッパ禿げは恐ろしさのあまり舌がもつれた。

「お前らと自警団の繋がりを証言しろ。」


 その頃単独行動をはじめた副団長は人目に付かない路地裏で愚連隊の一人と落ち合っていた。

「だんな、どんな用件で?」

 愚連隊の一人、無精ひげを生やし汚い身なりをしてはいるが、少しは賢そうな面持ちをしている男が媚びることもなく訊いた。

「カーツォの娘、サフィアが今ここに来ている。そいつを(さら)え。どこでもいい人目に付かない場所に監禁するんだ。」

 副団長は周囲を警戒しつつ無精ひげに指示を伝えた。

「娘ねえ、で、その娘はどんな顔をしてるんで? 見たこともねえやつを攫えと言われてもねえ。」

 無精ひげが少々ムっとした表情で質問した。

「亜麻色の髪の女だ。黒髪のポニーテールと一緒にいるはずだからすぐに分かる。」

 副団長もサフィアの顔を知らないためにそんなことしか教えられない。

「それで、攫ってそのあとは?」

「カーツォを潰すための人質として利用しろ。商会を畳んで王都から出て行けと要求するんだ。従わない場合は娘を殺すと脅せ。もちろん用済みになったらちゃんと口を封じるのを忘れるなよ。」

 副団長の指示に無精ひげはあからさまに不満そうな色をその顔に浮かべた。

「俺たちゃ今でも自警団(あんたら)の代わりに危ねえことをしてるんだぞ。わかってんのか? へたすりゃそのうち騎士団が動き出すかもしれねえんだ。それを今度は人さらいに殺しまでしろってのは、いくらなんでも虫が良すぎやしないか?」

「たかだか愚連隊(おまえら)相手に騎士団が動くことはない。安心しろ。そのために自警団(われわれ)がこうして動いているんだ。指示に従えないというなら今からでも徹底的に取り締まってもいいんだぞ?」

 副団長は上からの威圧的な態度で脅しをかけてきた。それに対して無精ひげはせせら笑った。

「へへへ、言ってくれるじゃねえか。俺たちを取り締まってみろ。今までのこと洗いざらい騎士団にぶちまけてやるぜ。そうなったら”おしまい”なのはそっちだろ。」

 副団長は顔色一つ変えずに剣を抜いた。

自警団(われわれ)愚連隊(おまえら)、騎士団はどちらの言い分を信じると思う?」

 副団長は近衛師団に渡るはずだった切れ味の鋭いロングソードをそいつの無精ひげにそっと当てた。はらはらと無精ひげが数本落ちていく。

「汚えぞ。自警団のやることか?」

「街のゴミでしかないお前らに汚いと言われる筋合いはない。」

 無精ひげは悔しそうな色をその顔に浮かべて副団長を睨んだ。



 その日の午後ノイレンは再びバルタザールに会いに武具屋ギルドへ向かった。馬さんに跨るノイレンのうしろにはサフィアがいる。

 ノイレンはぷうと頬をリスのように膨らませ、不服この上ないという表情で手綱を握っている。

「ちょっとノイレン。そのフグはやめなさいって言ったでしょ。子供っぽいわよ。」

「うるさいな。そんなこと言うならおとなしく支部で待っててくれよ。」

「何言ってんのよ、バルタザールをやり込められるって場面に立ち会わないなんて商売で損して得を取らないのと同じよ。」

「あのなあ、場合によってはどうなるか分かんないんだぜ。ヘタすりゃ怪我するかもしれないんだ。」

「そんな程度が何よ。『損して得取れ』は父の口癖よ。私の座右の銘でもあるわ。それに一発逆転の好機を見逃すなんてもったいなさすぎるじゃない。」

 ノイレンはさらに頬を膨らませた。

 ノイレンが支部内へ引きずってきた愚連隊のカッパ禿げは命惜しさに洗いざらい出るところへ出て話すと約束した。それを受けてノイレンは再びバルタザールに揺さぶりをかけるために向かっていた。

