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コドクユメミテ  作者: 美ン兎智代子
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夢の案内人

夢日記 ???日目

俺が今生きている世界は夢なのだろうか?

それとも現実なのだろうか?

それは誰にも分からない。

何気なくベッドから這い出てシワシワになった学ランに袖を通して生きるだけの世界は果たして本当に現実なのだろうか?

ここで1つ考えてみて欲しい。


毎日眠ってから見る夢は本当に"夢"なのか。


本当は"夢"が現実なのではないか。

現実だと思っていた物は夢だったのではないか。


おかしな事を言っていると自分でも思う。

原因は自分でも分かる。

面白半分でつけ始めた自分の夢日記だ。


それから俺は夢と現実、どっちの世界で起こった事なのか分からなくなってしまったんだ。今書いている日記も現実で書いているのか夢で書いているのか分からない。


もし、俺が死んでこの日記を誰かが見る事になったら伝えて欲しい。夢日記なんてつける物じゃないと言う事を。


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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『ん、ふぁあぁ』


なんて寝覚の悪い朝なのだろうか。昨日は徹夜でゲームをしていた事もあり1時間ほどしか眠れていない。


とりあえず目が覚めた事だし、コーヒーでも呑んで朝の時間を満喫するとしようか。

と言っても、朝も昼も夜もやる事なんて変わんないんだけどな。



『母さん!!コーヒー持ってきて!!』



俺は床をダムダムと足踏みしながら叫んだ。

すると準備が出来ていたのか、30秒も経たずしてドアがすーっと開き、コーヒーが到着した。

母親らしき人影はコーヒーをドアの前に置いた後直ぐに一階へ降りていってしまった。



『相変わらず何も言わないのな。』



俺は母親が嫌いだった。というか母親が俺の事を嫌いなのだろう。会話なんてもう一年もしてないんじゃないかと思う。ご飯は母親が寝静まってから一人で食べている。家族の団欒なんてもう今後も味わえるような気がしない。まあでもこうして何か頼んだら拒否は絶対にしないからこれはこれで楽でいい。



俺は母親の持ってきたコーヒーを飲みながら今日一日どうやってこの無為な時間を過ごすのかを考えていた。



『まじで一日中やることねぇわ』



外は夏の炎天下だ。客観的に見たら立派に見える庭には蜃気楼。家の外がぼやけて見えて暑さが目に見えて分かる。まあそりゃ8月にもなったらこのくらいは普通だよな。



『こんな日は誰かの家に集まってゲーム大会だよなぁ』



思い立った俺は同じ高校に通う友達にLINEのグループを使って呼びかけた。


『ぷっ!あっやべ、吹いちゃった。でも何回見てもこのうんち隊って名前やべぇだろ。誰が付けたんだよこんな名前‥‥あっ俺か』



なんて一人で笑ってしまったもんだから余計に誰かと会って話したい欲求が出てきてしまったではないか。



『今日誰かの家で集まってゲームでもしない?っと‥‥』



よし。連絡が返ってくる間に日課をこなしてしまおう。



俺は広すぎる自室の一番端にある勉強机に座り、下から2番目に隠してある小さな学習帳を手に取って、筆箱から出したボールペンで記帳を始めた。



『俺のドリーム物語 (夢日記)』

とださい名前がデカデカと書いてあるこのノートには俺が見た夢が正確に書き記してある。



『昨日見た夢を書いておかないとな。昨日は確か一人で学校に行って‥‥はぁ‥‥そういや今日も悪夢だったな‥‥』



一般的な人が思う夢は願望夢が多いのではないだろうか?追っかけているアイドルとデートしたり、芸能界で華々しく輝く自分を見たりと、幸せな夢が多いだろう。



だが俺の夢は違う。最初はどちらかと言えば幸せな夢が多かった。そんな幸せな夢を何かに保存しておこうと始めた夢日記だったのだが、いつからか、俺の夢はやけにリアリティのある生き地獄そのものになってしまった。

眠りたくないと思ったのはあんまり無かったが最近のは特に酷い。



だが、プラスに考えてみたらどうだろうか。

これはもしかしたら神からの御告げなのかも知れないと。

友達を大切にしないとこうなるぞ。という警告夢なのかも知れない。そう思うとどんな悪夢でも記帳せざるを得ない。



一頻り今日の悪夢を書き終えた俺は

もう一度ベッドに横たわり、携帯を操作して先程送ったグループLINEの画面を見て既読が1つも付いていなかった事に辟易した。



『まだ寝てんのかなぁ‥‥まだ8時だしなぁ‥‥』



夏休みだと分かっていても学校のリズムが体に染み付いているのかどうしても8時に起きてしまう。悪夢を見たせいでもあるのだが。



『あぁでも夏休みって幸せだなぁ』



そんな事を呟いていたら1時間しか寝ていない弊害がきたのかウトウトしてきた。



(起きたら返信来てるといいなぁ‥‥)



