炎と氷が交わる模擬戦闘
「条件は3つ。一つは俺達への強制権の無効、俺にだってやりたいこともある、なのに強制的に協力するなんて出来ない。二つは俺達の情報の秘匿、俺達のことを上の人間に報告はしないでくれ、めんどくさいからな。三つは可能な限りの情報を俺にくれ」
「良いでしょう、その3つの条件を呑みましょう」
随分潔いいんだな、もう少し渋られると思ったのだが拍子抜けだ。その事について聞いてみるとそれぐらいの条件で協力してくれるなら安いものだそうだ。俺はハーブティーを全部飲みきり席を立つ、その後ろにリアが続く
「話し合いも終わりだよな、お茶美味かったぜ。とりあえず俺は帰る」
「あぁ待ってくれ、私からもう一つ頼みがあるんだ」
「なんだ?可能な限り聞くが」
「今からアルフレッドと模擬戦をしてくれないか?君の実力はアルフレッドから聞いてはいるが実際に見た訳ではないからな、実力を把握していた方がこの先やりやすい」
ふむ、百聞は一見にしかずか。確かに一理ある、別に俺にデメリットがある訳でもない、断る理由も無ければ受けるしかないだろう
「分かった。それで、どこでやるんだ?」
「ここの地下に訓練場があるからそこでだ」
何故地下にそんな施設があるか聞いてみると、どうやら初心者冒険者の基礎を鍛えるために設置されたらしい。流石に冒険者登録してすぐに死んでしまうと困る、それを防止するためのものだったようだ
「それじゃあ行くか、マリー頼む」
「全く……私の魔力だってタダじゃないんですからね」
アルフレッドが立ち上がりマリーさんに転送するよう頼む。頼まれたマリーさんは呆れ顔だ、気持ちは分かるけどね
すぐに転送され目の前の景色が変わった。見た感じだと闘技場と言うとしっくりくる場所だ、ここが訓練場なのだろう
「ほう珍しいな、先客がいるみたいだ」
「あれは銀狼ですね、そういえば薬草採取の護衛依頼とジャイアントガゼルの討伐を受注していたはずですがもう終わったのですかね」
デュークが訓練場でなにやら戦闘をしている者に目を向け、同じく俺達もそこを見ると確かに銀狼のメンバーがいた
朝言っていた狩りとはこのことだったのか、ジャイアントガゼルと言うと大きい鹿と予想出来る
とりあえず声でも掛けてみるか、一番近い位置にいたミミに近づき話しかける
「よう、何してるんだ?」
「……………………依頼が予想以上に早く終わったので模擬戦していたんです」
突然話しかけられたからかビクッと体を強ばらせ驚かせてしまったようだ、軽く謝罪をしとても間が長かったが質問には答えてくれた。怖がられているのだろうか、目線を合わせてくれない。フードを目深く被っていては目線も何も無いが。そこで先程から戦闘をしていたロウとリンが1度手を止めこちらに向かってきた
「ケータじゃないか、冒険者登録は終わったのか?」
「それにどうしてギルドマスターやアルフレッドさんもいるんです?」
「冒険者登録はさっき終わったよ、デューク達は所用でこっちに来てたんだ」
ロウとリンは、なるほどと納得してミミと合流する。そういえばアレックスの姿が見えないな、そう思いロウに聞いてみるとどうやら買い出しに行ってるようだった、そこでちょうど帰ってきたアレックスが何か持って近づいてきた。噂をすれば何とやらだな
「ただいまー、ってあれ、ケータさんやギルドマスターじゃないですか。皆さんお揃いでどうしたんですか?」
とりあえず先程と同じような返事をしアレックスも納得したようだ、アレックスもミミ達銀狼のメンバーと合流する
デュークに模擬戦はいつ始めるんだと聞くと何やら思案顔をしており、そして無視された、酷い。
「なぁアルフレッド、やるならもうやっちゃおうぜ」
「それもそうだな、んじゃ構えろ」
アルフレッドが軽く後ろに飛び距離を離す、そして互いに、俺は刀、アルフレッドは大剣を構える。開始の合図は弾いた銅貨が地面に落ちた時、そう決めて銅貨をアルフレッドが弾いた
地面に銅貨が落ちるまで、3……2……1、落ちた瞬間俺は駆け出した、それを待ち構える形でアルフレッドは動かない
「せいっ、ふっ、はぁ!」
上段からの振り下ろし、下段からの振り上げ、そのまま体を回し遠心力を乗せた回転切り。その全てを大剣で凌がれる、防がれることを予想していたため防がれたのを確認する前に次の行動に移る。刀身に指を滑らせスキルを発動する
「効果付与!爆裂ザァァァァァァァン!!」
「これは……受けはまずい!」
斬撃に爆裂効果をエンチャントして攻撃する、アルフレッドはまたしても受けようとしたがすぐさま受けれないと気付き体を捻り斬撃を紙一重で避けた。斬撃はアルフレッドの後方で爆裂し衝撃波が体勢を崩したアルフレッドを吹き飛ばす
「うぉっと、あぶねぇ」
咄嗟に空中に身を投げ地面に大剣を突き刺すことで衝撃を緩和させたようだ、全くダメージを受けてないように見える
「今度はこっちの番だ、ヒューズ」
アルフレッドが魔法を発動したのか体を赤く染めた。そのまま高速で俺の背中に回り込んだ。気配察知で背後に回り込まれたのをすぐさま知った俺は上半身を捻り傾け斬撃を避ける
「燃え盛れ、ボルケーノ!」
ヒューズを発動して移動した道が赤く輝き、そこから高熱の炎が吹き上がった。どんどん吹き上がる炎を避ける事に集中しすぎたためアルフレッドの狙いに気づけなかった
「上手くハマってくれたな、デフェール」
「しまっ……」
ドゴーン!!
爆音と共に俺に対し火柱が襲いかかる、どうやら事前に設置した罠にヒューズとボルケーノによって誘導されていたようだ。冷静に状況を把握し炎に手をかざす
「俺の前では炎だって凍る……コキューズ」
氷魔法にあり強くて習得していたコキューズ、これは触れたものを全て凍らせる上級氷魔法である、らしい。
なんとか危機は脱せたな。どうやら俺はアルフレッドを甘く見すぎていたらしい、早く終わらせるつもりだったが未だに続いているこの戦闘を見て明らかだろう。たぶん自分自身への慢心もあったのだろう
「おいおい炎を凍らせるとかどんな威力で氷魔法出したらそんなこと出来るんだよ」
「さぁな、俺はどうも氷魔法に関しては適正があるらしくてな。アルフレッドが思ってるよりかは出来るから覚悟しとけよ?」
「そいつは楽しみだ」
お互いニヤリと口角を釣り上げ笑う、何だかんだで俺も男だ。こんな戦いを楽しめない訳がない
俺とアルフレッドの戦いはまだ続く