「証人がいると言えばバルタザールは絶対自警団と連絡を取るはず。そこを尾けていって証拠を押さえるんだ。危ないんだぞ。」

「あら、そのときはノイレンが私を守ってくれるんでしょ。そのための護衛なんだから。」

 サフィアはノイレンがどう言おうと反論してやり込め、涼しい顔をしている。

「ぶひひひん!」

 馬さんが仏頂面をしているノイレンの代わりに嘶いた。


 しばらく進んだところでそれは襲いかかってきた。

 四方八方から投げ縄が馬上の二人めがけて飛んできた。

「きゃあっ。」「うわっ。」

 幾本もの投げ縄がノイレンとサフィアに絡んで、その体や腕を絞り上げる。ノイレンは手綱を握ったまま腕ごと体を拘束されてしまった。そのまま馬から引きずり落されそうになるのを、ノイレンは手綱を握り必死にこらえる。

「きゃああ、ノイレン!!」

 サフィアが馬から引きずり落された。そのままサフィアは縄にひかれてノイレンの視界から消えた。

「サフィア!」

 ノイレンは体に巻き付いた縄を解こうともがくが逆に縄が締まって余計に腕と体が締め付けられていく。

「こんにゃろ~。」

 ノイレンはかろうじて動く肘から下を使って手綱を操ろうとするが馬さんが言うことを聞かない。

「ぶひひん!!」

 馬さんは鼻から息を吐くと後ろ脚立ちになって嘶き、その後地面を蹴って駆けだした。そのあまりの勢いにノイレンを縛り上げている縄の先を握っていたやつらが逆に引きずられて土ぼこりをあげた。

「止まれ! 馬さん、サフィアが! 引き返すんだ!」

 まともに身動きの出来ないノイレンは手首をひねって手綱を引くが馬さんはまったく従わない。幾本もの縄の先にいた奴らは傷だらけになり、土と砂利と血にまみれて次々と縄を掴むその手を放して遠ざかっていった。

「あいつら愚連隊の連中か?!」

 ノイレンは激しく揺れる馬の背で振り向き、後方の地面に転がる連中を見た。

「馬さん、もう大丈夫だ、止まれ、止まってくれ。サフィアを助けに行かないと。」

 何度も手綱を引くが一向に馬さんは止まらない。

「このバカ馬! 止まれってんだよっ!」

「ぶひぃん!!」

 馬さんが怒鳴った。馬さんのそんな荒々しい鳴き声を聞いたことのないノイレンはびっくりした。

「ごめん・・・」

 ノイレンは馬さんの首に寄りかかるようにしてたてがみに顔をうずめると手綱を引くのをやめた。

『この状況じゃわたしに勝ち目はない。だから馬さんはわたしを助けるために走ってんだ。しっかりしなきゃ。』

 馬さんはカーツォ商会王都支部まで来るとバリケードをジャンプして乗り越え大きく嘶いた。野犬たちが馬さんの周りに集まってきて吠えるのを聞いて支部の者が数人建物から出てきた。