俺はそのまま夏休み特有の二度寝に入ってしまった。





そして、また、悪夢がやって来る。





『うあぁぁああぁあぁあぁぁあ!!!』


夢の世界に着いての目覚めはいつもこうなのだ。自分の叫び声で頭が起きるのだ。なんて最悪な朝なのだろう。もう嫌だ。もう一度寝て早く現実に戻ろう。



そう思い、もう一度寝る体制に入ろうしたその時だった。



『あんたいつまで寝てんの!?さっさと降りて準備しなさい!!今日も学校でしょ!?』



母親らしき人?が俺の部屋のドアを勢いよく開けて俺を叩き起こしてきた。


『寝る』



一言だけ伝えて眠りに入ろうとしてもこの母親かも分からない相手は俺の眠りをどうしても邪魔して来る。

夢の世界だって言うのに理不尽だ。



『分かった!分かった!起きればいいんでしょ!?』



『起きるだけじゃなくて学校行く準備!!あんたこの高校に進学させる為にどれだけのお金がかかってるのか考えた事ある!?ちゃんと真面目に毎日学校へ』



『分かった!!!もう分かったから‥‥』



正直これだけで今見てるのが悪夢だって分かるよ。

どっちの世界だって親は鬱陶しいんだな。



仕方なくベッドから起きて俺が通っているであろう学校の制服に着替えて朝ごはんを食べに一階へ降りた。



この夢は見事に現実世界の対比のように作られていて、家にもその兆候がある。俺が現実世界で住んでいる家は所謂豪邸のようなもので何部屋あるのか分からないくらい大きい家なのだが、こっちの世界の家は普通の一軒家だ。まあ同じ家が夢に出てくるのも嫌なんだが。



夢か現実か、もう既に分からなくなってもおかしくないほどリアルな夢なのだが、夢との明確な違いがあと2つある。それはこの世界で生きている人達には顔が無いのだ。黒く塗り潰されており、誰が誰だか判別出来ない。

そしてもう一つ、それは食べ物から味を感じない事だ。何を食べてもゴムを噛んでいるかのように無味なのだ。



これがあるから俺はこの世界が夢であるのだと認識する事が出来る。



(やっぱり味がしない‥‥)



分かってはいるが、何回来てもこの食事の時間が一番慣れないな。



無意味な食事を済ませ、出たくもない家を出て学校へと向かう。



どうやら俺は夢の中でも高校2年生らしく、習っている内容はほぼ変わらない為、全く違和感がなく時間が過ぎていく。

だが、違和感があるとするならば、友達と呼べる存在がこの夢の中には一人もいないのだ。顔が黒い連中と好き好んで付き合う物好きじゃないからな。誰だってそうだろ?




『おい、ーーーー』



それは昼休みの事だった。いつも通り売店で買った味のしないパンを食べていると、クラスメイトAが俺に話しかけてきた。



『ゴミ虫が飯なんか食ってんじゃねぇよ!』



突然怒鳴ったかと思うと、

俺の机を蹴り飛ばしゴミを見るような目で俺を見下してきた。



『本当気持ちわりぃな。早く帰れよ』



周りからは嘲笑。もっとやれと煽るような声すらも聞こえてきた。あぁ、どうやら俺は夢の中ではイジメられているようだ。落としたパンを拾おうと下を見ると俺のスリッパも落書きだらけだった。はは、今気付いたよ。



まあいいや、どうせ味もしないんだから食べたってしょうがないし、元々残すつもりだったから別にいいんだけど、なんてったってこれは夢なんだし。何が起ころうと知ったこっちゃない。



そのまま床に落ちてしまったパンを拾い上げるとゴミ箱に捨て、何も食べずに机で寝たフリを始めた。



寝よう。寝てしまえば、この地獄から抜けてクーラーの効いた部屋でゴロゴロしたい。それに友達から返信も来てる頃合いだろう。寝よう。寝てしまおう。



『あいつまだいるんだ。』

『不登校になればいいのにね。』

『顔も見たくない。』



無視だ、無視。心が痛いのは気のせいだ。俺はそれから30分程必死になって寝たフリをし続けた。



寝れるはずもなかったが。


午後の授業は何も起こらずスムーズに進んだ。体育の授業は体調が悪くなったということにしてサボった。



今日もクソつまらなかった夢だった。早く帰って眠ろう。



そうこう考えているうちに気付いたら家の前まで到着していた。時刻は17時半。



カバンから家の鍵を取り出し、鍵穴に差し込み回すとガチャリと言う音がしてみすぼらしい家の扉が開こうとしていた。



『おい!!早く金よこせ!!何回言わせんだよこのクソアマ!ちょっと優しくしたら図にのりやがって!!』



扉を開ける前に怒声が聞こえ、開けかけた玄関の扉をそっと閉じた。



何故だろう。体全体が震える。あいつ、なんでいるんだよ。今日は居ない筈なのに‥‥

俺は力なくカバンを地面に落とすと、全速力で家から離れるように走り出した。

ただ、ひたすらに走った。息が切れても走り続けた。



家から逃亡して何時間が経っただろうか。携帯を取り出し時間を見ると19時を回っていた。そういえば、周りももう真っ暗になっている。そんなことも気付かなかったのか俺は。

