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磐守姫と銀色の神獣 〜世界を守るために、祓師、神獣、妖と共に悪妖を祓う〜  作者: ハルモニア


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プロローグ 天満月の夜の約束

 逢魔が時(おうまがとき)の東の空に満月が浮び上がり、神社本殿の裏山は淡く瑠璃色を帯びた銀の光に包まれた。今宵は美しい満月が浮ぶ、天満月(あまみつき)の日だ。


 山の手前に、10歳くらいの少年と少女が立っていた。

 美しい顔立ちをした茶髪の少年は肩まである艶やかな黒髪の少女を優しく見つめながら、


依芙姫(いぶき)ちゃんといると、僕、元氣(げんき)になれるんだ」


「そうなの? 」


「だから、ずっと一緒にいたいんだ」


「うん」


 少年の頬が少し熱を帯びた。彼は小さな石を差し出し少女の手の上に乗せた。乳白色の雪の上に虹色の光が揺らめくような石だ。


挿絵(By みてみん)


「わー。石に虹が入っているよ。きれいだね」


「僕の一族の間では、大切な人に石を贈るんだ」


 少年は別の石を差し出した。その石はまるで夜空に虹色の輝きを放っているような美しさである。


「この石も綺麗だね」


 少女は少年が持つ石を指して言った。


「2つの石は(つい)になっているんだ。白い方は依芙姫ちゃんが持っていて。黒いのは僕が……」


「ありがとう」


「僕が大きくなって依芙姫ちゃんを護れるくらい強くなったら、僕の(つがい)になってくれる? 」


「つがい? 」


「お嫁さんという意味だよ」


「えっ? 私でいいの? 私、大きいし男の子みたいだよ? 」


「依芙姫ちゃんはキラキラしてきれいだよ」


「本当? きれいだなんてはじめて言われた……」


「お嫁さんになってくれる? 」


「……うん」


「ありがとう。この石は約束の証だよ」


「依芙姫、碧威(あおい)君、ご飯よ! 」と神社の社務所に隣接している自宅から依芙姫の母・里子(さとこ)がよく通る声で呼びかけた。


「はーい」


 碧威と呼ばれた少年が心臓辺りを抑えている。


「なんだかちょっとドキドキする。少ししたら行くから先に行ってて」


「えっ!? 大丈夫? 」


「大丈夫……」


 依芙姫が玄関まで辿り着き、後ろを振り返えると、服を残して碧威の姿は跡形もなく消えていた。



 碧威の姿が消えてから6年後。

 6年前、依芙姫が住む神楽(かぐら)市の空気は精氣(せいき)に満ちていた。風が吹くたびに、雑木林のクヌギやコナラといった木々の葉がそよそよと揺れた。田んぼに吹く風が若い稲穂を揺らし、水田と水田の畔道(あぜみち)には、アカツメグサやツユクサといった小さな野花が静かに咲いていた。


 しかし、碧威と約束した神社本殿の裏山の近くの林や空き地には太陽光パネルが立ち並び始め、空気は淀み、自然界の精氣は徐々に減少していった。


 高校生となった依芙姫は、6年前の碧威が消えた日の出来事が未だに忘れられず、学校帰りや休日の朝になると、本殿裏にある山の入口で忽然と消えてしまった碧威を探し続けている。

 依芙姫は今も天満月(あまみつき)の夕方に消えた初恋の少年を追い続けている。

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