 その頃愚連隊の連中に捕まったサフィアはどこだかわからない場所へ連れていかれ暗くて薄汚い、隅のほうでねずみがいるような物音の聞こえる部屋に閉じ込められていた。

「やってくれたわね。いったいどこよ、ここ。」

 手足を縄で縛られたサフィアは古びた樽に寄りかかりながら上体を起こした。暗さにも目が慣れてくるとそこが物置らしいことが分かった。外の状況を知りたいが、窓がない。

「かび臭くてたまらないわ。」

 手足を縛られているサフィアはごろごろと転がりながら唯一の出入り口である扉まで移動して聞き耳を立てた。しかし何の物音も聞こえない。

「誰もいないなら遠慮することないわね。」

 サフィアはドアを足でドンドンと蹴飛ばした。しかし表から鍵がかけられているらしくびくともしない。

「ふうう。今に見てなさい。たっぷり後悔させてやる。」

 サフィアは負け惜しみにも似たセリフを扉に向かって吐いた。


 一方カーツォの王都支部ではノイレンが息巻いていた。

「ダメもとで騎士団に通報してくれ。わたしは先に探しに行く。」

 支部の人たちに縄を解いてもらったノイレンは再び馬に跨り直ぐにも出発しようとした。

「待ってくださいノイレンさん。」

「止めないでくれ。」

 支部長のベシェフェが手綱を握ってノイレンを止めた。

「お嬢様がどこに連れて行かれたか見当はついているんですか?」

「わかんないよ。だから自警団を揺さぶってみる。」

「いくらなんでもあなた一人では危険です。騎士団に連絡してからにしてください。」

「そんなわけにいくかっ。わたしはサフィアの護衛だ。サフィアを守れなくてどうするってんだ。」

 ノイレンは止めるベシェフェの手を振り切って馬の腹に拍車をかけた。馬さんは来た時と同じようにバリケードをジャンプで飛び越えて駆けていった。


 自警団本部に着いたノイレンは馬さんごと中へ飛び込んでいった。

「貴様は!」

 再び現れたノイレンに敵意を剥き出しにする自警団員たち。ノイレンは馬の背から飛び降りると彼らの剣をひらりといつもの軽やかな足捌きで躱し進んでいく。ロビーを突っ切り階段を駆け上がる。二階の通路の奥にある部屋、その前まで来ると、ノックの代わりにノイレンはドアを思い切り蹴破った。ドアは蝶番(ちょうつがい)が壊れ、開いたまま傾いた。

 中にいた団長はノイレンの姿を見ると仁王立ちになり睨みつけて(あい)対した。

「何の用だ。」

 ノイレンは歩み寄りちょうどネオソードの切っ先が相手を捉える間合いギリギリの位置に立ち止まった。

「サフィアを返してもらおう。」

「サフィア?」

「カーツォ商会の会長代理のサフィアだ。」

「ほう、王都(ここ)に来ているのか。それは初耳だ。」

 団長はとぼけた受け答えをした。

「あんたらが愚連隊の連中を使ってることは知ってるんだ。大人しく返してくれれば手荒なことはしないぜ。」

 団長はあくまでもとぼけ続ける。

「ふふん、何を言っているのか俺にはどうもよくわからないのだが、思い違いでもしているんじゃないか。」

「もうすぐ騎士団も動くぞ。」

 ノイレンはハッタリをかました。しかし団長は冷笑を浮かべてノイレンを蔑むように見た。

「もっとマシなウソをついたらどうだ。女一人いなくなったくらいで騎士団が動くわけなかろう。」

 ノイレンの右手が柄に伸びる。

「へっ、そういうのは自警団(あんたら)の仕事だもんな。」


 そこにロビーからノイレンを追いかけてきた団員たちが出入り口に殺到した。

「団長!」

「お前らはそこで見ていろ。」

 団長はゆっくりと剣を抜いた。近衛師団に渡るはずだった上等な、切れ味の鋭い剣。装飾も見事だ。

「どこからでもかかってくるがいい。」

 団長はまるで自分の首を自ら落とすかのように、刃を首に当てるようにして構えた。ツォルンフート。ちょうど野球のバットを首筋に当てるようにして構えるのと同じだ。

「やってやろうじゃん。」

 ノイレンも剣を抜いた。鞘走りの音だけが静かに部屋の中を駆けていく。

次回予告

不覚を取りサフィアを攫われてしまったノイレン。サフィアを取り戻すべく自警団本部に乗り込んだノイレンは団長と対決するが、狭い室内での戦闘経験が少なく苦戦する。一方サフィアは逃げ出そうと奮闘するがうまくいかない。そんな折サフィアがこっそりと蒔いていた種が発芽するのだった。

君は彼女の生き様を見届けられるか。

次回第八十九話「選べ。」

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