第1話:魔力底辺の落第者
「なんだその貧弱な魔力は! 『ボム・プチ』……ただの種火ではないか! 失せろ、役立たずめ!」
王立魔導師団長のダディスの怒号が、豪華絢爛な謁見の間に響き渡る。
僕——橘 蓮は、足元に落ちた自分の影を見つめていた。
強豪校の弓道部で汗を流していたはずの僕は、突如としてこの異世界『アルカディア』に召喚された。
この世界は『魔力こそが全て』。
筋力を鍛えるなど野蛮人のすることであり、刀や弓といった物理兵器は「魔法を使えない弱者の玩具」として徹底的に見下されている。
「蓮、悪いな。お前みたいな足引っ張りと同郷だと思われるのは迷惑なんだわ」
隣でそう嘲笑うのは、同時に召喚されたクラスメイトの佐藤だ。
奴が測定水晶に手をかざした時、空間を焼き尽くすほどの【上級・爆炎魔法】が発動した。
王宮の連中は「勇者の再来だ!」と手を叩いて大はしゃぎ。
一方、僕の計測結果は最低ランク。
適性魔法は『ボム・プチ』。指先にとぼけた種火を灯すことしかできない、初級中の初級魔法だった。
「即刻、追放だ! 最前線の落ちこぼれ集団『辺境警備隊』へ出向させよ!」
衛兵たちに突き飛ばされ、僕は謁見の間を追い出された。
手元に残されたのは、召喚された時に一緒に転移していた僕の愛用品——黒漆塗りの和弓と、数十本の矢が入った矢筒だけだった。
「種火、ねえ……」
僕は指先にポッと灯る小さな炎を見つめる。
彼らは知らない。
僕がただの高校生ではなく、毎日のように何百本もの矢を放ってきた『弓使い』であることを。
そして——物理と魔法が組み合わさった時に起きる「物理法則のハック」を、この世界の誰もまだ理解していないことを。




