株式会社D
これは人類が無能力者と有能力者の二種類に分けられた世界でのお話。
そして、場所は東京都新宿区歌舞伎町某所。怪しげな雑居ビルが立ち並ぶオフィス街に一際見た目がボロい建物の一角、ある会社が入っていた。
その会社の名前は株式会社D。
ある人物がその建物の前に立っていた。その場で右往左往して、その男はビルに入ろうか入るまいか悩んでいた。
「ここしか頼めるところはないか」
その男はため息混じりにそう言った。そして、雑居ビルの奥へ続く階段に視線を向けた。視線の先は真っ暗で闇の中である。
男はゆっくりと雑居ビルの階段を登り始めた。階段の幅は人がちょうど二人分ほど。階段の壁にはよくわからないイベントか何かのポスターがずらりと貼ってある。
男は二階を通り過ぎる。二階に入っているのはどうやら不動産屋らしい。聞いたことない名前の会社だった。男は後にインターネットでその会社名を検索してみたが、ホームページらしきものはヒットしなかった。そんな、怪しげなビルの三階に男はたどり着いた。
ドアがありその横に縦書きで「株式会社D」と書かれている。
男は恐る恐るドアを開ける。すると、そこには応接室がった。ソファが二つあり、その間にガラス台の机が置いてある。その奥ではデスクがありPCをカタカタと操作しているメガネをかけた女性がいた。
普通の会社というか事務所。と思ったが男は二度見した。
応接室のソファにどっかりと座っている人物についてである。
その男は大きな黒髪のアフロ頭に丸いレンズのサングラスを着用し、黄色いワイシャツの襟は顎あたりまで立てて着ており、上下は赤紫色のタイトなスーツを見に纏い、分厚い唇をしている男がどっかりとソファに足を組んで座っている。ちなみに靴は厚底ブーツでスーツの丈はラッパズボンだった。しかも、男は片手にグラスを持ちワインを飲んでいた。
「こ、ここが困り事ならなんでも依頼していいという会社かい?」
男は恐る恐る、そう聞いてみるとアフロ頭の男は手に持ったグラスを掲げ、
「いかにも。うちは何でも屋の株式会社Dですよ」
アフロ頭の男は続けて、「座って」と向かい側に座るように男に指示を出した。アフロ頭の男の態度は終始、悠然としている。
「た、頼み事がある!」
「なんでしょう? 依頼はなんでも断りませんよ。それがうちのモットーですからネ」
アフロ頭の男はグラスを片手で揺らしてから口をつけて悠然とそう言った。
男は真剣そうな顔つきになった。
「今、当団体では遺跡発掘の調査を行なっている。遺跡発掘の調査はとても危険をつきまとう肉体労働だ。だから、そうだな…若い人材を二名ほど派遣してほしいのだが…」
「あーあいにく、うちの会社は社長の僕と事務員の佐藤さん、あと烏丸翼の三名だけでね」
「では、あなたと烏丸さんを派遣していただけるということですか?」
アフロ頭の男はグラスをテーブルに置いて真剣な顔つきになった。
「あ、僕は現場には出ません。社長なんでネ」
男はアフロ頭の男の態度に呆然とした。
「は? あんた社長だろ?」
「ええ、そうでうすよ」
アフロ頭の男は当然のことのようにしてそう言ってのける。
「態度でかいな…この人」
そして、男は思わず心の声が外に漏れる。
「ただね…」
アフロ頭の男はのけぞったように座っていた状態から前屈に座り方を変えた。そして、真剣な顔つきになる。
「うちの社員は優秀でね。一人で二人分は働きますよ」
「一人というのは?」
「烏丸君ですね」
男はしばらく考え込んでから、
「わかった。こっちも急ぎなんで烏丸さんに二人分働いてもらいます」
「オッケー。佐藤さーん契約書ちょうだーい」
アフロ頭が座るソファの後方でパソコンをカタカタと叩いている女性が立ち上がって、アフロ頭の男に一枚の紙を渡した。
「はいこれに押印してね」
男はアフロ頭の男の言っていることに半信半疑だったが、契約書にサインした。
「では、これで烏丸さんを派遣していただけるのですね」
「もちろん」
「…わかりました。では、現場の詳細と作業内容を書いた紙はこちらになります。烏丸さんに詳細を確認していただくようによろしくお願い致します」
男は鞄から書類を一枚取り出して、ガラス台の机の上に一枚置いた。
男は本当に大丈夫だろうか? と思いながら株式会社Dの事務所を後にした。




