表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
磐守姫と銀色の神獣 〜祓師、神獣、妖と紡ぐ和風ファンタジー〜  作者: ハルモニア
第6章 願いが紡ぐ未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/48

エピローグ

 磐守神社は夏の気配を完全に脱ぎ捨て、秋の深まりを静かにまとい始めていた。コオロギが鳴き始めていた。


 天満月(あまみつき)の戦いから数日後の土曜日の朝、晴真が磐守家を訪ねてきた。


「はよっ」


「おはよう、晴真」


 依芙姫は客間に晴真を招き入れた。


「申し訳ないが、今日もよろしく頼む」


 晴真は碧威の知識・経験・能力を引き継いで最強の祓師となった。しかし、その反動で数学、化学、英語の知識をすっかり忘れてしまったのだ。数日前の授業は国語、世界史の授業以外は全く理解できなかったらしい。


「私に教わるより家庭教師を雇った方がいいんじゃない? 」


「いや、もう少し教えてくれよ……」


 1時間程、数学の基礎問題を一緒に解いた。晴真に疲れが見え始めたので、ひとまず休憩を取ることにした。2人は家の外に出た。


「本殿の修繕は月曜から風祭建設の天狗さんが来てくれることになったよ」


「そうか……」


「数日で修繕が終わるって」


「……マジかよ。天狗ってすげえな」


 2人は磐守神社の裏山に登った。裏山はまだ緑が残っているものの、ところどころで、楓や紅葉が赤く色づき、くぬぎやコナラは黄金色へと変わり始めていた。


 頂上の巨石群に近寄った。先日の鬼熊達の鋭い爪の攻撃で複数の巨石が抉られた痕があった。


「酷いな」


「でも、巨石が折られなくて良かった」


 鬼熊を召喚した身なりの良い男は数年前からの記憶がなかった。


 イワナガヒメ曰く、『リレ種族に体を乗っ取られていたからだろう』とのことだった。


 依芙姫は、ふと風祭達とのやりとりを思い出した。



 風祭達、天狗がサングラスやマスクで顔を隠し、男を風力発電近くの空き地に連れて行き、数時間過ごさせたらしい。


「動悸とめまいがする。こんなところにはいられない。早く帰してくれ!! 」と男は懇願したという。


「なら、全ての風力発電の稼働を止めろ! 」


「私の一存だけではなんとも言えないが廃止するよう働きかける。だから、ここから帰してくれ」


「実行されなかったら、また、ここに連れてくるからな」と風祭は脅したという。


 依芙姫は風祭の報告を思い出し、「風祭先生は頼もしいよね」と言った。


「そうだな」


「悪妖だけでなく、リレ種族も祓わないといけないのかな……」


「祓うしかないだろう」


 依芙姫はイワナガヒメ達の言葉を思い出した。


『この星に来ているリレ種族は1人だけではない。アヤツは数年前に日本に来た者の一人にすぎん』


『そうなんですか!? 』


『今後、他のリレ種族が靈脈(れいみゃく)を破壊しに日本にやってくるだろう』


『どうすれば……』


『祓うしかあるまい。我らも手助けはする』


 イワナガヒメと祓戸の大神(はらえどのおおかみ)とのやりとりを依芙姫は思い出した。


「リレ種族からこの日本の森、川、山といった自然を守れるかな? 」


「2人で、いや妖達とも協力して守るしかないだろう」


 依芙姫は風祭、木霊(こだま)雨太(うた)のやりとりを思い出した。


「森や川、湖に大量のゴミを捨てる人間がいたら、木の根っこを使ってゴミを投げ返してやる」と木霊が言った。


「じゃあ、僕も神社仏閣に火をつける人間がいたら、火を消しますよ。一族にも伝えます」と雨太が言った。


「……大地や森が邪気に侵されるのは困る……。邪気や穢れが溜まると、悪妖が寄ってくる……」


「カラス天狗にも見張りをさせておくしな。今は妖が懲らしめ……注意した方がうまくいくだろう。日本人が気づいて立ち上がるまで、妖の俺達が注意してやる」と風祭はケラケラと笑った。


 晴真は依芙姫の肩に手を置いた。


「森、自然を守ることは碧威の意志でもあるしな」


 依芙姫は大きく目を見開き、「……そうだね」と目を伏せて言った。


『碧威君ともっと一緒に過ごしたかった』

 

