方針の決定とクラスメイトとの会話
「こちらが勇者様達のお部屋となります」
案内された所には一つのホールがあり、その四隅に個室のあるかなり広い部屋だった
四隅に個室があるということは俺達5人のうち1人が個室を使えず、このホールで寝なきゃいけないのか……、どうせ俺がそうなるだろうが問題はない。というか好都合だ
だけどこれには王様の悪意を感じるな……
ホールの真ん中にテーブルと椅子があったためそこに全員座る、なんだかんだで疲れたのである
「それではごゆっくりどうぞ、召喚されたばかりでお疲れでしょう。お食事の用意をしてますので、時間になりましたらお呼びいたします」
そのまま兵士はどこかへ行ってしまった
それを確認した瀬戸は俺達のほうを向き話を始めた
「まずみんなに聞きたいことがある。俺は勇者としてこの国のため魔族と戦うつもりだがみんなはどうする?無理に戦えとは言わないが意見が欲しい」
「私は大輝がやるならやる!」
「俺もお前がやるならやろう、お前だけじゃ心配だしな」
「私も異論はないわ」
俺以外の全員が当たり前のように戦うことを承諾している。こいつら日本人の癖に躊躇ないな、東雲はともかく言ってることが軽く感じてしまう。こいつらは現状を理解しているのか?不安になる
瀬戸は友人の返答に笑顔になり、今度は俺の方を見る。それにつられ他の奴らもこっちを見る
「えっーと、加賀美くんだったかな。君はどうするんだい?」
「俺に戦えと?」
「ちょっと、せっかく大輝が心配してるのにその言い方はなによ!」
机を叩きこちらを睨みつける貝塚
その突然の態度にイラつきながら俺も睨み返すと怯え、東雲の後ろに隠れてしまう。こいつ勢いだけかよ
「加賀美くん、あまり愛美を怖がらせないで」
「そんなこと知るか、喧嘩を吹っかけてきたのはそいつだ。俺はそれを買っただけ、何か問題があったか?」
「それは……」
「俺はお前らと違って弱いから戦えないのはさっきので分かるだろう。なのに何故俺が戦わなきゃいけない、戦うと言わせるような質問をする。そこがそもそも間違ってるんだよ、俺にはお前らのような特別な力は無い」
所々刺を含めた言い方をする、東雲は俺の言葉に反論は出来ないようで押し黙る
友人の貝塚に悪い所があったのを理解しているのだろう、それでいて俺の状況もそれに無茶な態度を取ったのも。そういう点は好感を持てるな。うん東雲はいい奴だ、親しくなろうとは思わないが
「それに俺はお前らのことを全く知らん、知ってるのは顔と名前だけだ。ただそれだけでお前らとは所詮他人だ」
「あぁ、確かにお前は俺達のことを知らないのも無理はないな。だがお前はある意味学校では有名人だ。だから俺達はお前のことをある程度知ってはいる。他人なのは否定しないが一応クラスメイトだろう」
「確かに加賀美君は弓弦の言う通り有名人ね」
え、俺が有名人とか知らないんだけど
まぁそれはともかく俺がこいつらと親しくしようなんてことはない、俺にはやりたい事があるからな
それには、こいつらが邪魔になる。この城から抜け出すなんて言ったら阻止するに決まってるだろう
さて、俺はここでこいつらに邪魔されないようどう立ち回るかを考えなければいけない
今のところ3つの選択肢がある
1,目的を話し説得をする
駄目だな、こいつらを説得させられる気が全くしない。中でも瀬戸はかなりの難関だろう、良心の固まりのようなイケメンはめんどくさいね
2,喧嘩別れをして脱出する
これもなんだかんだで駄目だな、喧嘩別れをしてもこいつらのことだからその日のうちに謝りに来たり脱出しても搜索される恐れもある、やはりめんどくさいな
3,こっそり脱出する
、まぁ、これが今のところ妥当だろう。搜索される可能性が高いが一番楽な案でもある、よしこれで行こう
そのためには俺のことを悟られず行動する必要がある、あまり波風立てないようにしないとな。となれば取敢えず貝塚の機嫌を取るのが無難か
「はぁ、変に突っかかった俺が悪かったよ。すまないな貝塚」
「えっ。う、うん。私こそ怒鳴ったりしてごめんね」
突然謝罪した俺に困惑していたが謝罪を返されてしまった
何か調子狂うな……、さっきまでの行動から貝塚は瀬戸関連だと暴走するようなやつに見えたんだが素直に謝れるのは驚きだった
意外とこいつら良い奴なのか?
いやそんなことはどうでもいいんだ、今は無駄な亀裂を生まないようにする必要がある。がんばれ俺の心と会話術
「そういえば自己紹介がまだだったね、知ってるとは思うけど一応ね。俺は瀬戸大輝だ、仲良くしてくれると嬉しいな。よろしくね」
「俺は吉本弓弦、大輝と志乃の幼馴染みだ。よろしくな」
「私は貝塚愛美、大輝たちとは幼馴染みで特技は料理だよ」
「私は東雲志乃よ、剣術を納めてるから暴力関係で困ったことあったら言いなさい」
それぞれが忘れていた自己紹介をし始める、俺に対してだけだがな、こいつらは皆知り合いだから必要ないだろう
俺もとりあえずは自己紹介をしておくか
「加賀美圭太だ、よろしく」
「え、それだけ?もっとこう、なんかないの?」
「吉本もこんなもんだっただろう」
「そ、それもそうだけどさ。私達は君の事を詳しく知りたいのよ」
簡素な自己紹介はしたが、それがお気に召さなかったのか貝塚が疑問を浮かべる。だがこいつらは俺のことを詳しく知りたいらしい
「別に俺はお前らのことを知りたいと思わない、だから俺のことは教えない。俺には分からんが、俺が有名人という事なら必要最低限の事は知っているんじゃないのか」
「そ、そうか。分かった、俺達もこれ以上は聞かないよ。けど加賀美が戦わないにしても同じクラスメイトなんだ、いずれ仲良くなった時にでも教えてよ」
俺はお前らと仲良くする気はないんだが、と心の中で思うが口には出さない
どうせすぐにこの城からおさらばするんだ、必要以上に馴れ合うつもりもない
だからその場限りで溜息をつきながら了承をした(フリをする)
コンコン
「勇者様方、お食事の用意が出来ましたのでご用意ください」
そこで茶髪を肩まで伸ばしたメイドさんが食事の迎えに来た
ようやくこの時が来たか
俺は食事の時間を待っていた、別にお腹が空いた訳ではない
この部屋から出て出来るだけこの城の内部構造を知っておきたいのだ
脱出するには必要不可欠なことだしな
(さてさて、テンプレ通りなら俺の料理には毒が盛られていて俺を殺そうとしてくるのだろうが、はてさてどうなることかな)
一応周囲を警戒しながら俺は、メイドに連れられた瀬戸たちの後ろをついていく形で部屋を出た
ファンタジー世界にはやはりスキルは必要ですよね、次からぼちぼちスキルも出ますのでお待ちください
主人公は徐々に最強になっていく予定です