魔物大量発生攻略戦1
途中別視点入ります
次話ではケータ視点に戻ります
あれから俺達はディールの情報を元に現場へ向かった
先程までいた場所はちょうど森の出口であったため、また森の中に戻ると聞いた時は少しウンザリしたのはここだけの話だ
馬車が通った整備された道を外れ森の奥へと進んだ先にそれはあった。
木の陰からそれを観察する。何か淀んだ黒い空気が密集している箇所があり、その周りには大量の魔物と思われるのが100単位でいる
ー魔物大量発生
それはこの世に溢れてる魔素が急激に活性化することで発生する現象だという。魔素とは魔法を使うのに必要なものであり、MPとはまた違った何かの役割があるようで魔素が少ない地域では魔法の威力や精度が落ちるようだ。活性化した魔素は1箇所に収束し膜を形成するようであり、その中では魔法に才能がないものでも魔法を使えるという夢のある話があるが実際はそうではないらしい。ここで出てくるのが魔物だ。魔物は魔素を食糧にしていて更に魔素濃度が高い所では大量に出現するため、こういった魔素の活性化が起きると自然とそこへ魔物が集まってしまうのだ。それが魔物大量発生である
ディールに説明されたのを聞いたが中々に面白い情報ばかりだった。暇があれば魔素について調べるのも悪くないとこんな状況で思うのは肝が座っているのか暢気なのか
「ディール、馬車を引いてリアと共に脱出しろ」
「まさか戦うつもりですか!?」
「あぁ、どうも今から逃げるには遅いようだ。もう少しでこの魔物の大群が解き放たれるぞ」
魔物大量発生では、まず初めに魔物達が魔素を喰らう所謂食事をする。そして魔物も活性化しているため魔素濃度がある程度薄くなると膜が割れて一気に他の生物に向かって襲いかかっていくようになっている
先ほどまでの黒い空気が徐々に薄れつつあることを感じていたためそろそろ食事が終わるのではないかと予想できる。解き放たれるまで時間もあまりなく今すぐ逃げても追い付かれる可能性が大だろう。それならば俺が足止めをするほうが得策のように思える
「ならあなたも!」
「ここで俺が残らなければ最悪全員死ぬと思うぞ?」
「ならリアを残しましょう。こいつは奴隷ですから命懸けで足止めさせれば……」
残すと指名されたリアは顔を真っ青にさせる。流石に肺血病が治ったのにこれは酷だろう
ディールはそれが当然だとばかりの顔をしている。護衛をしてて思ったがこいつは本当に下衆いな。奴隷に肩入れをする俺の方がこの世界では異常なのかもしれないがこの世界の住人ではない俺からしたらディールみたいなやつが異常だ。考え方を変えるつもりもない
「却下だ、武器もまともにないそいつが出てどうする。瞬殺されて俺達が狙われる」
「あなたは私を護衛する義務があるはずでしょう!」
「なら契約破棄でも依頼失敗でもなんでもいい。俺はここに残る」
下手したらディールやリアが犠牲になるどころの話ではない。先ほどの森の出口からラタルと思われる街が見えた。城壁のようなもので護られていた街だがこの魔物の数ではそれも機能しないかもしれない。そうなった場合ラタルの人間すらも犠牲になってしまう
「ならここで契約破棄ですね、私は早々に逃げますよ。リア、あなたを連れていくと馬車の速度が落ちてしまうのであなたも捨てますので。また生きて会える日が来ることを願いますよ、それでは」
すぐさま馬車に走り出したディール。本当は微塵も会うことを願ってないくせによく言うよ全く
取り残されたら俺とリアはディールの姿が森に消えると顔を合わせた
「お前も逃げろ、せっかく拾った命をここで散らす必要はない」
「いいえ、もう私に帰るところなんてありませんから。どうせなら私も戦おうと思います」
無理に戦う必要はないと言ったが断られてしまった。だがリアの武器はどうすればいいだろう。素手で倒すには危険過ぎる相手だと予想出来るため俺の双剣でも渡しておくか
「ならせめて俺の双剣を貸してやるから使え、絶対に後で返せよ。死ぬことなんて許さないからな」
「それはありがたいですがケータ様の武器は他にあるのですか?」
「あぁ、俺はこれを使う」
自分の手に魔力を集中させる。冷気が周囲に集まり、手である形を作っていく
ピキパキパキピキッ
そして出来上がったのは氷の剣2本、空気中の水分を冷気で凍らせただけのお粗末な物だがないよりマシだろう。左手のほうを逆手に持ち構える
「そろそろ割れそうだな。やれやれこんな厄介事に首を突っ込む辺り相当なお人好しだよな俺も」
「そうですね、ケータ様は相当なお人好しだと思いますよ」
「あ、やっぱそう思う?いやぁ、この損な性格どうにかならないかね」
戦闘前に軽口を叩き心の余裕を作る
これから始まるのは命を懸けた戦いだ、相手は魔物だから降伏もない死ぬか生きるかのどちらかしか選択のない戦い。正直今すぐにでも逃げ出したい、だがその気持ちを何とか抑え敵の情報を調べる
ダークスライム ダークゴブリン ダークオーク ダークゾンビ ダークスケルトン ダークスパイダー ダークパンサー ダークウルフ
なにこれ流行ってんのって言いたいぐらいにダークと名のつく魔物が多かった。それ以外もいるが、そんなことよりも気になるのが魔物の平均レベルだった
俺とリアのレベルは8と14。それに対して魔物は一番低いので25であった
この世界でレベルとはどの程度参考になるかは分からないが慎重に動いた方が良さそうだ
パリィン!!