 碧威のことを思い出し、心臓が痛み依芙姫の目から涙がとめどめもなく流れた。


『離れないと言ったのに、本当にいなくなっちゃった』


 突然、依芙姫の太もも辺りにバシバシッとくすぐったい感触を感じた。依芙姫は懐かしい感触を思い出した。


 碧威が生き返ったかと錯覚し、依芙姫は目を見開いた。銀色の尻尾がブンブンと大きく揺れ、依芙姫の太ももに当たっていた。小麦色の肌、髪は短髪の黒髪の少年の体から銀色の尻尾が生えている。


「晴真か……」


 晴真の耳が銀色の狼の耳に変わっていた。再び、晴真が依芙姫の肩に手を置いた。


「……碧威は消えていない。碧威は今も俺と一緒にいる」


「……」


「俺は狼にはなれないが、神獣の姿にはなれる。……悔しいけど……」


 晴真が押し黙った。


「どうしたの? 」


「……碧威が恋しい時、寂しくなった時、尻尾と耳を貸してやる」


「何それ……」と依芙姫はふふっと笑った。


 依芙姫の太もも辺りに微弱な振動を感じた。キュロットのポケットから碧威に貰った虹色の石を取り出すと、キラキラと輝き、光の筋が晴真に伸びていた。


「石が輝いている……」


 依芙姫は大きく深呼吸をし、「そうだね。私が忘れなければ、碧威君は生き続けるよね」


 晴真は頷いた後、依芙姫をじっと見つめた。


「俺はもう、普通の人間じゃない。こんな俺と結婚してくれる相手なんて……」


「そうだね……。ていうか、あなた、私の許嫁でしょ! 」


 晴真はハッとし、首を左右に振った。


「……許嫁だからじゃない。今すぐでなくてもいい。俺のことを見てくれ! 」


「ん? 見てるけど……」


「……そういう意味でなくて……。くそっ。俺はお前のことが好きなんだ」


 依芙姫は心臓がトクンと跳ね、思わず顔を覆った。


「知らなかった。……いつから? 」


「初めてこの裏山に一緒に登った時からだ」


「そうだったの!? そんな素振り1ミリも感じなかったし……」


 晴真は大きくため息をついた。


「やっぱり、そうだったのか……。それはそうと、お前が碧威のことを好きなのも知っている」


 晴真は何かを思い出しているようだ。おそらく、碧威の記憶を反芻しているのだろう。


「……よく知っている。ただ、碧威と同じで、俺も依芙姫のことが好きだ。依芙姫を守りたいから、あの能力を引き継げたんだ」


 碧威への切ない気持ちと晴真が自分に向ける熱い想いを感じながら、依芙姫は目を閉じ、両手で胸を押さえた。


「碧威君も、晴真もありがとう」


 依芙姫は再び、涙を流した。


「碧威とも約束したし。お前を幸せにする……碧威と一緒に…… 」


 晴真は頬を赤く染めながら、依芙姫への想いを伝えた。


「そんなこと言われたら、晴真としっかり向き合わないといけないね……」


 依芙姫はほんのりと頬が赤くなるのを感じた。目を閉じ、呼吸を整えてから、晴真を見つめた。


「一緒に幸せになるために、頑張ろう。私も晴真の隣で胸を張って立てるよう、頑張るね」


 依芙姫は晴真に手を差し出した。

 晴真は依芙姫の手を取り、尋ねた。


「それは俺と結婚しても構わないということだな!? 」


「私達は許嫁だし……」

 

 依芙姫は晴真の手を離しながら、「それじゃ、勉強も頑張ろう」


「ゲェッ」と晴真はうんざりした表情をした。


 2人は石畳の階段に向かった。依芙姫は巨石群を振り返った。


『碧威君、あなたが守りたかった森は、私と晴真が守ってみせるから、いつまでも見守っていてね』


 その時、裏山の頂上に一筋の風が駆け抜けた。かすかに懐かしい狼の遠吠えが聞こえた気がして、依芙姫は空を見上げた。


 握りしめていた虹色の石を見ると、淡く光り輝き、巨石群に光の粒子が流れていった。依芙姫を見守るように巨石群が太陽の光をうけ、銀色の毛並みのようにきらきらと輝いていた。


【読者の皆様へ】

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白かった! 続きが読みたい! 良かった!

と思っていただけたら、

「ブックマーク」と広告下の【☆☆☆☆☆】を

【★★★★★】にしていただけると、励みになります。


評価ボタンも、執筆の」モチベーションに繋がります。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