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コドクユメミテ  作者: 美ン兎智代子
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何も無い事が幸せだと気付かない

彼女が去ってからどれだけの時間が過ぎただろうか。俺はブランコに座ったまま会話の余韻に浸っていた。


(いい匂いだったなぁ)



そんなこと考えてる俺は本当に女慣れしてないんだなと改めて実感した。



携帯を開き時間を見ると20時を回っていることに気付き、帰る為にベンチに置いたままにしてあったカバンを手に取って家路へと向かった。



本日2回目になる帰宅。一度鍵を回してドアを開け扉を開ける。開いたのを見ると自分の他に誰かがこの玄関の鍵を開けたのが分かった。俺は鍵を開けてそのまま走り去ったからな。願わくばあの怒声を吐いていた奴が何処かに行っていれば良いんだけど。



恐る恐る家に入り、確認したところ声も聞こえないし奴は出て行ったようだった。

リビングに入ると母親らしき人がご飯にラップをかけている最中に出くわしてしまった。



『おかえり、今日は遅かったわね。ご飯あるから食べちゃって。』



声が若干掠れているのは気のせいだろうか。顔が分からないもんだから確認の仕様がない。



『食べるよ。自分で洗うから寝てていいよ。』



そう伝えると母親らしき人は疲れているのか分かったと言うとそのまま二階の寝室へと向かっていった。



さて、本日3回目の苦行だ。どうやらハンバーグらしいが、今回も味がしないんだろうな。俺は覚悟して口に運んだ。



(美味しくない‥‥)



分かりきっていた事だ。今更悲しくなんかない。だが、せっかく作ってくれたハンバーグだ。このまま捨ててしまうのは良心が痛む。我慢して一気にかき込んでしまおう。



味がしない料理を頑張って完食した俺は、その足で二階へと向かった。ベッドに横たわり今日1日を振り返り、今日はそんなに悪夢じゃなかった事に安堵し、ゆっくりと眠る体制に入った。

今日は足も疲れているし、直ぐに眠れるだろう。そしたらまた、現実に戻ってたくさん遊ぼう。なんて言ったって夏休みだしな。ちょっとくらいハメを外しても良いだろう。



(そういえば名前聞き忘れちゃったなぁ)



さっき貰った電話番号を電話帳に登録しようとしたが、名前が分からないから登録名に困ってしまった。そうだな、自分でも言ってたし相応しい名前をつけてあげよう。



【夢の案内人】



また会えるといいな。そう信じて俺は静かに目を閉じた。







目を覚ますと、窓から差し込んでくる鬱陶しいほどの赤色が真っ先に飛び込んでくる。

どうやら俺は寝過ぎしてしまったらしい。携帯を見ると時刻は18時27分。案の定友達からのLINEが溜まってしまっていた。



『お前送っといて無視かーいww』



『うんちすぎるwwww』



ボロッカスに叩かれててつい笑ってしまった。自分から誘っておいて返信来なかったらそりゃこうなるやな。でも、見る限りだと怒っている奴は一人もいないみたいで少し安心した。こいつら本当に良い奴らだ。大事にしないとな。



『まじでごめん。二度寝してて今起きた。許しておくんなまし笑』



これで良いだろう。こんな適当でも許してくれるのがこいつらだ。本当に良い友達を持った。



結局今日一日は寝るだけで過ぎてしまった。だが、日課である夢日記は順調に進んでいった。


夢日記 61日目 パート2


今日もいつも通りの悪夢であった。

学校に行けば害虫扱い。

家には簡単には入れない。

そんな夢を見るのはもう懲り懲りだ。


だが良いこともあった。

夢の案内人と名乗る不思議な少女と会えたことだ。彼女はきっと俺の悪夢を持ち前の明るさで照らしてくれる存在になってくれる筈だ。


夢を見るのが楽しみになってきた。

もう一度彼女と会えるといいな。





2回目になる日課を終了させ、部屋の外へと出た俺はお腹が空いている事に気付き食糧を求めてリビングへと向かった。



無機質な空間に、似つかわしくないデカすぎるテーブルは俺と母親二人で食べるには大き過ぎた。会話もなく食事が進んでいく。俺の母親は何も言わないし聞いてこない。そんな事がただただ腹立たしかった。



『なんで何も言わないんだよ!俺の母さんはあんただろ!?息子の事が気になんないのかよ!!なんか言えよ!!』



そんな苛立ちが募りに募ってつい口をついてしまった。返ってくる事なんて分かっているはずなのに。



『ごめんね、こんな母親で‥‥』



だと思った。そうやって謝ってれば良いと思っているその魂胆が余計に俺のイライラを加速させた。違うのに、俺が聞きたい言葉はそんな言葉じゃないのに。ただ俺の事をもっと気にかけて欲しい。俺をもっと知ろうとして欲しい。それだけなのに。



『もういいよ。ご馳走様。もう戻るから。』



食べかけのご飯をその場に残して席を立ち、リビングから出ようとドアに手をかけた。最後に振り返った時、母親は顔を下に向け涙を溢していた。そんな顔見たくもないのに。泣かしてしまう自分がもどかしい。話したい事だって沢山あるのに。叫びたい事だって沢山あるのに。本当に泣きたいのは俺の方だよ。



後ろ髪を引かれる思いでリビングを後にした俺は自室に戻り、夏休みの課題に取り組み始めた。やる事もないから仕方なくだが。



『やべ。飽きた。ゲームしよ』



結局30分も集中が続かなかったよ。

その後は夜中の2時になるまでゲームをやってしまった。二度寝してしまって中々眠りにつけないので仕方なくだが。



その日はついに眠れずに5時まで起きてしまった。人間は一日に満足していないと無意識に夜更かしをしてしまうと心理学者の人が言っていたように、満足できていない俺は眠りにつけなかった。











さあ、今日も夢を見よう。

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