一件落着!
何度も何度も滅多刺しにした。赤い血がナシの胸部から地面へ落ちやがて赤い血が白い床に水溜まりのようになり、更衣室の電灯を反射し天井を映す。しかし、それでもナシは狼狽えることはなかった、ナシは男の腕を掴んでナイフを刺す手を止めた。
烏丸はその隙に男の足に蹴りを入れて男の体は地面に付した、そして、肩を踏んで腕を持ち上げた状態にして固定した。その間にナシは大道具の鉄パイプやカラーコーンや台車などが置かれた場所からロープを取ってきてナシは男に括り付けた。そして、壁に刺さっているフックにさらにロープを固定した。
「ナシさん! ち、血が! その怪我、大丈夫なんですか?」
天音は唇を震わせて目の前で血だらけになっているナシに向かってそう言った。
「このぐらいはもう慣れてますから大丈夫です!」
さっきまで流れ出ていた血は止まり、傷口は修復している。頭のパイプで殴られた傷もすでに治っていた。
「それよりも証拠の動画は取れましたか? 天音さん」
天音は両手でスマホを大事そうに持っていた。
「はい、二人が戦ってる動画と私の体についてる指紋とこの男の指紋を照合すればこいつがストーカーだって警察もようやくわかってくれるはずです!」
「一件落着ですね!」
烏丸は手で視界を遮りながら言った。
「あ、あの、天音さん。服着てください」
三人の間で一度沈黙が訪れる。それから、
「やだー!」
急に恥ずかしそうにする下着姿の天音。片手で胸を隠し、もう片方の手で股の方を隠す。
「ま、まあ、俺たちの役割はこれで終わりなんでもうここから出ますからいいんですけどね」
「烏丸さん、警察呼んでおきました」
ナシが警察を呼んでから数分で警察が駆けつけた。警察が来てから、痴漢の被害に元々あっていたこと証拠の動画などを見せてその場で逮捕された。男は警察によって連行される。
警察は男の方につきっきりになり、更衣室には天音、ナシ、烏丸の三人が取り残される。
天音はすでにステージ衣装に着替えていた。天音は何か恥ずかしそうに頬を赤らめると、膝を小さく擦り合わせた。つま先もそわそわと動いている。
「あ、あのう、二人とも助けてくれてありがとうございます。あんなキモいおっさんに毎日自分の生活とか裸とか見られてたと思うとゾッとしました」
「解決できてよかったです」
「そ、それでなんですけど…」
天音は言い淀んだ。それでも、言葉を振り絞る。
「わ、私と連絡先交換してくれませんか?」
天音は二人にスマホに両手を添えて差し出した。
「いいですよ!」
ナシは即答で快諾した。しかし、烏丸は、
「お、俺はいいですよ。ナシ、お客さんとあんまり関係を持つのは良くないぞ」
「でも、せっかく交換してくれるっているのが嬉しいので交換したいです」
「そっか、お前まだ、LINEの友達、俺とDさんと佐藤さんしかいないもんな。ま、まあいいんじゃないのか」
「ナシさん交換しましょ!」
天音はにっこりと笑った。そして、慣れた手つきでスマホを操作し、QRコードを表示した。一方、ナシは不慣れな手つきで、片手にスマホを持ちもう片方の手で画面をなぞるようにして操作している。
「QRコードってどこですか?」
「ここです! ここ、ここ!」
天音はナシのスマホの画面を指差してにっこり笑う。ナシはQRコードの読み取り画面を表示して、天音が表示しているQRコードを読み取った。
ナシのLINEの友達が一人増えた。
ナシはスマホを上に掲げて確かに一人増えたことを感慨深そうにスマホの画面を見つめていた。
「また何かあったら助けてくださいね!」
「もちろんです!」
「ナシ、俺たちもそろそろ戻ろう」
「はい」
「今日はありがとうございました。これで安心して生活できます」
「い、いえ、それが俺らの仕事なんで」
二人は控え室を出た。そして、駐車場に停めている車に向かう途中ナシは言った。
「烏丸さん!」
「ん?」
「人の役に立つのってすごく嬉しいです。ありがとうって言ってもらえるのがとても嬉しいです」
烏丸は少し得意げな表情になりナシの胸に拳を当てた。
「これが仕事のやりがいってやつだ。その感じを覚えとけよ、ナシ」
「はい!」
「よし! 事務所に戻るか」
二人は車に乗り込もうとした時だった。
「ナシ、乗らないのか?」
烏丸は車に乗ろうとしてドアを開けて、ナシは車の前でドアに手をかけず車のそばで立っていた。
「ちょっと寄る所があるので先に行っててください」
「あ、ああ、わかった。Dさんにも報告しておくわ」
「はい、ありがとうございます」
烏丸はそのまま車に乗り込み、ナシは徒歩でどこかへ向かって歩き始めた。烏丸はBluetoothのマイク付きイヤホンでDへ連絡を取った。
「Dさん」
「やぴー、どーしたのー?」
「案件無事解決しましたよ。また、ナシのおかげでストーカー犯を捕まえることができました」
「いいじゃーん! 最近調子いいね」
「本当、ナシのおかげさまさまですよ」
「ほう、ナシ君は今いるのかい? 声を聞きたいな」
「いえ、さっき寄る所があるって言ってたんでそこで別れました」
「そうかい、なんだろうね?」
「まあ、ナシのことですから虫でも捕まえてるんじゃないですかね?」
「フフフ、あり得る」
「ストーカーは警察に突き出しましたよ」
「オッケー、また警察から感謝状がもらえるね、そしてうちはクリーンな会社で正義の味方っていう証拠にもなる」
「それはどうなんですかねぇ。そういえば…」
「ん?」
「小鳥遊さんにナシが来てた服とか棺、時代鑑定してもらってるんでしたっけ?」
「ああ、そうだね。最近は病院に行ってないから結果聞いてないや〜」




