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第14話:異世界に「SNS」誕生

「……暇だな」


魔王城の大広間で、俺はソファに寝転がっていた。


「またですか……」


リナリアが呆れた声を出す。


「いやさ」


天井を見上げる。


「通信はできるようになったじゃん?」


「はい」


「でも使い道なくね?」


「なくはないと思いますが……」


魔界のやつらは、あの高速通信を情報伝達に使ってるらしい。


でも、なんか固いんだよな。


「もっとこう……軽く使えないのか?」


「軽く、ですか」


「うん」


俺は体を起こす。


「誰でも気軽に発信できる感じ」


「発信……」


リナリアが考え込む。


「例えば?」


「今何してるか、とか」


「……?」


「ほら」


俺は手をひらひらさせる。


「“飯なう”みたいな」


「なう?」


「今、って意味」


「なるほど……?」


伝わってるのか怪しいな。


「よし」


俺は立ち上がる。


「作るか」


「またですか!?」


リナリアが慌てる。


「何をですか!?」


「つぶやき魔法」


「つぶやき……?」


「魔法版の掲示板みたいなやつ」


これならみんな使いやすいだろ。



「イメージは……」


俺は手をかざす。


「簡単に送れて」


魔力を流す。


「みんなに見えて」


空間がわずかに揺らぐ。


「リアルタイムで更新される」


ビリッ、と空気が震える。


「こんな感じか」


軽く指を弾く。


――ピンッ。


その瞬間。


空中に、小さな光の文字が浮かんだ。


『トオワ:暇だなう』


「おお」


俺はちょっと感動する。


「出た」


「な、なんですかそれ……」


リナリアが目を丸くする。


「俺のつぶやき」


「つぶやき……」


「で、これが」


俺はもう一度指を動かす。


「こうなる」


――ポン、ポン、ポン。


次々と文字が増える。


『リナリア:困惑しています』


『魔王:主の発言を記録中』


「おお、勝手に増えた」


「え!?」


リナリアが驚く。


「私、何もしていませんよ!?」


「たぶん頭の中のやつ拾ってる」


「やめてください!!」


慌てて頭を押さえる。


「まあいいや」


俺は満足げにうなずく。


「これで完成だな」


「完成なんですか!?」


「うん」


シンプルでいい。


「名前は……」


少し考える。


「つぶやき魔法でいいか」


「そのままですね……」



数分後。


異変は、すぐに広がった。


――世界各地。


「なんだこれ!?」


冒険者が空中の文字を見る。


『ドラゴンなう』


「え?」


別の場所。


『ゴブリン倒したなう』


「なうって何だ!?」


さらに別の場所。


『依頼サボりなう』


「おいそれまずいだろ!?」



ギルド本部。


「報告します!」


職員が叫ぶ。


「謎の通信により、冒険者たちが自由に情報を発信しています!」


「何だと!?」


ギルド長が立ち上がる。


「制御は!?」


「不可能です!」


「なぜだ!?」


「発信元が特定できません!」


「……!」


場がざわつく。


「さらに問題が!」


「何だ!」


「リアルタイムで情報が共有されるため、依頼の独占が不可能になっています!」


「は!?」


「ドラゴンの出現情報が流れた瞬間、複数の冒険者が同時に向かっています!」


「なんだそれは!!」


「さらに……」


職員が顔を青くする。


「ギルドを通さずに、直接依頼を募集する動きも……」


「……終わりだ」


誰かが呟いた。


「ギルドの権威が……崩壊する……」



「おお」


俺はつぶやき魔法を眺める。


『魔王:城の掃除なう』


「ちゃんと使ってるな」


「当然だ……!」


魔王がうなずく。


「主の作られたものだからな!」


「いや、そんな大したもんじゃないって」


ただの暇つぶしだし。


「……」


リナリアが頭を抱えている。


「どうした?」


「世界がまた変わりました……」


「いいことじゃん」


便利になったし。


「情報伝達が速すぎるんです!!」


また怒られた。


「だってその方が楽だろ?」


「楽すぎるんです!!」


難しいなあ。


「……まあ、いっか!」


俺はソファに戻る。


「これで暇つぶしできるし」


『トオワ:昼寝するなう』


「……それ、世界中に見えてますよ」


「マジで?」


まあいいか。


「別に困らんし」



その日――


世界は、また一つ変わった。


誰もが情報を発信し、共有する時代。


だが、その中心にいる男は。


「……平和だなー」


ただ、のんびりしているだけだった。


――このとき俺は、まだ気づいていなかった。


自分が“情報革命”を引き起こし、世界の構造そのものを塗り替えてしまったことに。

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