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報告

 次の日、昼。


 今日は朝からの依頼はなくのんびりとした時間を過ごしていた。烏丸とナシと佐藤さん。そして、今日は珍しくDも昼からいる。


 佐藤さんは今日は事務作業でなく箒と塵取りを持って事務所の掃除に勤しんでいた。烏丸もナシも依頼がなくポカーンとしていた時だった。事務所の扉をノックする音が聞こえた。そして、烏丸は事務所のドアを開けた。


 すると、そこにいたのは以前に事務所に依頼に来た。東堂マモルの母だった。以前のエプロン姿とは違って黒いスーツ姿で現れた。


「やあ、奥様。昨日の依頼についてですね。マモル君の調子はどうですか? 我が社の優秀な社員が命について説いて見せましたが…」


 Dが途中まで言いかけた時だった。スーツの女性は言葉を遮って、言葉だけ置いて意識はどこか遠くへ行ってしまったかのように言った。

「亡くなりました」

「はい?」


 Dは言葉だけをポツリと落としたようだった。

「マモルは今朝、学校の屋上から飛び降りて亡くなりました」


 母親は力なく語る。言葉は震えて、体も震えて、言葉を発すること自体が限界のようなそんな様子だった。


「……」

「……」


 ナシも烏丸も黙る。佐藤さんは床をはく箒を止める。事務所の中で時計が時刻を刻む音だけがいたずらに聞こえる。


 まず、話したのはナシだった。

「な、亡くなった?」

 母はナシの顔を見て、確かな事実をもう一度伝える。

「はい。今日の朝、学校の屋上から飛び降りて亡くなりました」

「そんな、確かにあの時、頑張りますって…」


 母親は動揺しすぎて目の焦点が合っていない。その状態で言った。

「…あ、あなたたちのせいよ!」


 母親は興奮して叫びながら近くにあったゴミ箱を思い切りひっくり返した。ゴミ箱の中身の書類や空き缶やペットボトルが床に散乱する。


「あなたたちが息子に余計なことを言ったんでしょ? だから、マモルは飛び降りて死んだのよ! どうしてくれるのよ、もう、もう、あの子は戻ってこないのよ…」


 母親は崩れるように膝をついて涙を流した。ゴミが散乱する床に涙がぽとりぽとりと落ちる。


「お、奥様。マモル君が亡くなったというのは本当の話なんですか?」


 Dは恐る恐る、事実ではないことを祈りながら母親に確かめた。しかし、母親の態度は一貫している。

「ええ本当よ! あなたたちもうちの息子を殺した責任の一端はあるんだから。最後に…最後にうちの息子の葬式に来て、手を合わせるくらいしなさいよ!」

 母親は絞り出すようにそう言った。Dはしばらく考え込むとサングラスをとってワイシャツのボタンを一つ、二つと閉めた。そして、スーッと鼻で息を吸うのが聞こえた。


「すいませんでした!」


 Dは事務所に響きほどの大声で謝った。そして、深々と頭を下げた。三秒ほど頭を下げて社員がいる後方へ向き直った。


「東堂さんのお葬式にみんなで行こう」


 母親はまるで硬直してしまったかのように膝をついて下を見たまま動かない。株式会社Dの社員全員が下を向いたまま無言で外出する準備を始めた。Dは一度事務所を出てから喪服に着替えてきた。いつもとは違う上下黒いスーツに黒いネクタイ。ワイシャツは第一ボタンまで閉められおり、黒いネクタイを締めている。佐藤さんも一度事務所を出て喪服姿に着替えてから戻ってきた。

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