魔物大量発生攻略戦4
アルフレッドが転送された頃、ラタルの入国門と森の中間にある防衛ラインにて
300人ほどの冒険者が森から溢れた1000体もの魔物と戦っていた
その中でラタルのギルドマスターであるデュークが冒険者の指揮を取っていた
「3時方向から敵襲、数はおよそ20!!」
「Cチームで迎撃に当たれ!」
事前に冒険者をA〜Fチームに分けている。1チーム50人ほどの編成で多くの魔物にも比較的に対応出来るようにしているのだ
そのおかげか魔物に数で劣っているはずの我々はギリギリ持ちこたえることが出来ている
しかしあくまでギリギリ、どこかのチームが欠けてしまっては崩れてしまうだろう
(せめてアルフレッドが戻ってきてくれれば……いや、アルフレッドが発生地点で魔物を間引きしてくれているから均衡が取れているのだろうな)
ここでアルフレッドを求めても無意味だろうと考え直し、どうにか打開策を考える
そこで遠くからアルフレッドの妹のマリーが駆けてきた
「デュークさん、森からS級の魔物の姿が確認されました」
「個体名は?」
「おそらくフローズトレントかと」
最悪だ……こんな時にS級配置の魔物が出てきてしまったこともそうだが、その魔物自体がこの状況では最悪の部類に入ってしまうやつということがとてつもなく厄介だ
フローズトレント、木に擬態する魔物がトレントの特徴となっているがトレントには派生型の亜種が存在する。その1つがフローズトレントである。フローズトレントの外皮はとても硬いため物理攻撃によるダメージがほとんど通らない、更に魔法耐性が非常に強いため魔法による攻撃すらもほとんど通らない。唯一火属性による攻撃ならダメージが通る。火属性で集中砲火をするのが最善な手であるが、残念な事にフローズトレントにダメージを与えられる程の火属性魔法を取得している冒険者が今いないのだ
「デュークさん、私がやります」
「マリー……大丈夫なのか?」
「少なくとも時間稼ぎはできますよ」
マリーがフローズトレントの対応を願い出てくれたが別に戦闘スタイルが適しているわけではない。マリーは転送を利用したナイフでの撹乱に長けている。そのため無限収納バッグにナイフを容量一杯まで入れたものを事前に用意し、それを戦闘中は常に持ち歩いている
ただしナイフだけでは火力が足りないため、今回のフローズトレントに対応するのは難しいだろう。マリーの腕を疑ってる訳ではない、むしろ信じている
だがそれでも迷ってしまう、フローズトレントの足止めが成功しても結局は仕留める事が出来ないことに変わりはない
「考えるだけ無駄か、すまないマリー。フローズトレントの足止めを頼む」
「了解しました。あっ、出来ればマナポーションをあるやつの半分ほどくれませんか?」
「分かった、80個ぐらいしかないがいいか?」
充分です、と満足げに言いマナポーションを受け取ったマリーはフローズトレントの所へ自分を転送した
消えたマリーを尻目に再び冒険者の指揮に戻る
(マリー、無理だけはするなよ……)
※
防衛ラインから目的地に転送したマリーは目の前に佇むフローズトレントを見て溜息を吐く
「自分から志願しましたけど、実際に目前にするとめんどくさくなってきましたね」
ギュアァァァァァァァァァ!!
私の姿を視認したトレントは威嚇をする、それを意に介さずにナイフを目に向けて投げ放つ。ナイフはトレントの目に届いたが弾かれた
「目まで硬いってデタラメな……」
いきなり攻撃されたトレントは怒り狂い、私に向けて腕を振り下ろす。当たる前に自分を相手の背後に転送し、ガラ空きである背中に向けて数十本のナイフを投げ放つ。いくつかのナイフは刺さったがほとんどがまたしても弾かれてしまう
(本当に硬いですね、やはりナイフ程度じゃダメージは与えられないか)
期待はしていなかった討伐を諦め、戦い方を時間稼ぎに切り替える。相手が振り返る前にナイフを空高くに投げ呪文を詠唱する
「魔を穿つ銀の矢よ降り注げ、ヘブレイン!!」
投げ放ったナイフが光輝き、そこから無数の光の矢がトレントに向けて降り注ぐがそれすらも相手を傷付ける程のダメージにはなり得なかった
だがそれで良い、目的は時間稼ぎであり狙いは足止めだ。光の矢で動きが止まってる隙に転送を使ってトレントを中心に星型に線が結ばれるように5本のナイフを地面に突き刺して魔法を詠唱する。
「炎の鎖よ、敵を拘束しろ。フレイムチェーン!!」
地面に刺したナイフから炎を纏った鎖がトレントの腕、体、足に絡みつき動きを封じた
ギュアァァァァァァァァァ!!
動けないことにイラついたトレントは暴れだすが、暴れることにより炎の鎖が体に食い込み痛みに絶叫をあげる
「唯一使える炎魔法ですがやはりダメージは少ないようですね……」
有効な炎魔法でダメージを徐々に与えてはいるがその傷が少しずつ再生してきている。暴れてもダメージを食らうだけと分かったトレントも暴れるのをやめて傷が再生するのを待っている
「流石S級ね、ある程度の頭はあるか」
これからどう時間稼ぎをしていくか考えを巡らせていると突如森から魔力を感じた
ゾワッ
背中が強ばり鳥肌が立つ、原因は冷気だった。森を中心に冷気が漂っており、それは森の中にいた魔物を凍らせるほどのものだった
流石に見た事もない事態に混乱し固まってしまった。だがそれは戦場では致命的なミスであった
パキィィィィン!!ギュオアァァァァァァァ!!
「しまっ……」
僅かな隙を狙って鎖の拘束を破壊したトレントが私に向けて腕を降り払う。反応が遅れたためまともな防御も受け身も取れず吹き飛ばされ、森の樹木に激突する
先程の冷気により樹木も凍っていたのか衝撃が硬くダメージが大きい
(これは……まずいですね……)
いくつかの骨が折れているようで体を動かすことが出来ない。更に出血もあるためこのままの状態だと死ぬのも時間の問題だ
緊急時用のポーションの所持枠を全てマナポーションに割り当てたため、ポーションは持っていない。ここで救助されるのを待つしかないのだが、単騎でトレントと対峙していたのでそれすらも叶わない。
こちらに向かってくるトレントの足音が死のカウントダウンのように聞こえる。トレントの歩く速度が遅いため恐怖心が余計に煽られる
(帰ってきてと言った私が帰れなくてどうするのよ……)
見送った兄を想い涙が流れる。死にたくないという思いが頭を埋め尽くし涙がボロボロと零れ視界が滲む
トレントが遂に目前まで来てしまった。迫り来る死に目を閉じようとしたその瞬間
ズバァァァァン
炎を纏った一撃がトレントを襲い、腕を切り落とした




