22 攻防戦
ルデルト王子とエリッタは、特に何の問題も無く城へと帰還した。城へと帰って来て真っ先に嫌がるルデルト王子を連れて、エリッタが向かった先はソレイダ陛下が丁度今の時刻居るで有ろう執務室で在った。
午前中、其れも朝食を食べた後は何時もソレイダ陛下は、お昼過ぎ位まで執務室へと籠って毎日大量の書類を処理して居る事を、エリッタは勿論して居た。たまにそんなソレイダ陛下に、休憩と称したお茶を、他の人達が忙しい時等にエリッタも頼まれ持って行った事が有る。
エリッタの場合、そんな事が無くても事前にソレイダ陛下の行動パターンは把握済みだ。勿論ソレイダ陛下だけでは無く、ルデルト王子やデルドアなんかの行動も把握済みなのだが、其れを知って居る者は誰も居ない。
別に行かなくて良いだろうと執務室に行く事を渋るルデルト王子に、エリッタはそんなルデルト王子の手を引き、強制的に執務室まで連行した。
ズルズル引き摺って執務室の扉の前までエリッタは連れて来たが、其れでもまだルデルト王子は渋っており、何とも往生際が悪い。しかしエリッタはそんなルデルト王子等お構い無しに、コンコンと目の前の扉をノックした。少しした後、部屋の中からはデルドアの入れと言う声が聞こえ、エリッタはそっと扉を開けた。
「失礼致します。今お時間、宜しいでしょうか?」
「ああ、エリッタか。構わない」
執務室の中へと入れば、何だか部屋の雰囲気が微妙な事にエリッタは気付いた。しかし何時もの様に机の前に座って居るソレイダ陛下は普通だ。そして傍に控えて居るデルドアも、何時も通りエリッタの姿を見て眉を吊り上げて居る。
一見何時も通りの二人なのだが、其れでも部屋の中を漂う雰囲気は何時もと違う。しかしエリッタは、そんな何時もと違う雰囲気にも気付かぬ振りをし、部屋の中へと入って行く。
のだが、一人だけ部屋の中へと入って来ない者が居る。
「ルデルト様、その様な所に立って居られず入って来て下さい」
「うるせぇ」
扉を閉めてソレイダ陛下達の前まで行きたいエリッタなのだが、その扉を閉めるのもルデルト王子が部屋へと入って来ないのでは閉められない。閉めても良いのだが、其れでは間違いなくルデルト王子はそのままソレイダ陛下達には会わず、自分の部屋と帰ってしまう。
其れでは意味が無いと、エリッタは廊下に居るルデルト王子の腕を部屋の中からグイグイと引っ張り、不思議そうにして居るソレイダ陛下達を尻目にルデルト王子を部屋へと引き摺る。
「ルデルト様、お入り下さいっ」
「嫌だ」
「ルデルト様っ」
「嫌だって言ってるだろ!?」
グイグイ引っ張るエリッタなのだが、ルデルト王子は足を踏ん張り部屋の中へと入ろうとしない。しかしソレイダ陛下達からは、エリッタの姿しか見えない為、エリッタが何を引っ張って居るのか分からない。そして更に二人は小声で話して居る為、ソレイダ陛下達の耳には此のやり取りが聞こえて居ない。
「おい、さっきから何をそんな所でグズグズして居る!? さっさと入って来ないか! 陛下に失礼で在ろうが!!」
「申し訳有りません! 私も出来る事ならば直ぐにでもそうしたいのですが、其れもそうは行かないので御座いますっ。もう暫くお待ちください」
何時まで経っても扉の前から動かないエリッタに痺れを切らしたデルドアは、更に眉を吊り上げ声を荒げる。そんなデルドアにエリッタは、必死にルデルト王子の腕を引きつつソレイダ陛下達を振り返りペコペコ頭を下げるのだが、その途中ルデルト王子に引き戻されたのか、グイッとエリッタは体を前のめりにした。
だが寸での所で足を踏ん張り、今度はエリッタがぐぬぬっと言う可笑しな呻き声と共に渾身の力でルデルト王子を部屋へと引き入れに掛かった。
「な! お前っ、一体どんな力して……!」
「メイドの力っ……ぐう…舐めないで頂きたい、です…!」
「こんっのっ……馬鹿力が――!」
廊下では足の踏ん張りを強めて居たルデルト王子だったが、その足がズルズルとエリッタの力によって部屋へと引っ張られてしまい、足の踏ん張りだけでは無理だとルデルト王子は、エリッタに引っ張られて居ない左手で扉を掴みギリギリの所で部屋の侵入を逃れた。
「ルデルト様っ、往生際が……悪う御座い、ます…よ!」
「う、るせぇっ。お前も…いい加減に、しろ…!」
まるで綱引きの様にルデルト王子を引っ張りに掛かるエリッタの顔は、力の入れ過ぎで真っ赤になっており、一方ルデルト王子も必死に扉にしがみ付き、その顔はエリッタと同じ様に真っ赤で在る。
「何!? 王子が其処に居られるのか!?」
先程のエリッタの声が聞こえたのか、デルドアは逸早くルデルト王子の名前に反応し、ズカズカと現在も繰り広げて居るルデルト王子とエリッタの攻防戦に割って入る様に、デルドアはエリッタの体を引っ張った。
勿論急に後ろに引っ張られたエリッタは驚き、そしてエリッタが後ろに引っ張られた事で腕を掴まれたままのルデルト王子も自然と引っ張られ、声を上げる間もなく強制的に部屋の中へと足を踏み入れてしまった。
肩を引っ張られたエリッタは床に尻餅を付き、扉にしがみ付いて居たルデルト王子は部屋へと転げる様に入ってしまい、先程まで姿の見えなかったルデルト王子が、急に転げる様にして部屋の中へと登場して来た事で、ソレイダ陛下は驚いた様に目を剥く。
そして部屋へと姿を現したルデルト王子の姿に、デルドアは何故か体を震わせ俯いて居た。
「いってー…。おい、急に引っ張る奴が有るか!?」
「わ、私があんなにも苦戦したのに、あんなにも軽々と……!」
「お前は何尻餅付いたままショック受けてんだよ!」
床から起き上がったルデルト王子は、ぶつけたらしくヒリヒリする腕を擦りその場で胡坐を掻き、何故か床に尻餅を付いた状態のままショックを受けて居るエリッタを呆れ顔で見た。そして、そんなルデルト王子の突っ込みにハッと我に返ったらしいエリッタは、直ぐ様その場から立ち上がり乱れたメイド服をささっと整えた後、床に胡坐を掻いて居るルデルト王子の元へと向かい立たせた。
その間も何故かデルドアは体を震わせたままで、エリッタもルデルト王子もどうしたのかと不思議になる。
「おい、デルドア。お前何震えてんだ?」
「まさかデルドア様っ、お体に何か異常を来したのでは…!」
訝しげに俯き体を震わせたままのデルドアを見つめるルデルト王子と、さっと顔を青くさせるエリッタ。しかしそんなエリッタにルデルト王子はもう一々言うのが面倒になったのか、その自分の肩位の高さに有る頭にチョップを喰らわした。そのチョップにエリッタは声にならない声を漏らし、頭を抱えた。そんな二人のやり取りの一方で、デルドアはパッと俯いて居た顔を上げたのだが、
「ご無事で……。ご無事で何よりでした王子!!」
顔を上げたデルドアは、何故か号泣して居た。
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中々話が相変わらず進みません(汗)
もっとサクサク進むように精進致しますね><!