部活後であろう学生も自転車を押しながら友達と話しながら下校しているのが目についた。



とりあえず、休憩しよう。疲れたな。



近くの公園のベンチに座り、自販機で買ったワンコインで買える水を飲んでいると、奥のブランコに座っている学生服を着た女性らしき人影が目に映った。しかもあれは俺の通っている高校の制服じゃないか。今日嫌と言うほど見てきたから覚えたくなくても覚えてしまった。



もしかしたら、俺の事を知ってる人間かもしれないと思い、その場を離れる事を選択した。



だが、立ってみてようやく気付いた事がある。彼女は小さな声を上げながら泣いていたのだ。



夜の公園で一人泣いている女性を見て誰か悪い人が声をかけるかもしれない。いや、でもこれは夢の中だ。俺以外の人間がどうなろうと知った事ではないだろう。さっさとここを去ろう。



『あ‥‥の‥‥大丈夫?』



結局声をかけてしまった。しかも最高級に吃ってしまった。恥ずかしい、ああ、俺の黒歴史にまた1ページだ。


『え‥‥や、やだ!!泣いてなんかないし!!』



顔は相変わらず黒くて見えないが声からしてやっぱり女性だった。にしても泣いてなんかないしって。俺、大丈夫?しか言ってないんだけどなぁ。


『う、うん。そ‥‥そうですよね。あはは』



『え、しかも私と同じ高校の制服!!お願い!!今日見た事は忘れて!お願い!!やっぱ忘れないで!!ていうか誰にも言わないでぇ!』



どうやら気が動転しているらしい。全く持って意味が分からない。



『と、とりあえず落ち着いて。』



『え、あ、そうだね。うん。落ち着く‥‥』



その子はゆっくりと深呼吸し始め、目元に残っているであろう涙も指で掬い上げ落としていった。少し気が落ち着いたのか、俺を見てごめんなさい。と謝ってきた。



それから何を話したのかはあんまり覚えてない。俺も人と話す事をしてなかったから少し、いやもの凄く緊張してしまって、吃りながら何か喋ってたっけ。多分学校が同じ事とか、同じ学年とかそんな話だった気がする。その中で一つ気付いた事がある。彼女は俺の事を知らなかったという事だ。イジメられている事も、俺の名前も何もかも。少しだけ気が楽だった。



それから1時間くらいだろうか。学校の事や、泣いていた理由。俺の生活ルーティン(嘘)の話なんかを話していた。徐々に話す内容も無くなってつい、言ってはいけない事を口走ってしまった。



『あのさ、驚かないで聞いてほしいんだけど実はね、僕ね、今夢の中にいるんだ。』




自分でも反省している。夢の中の世界で夢の中の住人に向かってこの世界の真実を告げてしまったのだ。こんな事言って大丈夫なのか?ロジックエラーが発生しないか?俺の夢が崩壊したりしないか?不安な気持ちに襲われてしまった。



だが、彼女はそんな俺の不安を払い除けるかのように吹き出して笑い始めてしまった。



『あはははは!!なにそれ!全然意味わからないよ!君すっごい面白い。』



『い、いや、本当の事なんだけど。』



人間ってこんな笑えるんだってくらい大笑いしている彼女を見て、何故だか少し安心した。どうやら、夢の住人にこれは夢だと伝える事は問題ないらしい。



『あー笑った。こんなに笑ったの凄い久しぶり!元気出てきたかも。』



『よくそんな笑えるよね。僕は結構真剣に話ししてるのに。』



『そうなんだー真剣だったんだー』



『バカにしてるでしょ?』



『してないよーだ。』



なんだろう、このやり取り凄いむず痒いな。でもこの世界に来て、こんな事を話してしまうのはこの人が初めてだ。なんか少しだけ嬉しいな。



すると彼女はブランコから降りて俺の前にドンと立ちはだかって自信ありげに語り始めた。



『おっけー。じゃあ分かった。ここは君の夢の世界って事で。私が君の夢の案内人になってあげるよ。私は夢の世界の住人だからなんでも知ってるから、これからは私を頼りなさい。はい。これ電話番号。』



そう言ったかと思うと紙切れ一つを俺の手の中に無理やり押し込み、カバンを持って公園から立ち去ろうとし始めた。


『じゃあね!今日はありがとう!めちゃくちゃ元気出たよ!また連絡してね!』



振り向いた彼女は月明かりに照らされ、綺麗な長い髪の毛を振り回して足早に公園から去っていったのであった。



残ったのは彼女の制服から零れ落ちたフローラルの匂いだけだった。


夢日記は精神を病んでしまうから良い子のみんなはやらないようにね!悪い子は自己責任でね。

でも、夢の世界に行けるんだったとしたら、めちゃくちゃ嬉しいよね。むふふな事とか‥‥ぐふふな事なんかも‥‥すみません。自重します。

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