膜が割れ魔物が四方八方に散っていく。その中でラタルに向かう魔物だけを狙う、よし戦闘開始だ
※
「魔物大量発生の援軍は期待出来ないだとっ!?どういうことだ!」
ラタルにある冒険者ギルド、そのギルドマスターことデューク・アルテインの部屋ではSSランク冒険者のアルフレッド・リリマイアとある話し合いがされていた
魔物大量発生への対策だ。数週間前にテラークとの間にある森の中に赴いた冒険者がそれを偶然見つけ、こちらへ報告してきた。魔物大量発生は街に危険が及ぶ可能性が高く、街中にいる冒険者を緊急招集してでも解決しなければいけないことだ。だが魔物大量発生は一番小さな規模でも魔物の数は1000体だったと記録にある。流石に冒険者だけでは戦力的に心許なく、国の軍を動かせないかと何度も要請しているのだが
「私も予想外だった。まさか国が治める街よりも最近発見された遺跡調査を優先するとは」
「魔物大量発生をどうにかしなきゃそんなこともままならねぇってことが国は分かってねぇのか!」
最近発見された古代遺跡の調査のほうを優先すると言っているのだ。おそらく軍も防衛用に中央区に置いておくのだろう。魔物大量発生に関しては冒険者だけで何とかしろと言われても具体的な規模も分からないのに無理な話だろう
コンコン
ノックの音が響いた後この部屋に眼鏡を掛け赤髪のポニーテールが特徴である女性が入室する
「失礼します。偵察隊からの報告が来ました」
「おぉ、やっとか。それで規模はどれくらいだった?」
部屋に入ってきたのはこのギルド支部の秘書でマリー・リリマイア、アルフレッドの妹だ。マリーが言うには、今日の明朝に魔物大量発生の規模を調べさせるのに派遣した偵察隊からようやく報告が来たということだった。
「規模は推定3000との事です。そしてもう膜は割れました」
「3000、結構多いな。てかもう割れたのか!?なら今すぐ冒険者を動かさないと……」
「一々大きな声を出さないで下さい、兄さんはもう少しSSランク冒険者らしく冷静になってください。それと既に私の転送で300人ほどいた冒険者を送りました」
転送とは取得者の少ないレアスキルで、使用者が行ったことのある場所 又は視界に映る位置に自身や他人をテレポートさせることが出来るのだ
それをマリーがしてくれたという事は最悪の事態は避けられたのだろう
「冒険者達はどこに配置した?」
「森とラタル入国門との中間地点に転送しました」
「よし上出来だ、俺も行こう。後は任せたぞデューク」
デュークに今後の対応を任せマリーとともに部屋を出る。マリーが扉を閉めたのを確認しある物をマリーに渡す
「これ飲んどけ、平気そうな顔をしてるつもりだろうが無理してるのバレバレだ」
渡したのはMPが回復するマナポーション。転送は便利な能力だがその分MPの消費量が非常に多い。 更に転送人数も増えるとなると消費量もその分だけ増す。マリーは平然と振舞っているが実際はMP枯渇による疲労が襲ってるはずだ
「昔から変わらないな、いざという時に限って無理をする。いい加減その性格直せ」
「やはり兄さんは分かりますか、でも無理をしている妹に更に転送を使わせようとしてる兄さんは中々酷いと思うのですが?」
「だからマナポーションを渡したんだろ」
全く兄さんという人は……と呟き、ポーションを飲んだマリーは転送の準備をする
「あ、マリー。俺は魔物大量発生地点の近くに転送してくれ」
「分かりました、ですが無理はしないでくださいね。仮にもあなたは私のお兄ちゃんなんですから」
流石妹だな、手短な会話で俺の意図を理解している
「おう、お兄ちゃん頑張るぜ。心配すんな、いつも通り生きて帰ってくるさ」
事が事なだけに悲しそうな顔をするマリーを慰め戦地へ向かう準備をする。すぐに体に転送された感覚がし周りの景色も変わっていた
「到着っと、さてさて魔物はどれくらい……ってAクラスのやつがうじゃうじゃいやがるな」
目視で確認出来るのでも相当な数と強い魔物がいる
愛用の大剣を抜き、後ろから迫っていたダークウルフを両断する
「さぁ、掛かってこいよ。皆殺しにしてやる」
最前線にてラタル最強の冒険者 炎獄の大剣使い と呼ばれるアルフレッドの戦闘が始まった




