14 言われ慣れない
「なあ、お前さ…」
「はい。どうか致しましたか?」
エリッタが持って来たオムレツを食べ終え、エリッタが部屋に備え付けられている簡素な、お湯を沸かしたり出来る程度のキッチンで作った珈琲を飲んで寛ぐ事暫く、徐に口を開いたルデルト王子。
ルデルト王子のお代わりの珈琲を淹れる為、お湯を沸かして居たエリッタはどうしたのかと近寄って行く。
「何で、俺を城に連れ帰ろうとしないんだ…」
ルデルト王子は、ずっと疑問に思って居た言葉を口にした。
エリッタは、ルデルト王子に城に帰る様にと要求して来ない。最初に少し其れらしい事は言ったが、だが其れでも無理矢理城に連れ帰ろうとはしなかった。
仕舞いには帰らないと言ったルデルト王子に付き合い、宿にまで泊まる事になって居る。
自分を連れ戻しに来た筈のエリッタが、城に帰る様に説得しないのか、ルデルト王子には不思議でならない。
「ルデルト様は、お城に帰りたいので御座いますか?」
「そんな訳無いだろ!?」
「でしたら、宜しいでは有りませんか」
エリッタの言葉に憤慨したルデルト王子に、エリッタは何でも無い風に告げた。此れにはルデルト王子もきょとんとしてしまう。
「私は、ルデルト様をお城に連れ帰ろうと思って追い掛けて来た訳では御座いません」
「じゃぁ、何の為に追い掛けて来たって言うんだ……」
「勿論、ルデルト様が心配だったからです。其れ以外の理由は御座いません」
「心配って…」
当然とばかりにきっぱり言い切ったエリッタに、ルデルト王子は唖然とする。ルデルト王子はついさっきまで、エリッタは自分を城へと連れ帰ろうとして追い掛けて来た物だと思って居たし、其れ以外有り得ないと思って居た。昔から城を抜け出せば、必ず城の者がルデルト王子を城へと連れ戻そうと追い掛けて来た。デルドア等凄まじい形相で逃げるルデルト王子を追い掛けて居た物だ。
昔からそうだった為、ルデルト王子は今の今までずっと自分を追い掛けて来る者は皆、自分を連れ戻す為なんだと思って居た。だから今回エリッタが自分を追い掛けて来たのも、自分を城へと連れ戻す為だと思って居たが、其れはどうやら違う様だ。
「他に、ルデルト様が心配だったから追い掛けて来る以外に、どんな理由が有るのです?」
「お前……其れマジで言ってるのか?」
「はい」
エリッタも逆に不思議そうに尋ねて来た為、ルデルト王子は不審げに傍に立って居るエリッタを見上げる。しかしエリッタは本気で分からないのか、コクリと頷いた。ルデルト王子は説明しようと口を開くが、頭の中は何故か真っ白になっており、何て言えば良いのか言い淀んでしまう。
ルデルト王子にとって、こんな事を言って来る者は今まで誰一人として居なかった。その為、こういう時に何て言い返せば良いのか分からない。城等関係無く、自分が心配だったから追い掛けて来た等、そんな言葉を面と向かって言われた事も無いルデルト王子にとって、その言葉に喜んで良いのか、其れ共何時もの様に餓鬼扱いするなと言い返せば良いのか、全く見当も付かない。
でもだからと言って、嬉しく無い訳でも無いのが本音だ。じっと見つめて来るエリッタを見つめたまま、ルデルト王子は頭をフル回転させ何てエリッタに言うか、ぐるぐると考え込んだ結果、ルデルト王子がなんと言ったかと言えば…。
「そ、そうか…」
何とも気まずそうにエリッタから視線を逸らし、ルデルト王子はぼそりと呟いた。ぐるぐると考えを巡らせた結果、こんな言葉しか出て来なかった。此れでもルデルト王子的にはかなり考えた結果の言葉なのだが、其れにしては随分とお粗末だ。考え無くとも誰でも直ぐに、何気無くでも出るだろう。だが其れでも、今のルデルト王子には、此れが精一杯の言葉だったのだから仕方ない。
そのルデルト王子のぶっちょう面での言葉に、エリッタは特に何とも思わなかったのか、空になって居たコーヒーカップに、先程沸かし終わったお湯でコーヒーを入れた。
「ご心配には及びません。私は、ルデルト様の意思を反してまでお城へと帰って頂こうとは思っておりませんし、無理矢理連れ帰ろう等と思ってもおりませんので」
微妙な顔をして居るルデルト王子に、エリッタは何を勘違いしたのか、大丈夫だと言う様にコーヒーを注いだ後にこりと微笑んだ。しかし、別にルデルト王子はそんな事を心配して居た訳じゃなかった為、そんな検討違いの事を言うエリッタに溜息を溢すのだった。
変な所で鋭く、変な所で的外れな事を言うエリッタの扱いは、一生分からないと思ったルデルト王子で在った。
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「お前ってさ、何時もそんな感じな訳?」
「そんな感じ、と言いますと?」
「誰にでも、俺と同じ様な態度なのかって事だよ」
「そうでございますねぇ~」
ルデルト王子の前のソファに座って、同じ様にコーヒーを飲んで寛いで居るエリッタに、段々暇になって来たルデルト王子がダラリとソファに座って溢した言葉に、エリッタは飲んで居たコーヒーカップを考えながらテーブルへと置く。
ルデルト王子は日がまだ浅いとはいえ、殆どの時間をエリッタと共に居る様になったが、エリッタが今まで何処で何をして居たのかも、仕事の仲間はどんな奴等なのか、エリッタに関わる事を何一つ知らなかった事に今更ながら気付いた。
エリッタはルデルト王子の事は何でも知って居るのに、自分だけエリッタの事を何も知らないのは何だか不公平じゃないかと思ったルデルト王子の、エリッタへの質問で在った。
「何時も、こんな感じだと思います。私の敬語や人への対応はもう癖の様な物ですし、基本仕事仲間の皆さんにもルデルト様と同じ様に対応しております」
「ふーん。どうせお前の仕事仲間も、お前と同じ感じなんだろ?」
ルデルト王子は不自然にならない様、自然にエリッタへと探りを入れる。こういうのには頭が働くのに、何故もっと他の所で此の頭は働かないのかと、ルデルト王子は自分自身に呆れる。
「いえいえ! 私とは全く違いますよ! 社長さんに言わせると、個性がバラバラで纏まりが無くて、変人ばかりの扱いずらい奴等の癖に、変な所で団結力が有って四人一緒に居ると何かが起こりそうでワクワクする。と言われる程、私達は全く違うのです!」
「其れ、絶対褒め言葉では無いよな…」
無駄に胸を張って威張る様に告げたエリッタに、ルデルト王子は何だか顔も知らないそのエリッタの仕事仲間とやらに、酷く同情してしまった。だが、其れと同時にエリッタ以上の変人が居る会社は、会社として大丈夫なのかと心配になってしまったのだった。
何時も読んで下さりありがとうございます!
全然話が進まなくてやきもきしております(汗)
今の目標は、早くルデルト王子編を終わらせる事です><
誤字脱字等ありましたら、よろしくお願いします。




