表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/15

第15話:海を割る男

「……海、見たくね?」


俺はソファで寝転がりながら、ふと思いついた。


「また唐突ですね……」


リナリアが呆れた声を出す。


「だってさ」


体を起こす。


「この世界来てから、森とか城とかばっかじゃん?」


「まあ、そうですね」


「たまには自然っぽいとこ行きたい」


「十分自然に囲まれていますが……」


細かいことはいい。


「よし、行こう」


俺は立ち上がる。


「今から?」


「今から」


ノリが大事だ。



数時間後。


「おお……」


目の前に広がるのは、青い海。


水平線まで続く水の世界。


「これこれ」


俺は満足げにうなずく。


「いいな、これ」


「気に入っていただけて何よりです……」


リナリアが小さく息を吐く。


「わざわざ隣国まで来た甲斐がありましたね」


「だな」


波の音が心地いい。


風もいい感じだ。


「……で」


しばらく眺めたあと。


「どうします?」


リナリアが聞いてくる。


「泳ぐ?」


「いや」


即答する。


「俺、泳げない」


「え?」


リナリアが固まる。


「マジで?」


「マジで」


昔から苦手なんだよな。


「じゃあなんで海に……」


「見るだけでもいいじゃん」


それはそれで楽しいし。


「……」


リナリアが何か言いたげだが、飲み込む。


「でもさ」


俺は海に近づく。


「ちょっとくらい入りたい気もするんだよな」


「泳げないのでは?」


「だから困ってる」


うーん。


「……どうしたものか」


波打ち際でしゃがむ。


水に手を伸ばす。


「冷たっ」


「当たり前です」


「だよな」


しばらく考える。


「……あ」


いいこと思いついた。


「どうしました?」


「道作ればよくね?」


「道?」


「うん」


俺は海を見つめる。


「ちょっとだけでいいから、空いてくれれば歩けるし」


「……は?」


リナリアが固まる。


「まあ、やってみるか」


俺は軽く手を海面に触れる。


「頼むわ」


その瞬間――


――ゴォォォォォォォ……。


「……え?」


海が、震えた。


水面が揺れ、うねり、そして――


左右に、割れた。


「……は?」


リナリアの声が震える。


目の前で、海が二つに分かれていく。


まるで、見えない壁ができたみたいに。


「おお」


俺は素直に感心する。


「できた」


「できた、ではありません!!」


リナリアが叫ぶ。


「海が割れています!!」


「いや見れば分かる」


問題はそこじゃない。


「これで歩けるな」


俺は割れた海の間に足を踏み入れる。


地面が見える。


砂と岩の道。


「すげえ」


普通に歩ける。


「ちょっとした裏技だな」


「裏技ではありません!!」


リナリアのツッコミが遠くで聞こえる。



海の中を進む。


左右には、水の壁。


魚が泳いでるのが見える。


「なんか不思議な感じだな」


手を伸ばすと、水の壁に触れる。


ぷにっとしてる。


「……夢みたいです」


後ろからリナリアがついてくる。


「夢じゃないけどな」


現実だ。


「……これ、どこまで続くんですか」


「さあ?」


適当にやったしな。


「まあ飽きるまで」


「適当すぎます!!」


また怒られた。


しばらく歩くと――


「ん?」


前方に、何かが見えた。


「なんだあれ」


近づく。


巨大な石の建造物。


崩れた塔。


広場のような空間。


「……遺跡?」


リナリアが呟く。


「海の中に?」


「みたいだな」


完全に埋もれてたっぽい。


「おお」


俺はちょっとテンション上がる。


「隠れスポット発見じゃん」


「隠れスポットの規模ではありません!!」


リナリアが叫ぶ。


「これは……」


周囲を見渡す。


「古代文明の遺跡です……!」


「そうなの?」


すごそうだな。


「……まさか」


リナリアが息を呑む。


「アトランティス……」


「なんそれ」


「伝説の海底都市です!」


「へー」


聞いたことあるようなないような。


「完全に失われたはずの文明が……」


リナリアが震える。


「露出しています……!」


「ラッキーじゃん」


見つけられて。


「ラッキーで済ませないでください!!」


今日も元気だな。



その頃――海岸。


「な、なんだあれ!?」


漁師たちが騒いでいた。


「海が割れてるぞ!?」


「ありえねえ!」


「しかも中に……街が見える!?」


「伝説だ……!」


「神の奇跡だ……!」



「……なんか騒がしくなりそうだな」


俺は遺跡の中を歩きながら呟く。


「確実に大騒ぎです!!」


リナリアが断言する。


「歴史がひっくり返ります!!」


「大げさだなあ」


ただの遺跡だろ?


「ただではありません!!」


まただよ。


「……まあ、いっか!」


俺は肩をすくめる。


「面白いもん見れたし」


「面白いで済ませる規模ではありません……」


リナリアが頭を抱える。


「……ほんと、この世界って騒ぎすぎだよな」


「原因はあなたです!!」


いつもの流れだ。


「さて」


俺は振り返る。


「戻るか」


「どうやってですか?」


「そのまま歩けばいいだろ」


「……海、戻りますよ?」


「マジで?」


それは困る。


「じゃあ急ぐか」


「そういう問題ではありません!!」


リナリアの叫びが響く中。


俺は軽い足取りで、海底の道を戻り始めた。


――このとき俺は、まだ気づいていなかった。


自分が「海を割り、失われた超古代文明を発見した存在」として、歴史に刻まれることになるということに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