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春の湖畔、バイクが繋ぐ恋(津田麻理子)

寝具販売員:麻理子の恋愛模様

 新緑が鮮やかに萌える山間を縫うように続くドライブロード。麻理子の愛車、鮮やかな赤のKawasaki製バイクは、心地よいエンジン音を響かせながら、木漏れ日の中を滑るように進んでいた。


 週末のソロツーリング。それは、麻理子にとって心と体を解放する大切な時間だった。職場ではいつも笑顔を絶やさず、丁寧な接客を心がけている彼女も、この時間だけは誰にも気を使わず、自分だけの自由を満喫できる。


「やっぱり、バイクって最高……」


 ヘルメットの中で独り言を呟く。頬に当たる風が心地よくて、自然と笑みがこぼれた。今日の目的地は、SNSで見かけた愛知県豊田市の山奥にあるダム。深い緑と青い湖面が美しく調和した写真に心を奪われ、いてもたってもいられず、早起きして走り出したのだ。


 体ごとバイクと一体になって峠道を駆け抜ける感覚は、何度味わっても新鮮だった。風の匂い、木々のざわめき、遠くで鳴く鳥の声――。日常の喧騒から遠く離れたこの時間が、麻理子にとって何よりの癒しだった。


 やがて視界が開け、巨大なコンクリートの壁――ダムの堤体が姿を現した。その下には、鏡のように澄んだ水面が広がっている。思わずブレーキをかけ、バイクを停めた。心臓がドキドキと高鳴っている。写真よりも、ずっとずっと美しい。


「わぁ……」


 思わず漏れた声に、自分でも驚いた。胸の奥がじんわりと温かくなる。何かに感動したときの、この震えるような気持ちを、彼女は久しぶりに感じていた。駐車場にバイクを停め、ヘルメットを脱ぐ。


 頬に触れる風が、まるで「よく来たね」と優しく迎えてくれているようだった。ダム湖を見下ろす遊歩道へと足を向けると、スマートフォンを取り出してシャッターを切る。


 その瞬間――。


 少し離れた場所に、同じように景色を眺める男性の姿があった。すらりとした体格に、自然体な立ち姿。そして隣に停められた、クラシカルな青いHonda製バイク。その佇まいに、思わず目を奪われた。


(あのバイク、すごく丁寧に手入れされてる……)


 感心して見つめていると、ふと彼と目が合った。心臓が一瞬止まったような気がして、慌てて視線を逸らしかけたそのとき……彼の口元がふっとほころんだ。


「すごく綺麗な眺めですね」


 柔らかな声。緊張がすっと和らいだ。麻理子は思わず笑みを返した。


「本当に……想像以上でした。写真で見るより、ずっと綺麗」


 言葉を交わすうちに、自然と会話が弾んでいく。彼の名前は山田拓海。仕事の合間を縫って、時折ツーリングに出かけるのだという。物腰が柔らかくて、でもどこか芯の強さも感じられる。そんな彼の人柄に、麻理子は次第に惹かれていった。


 二人で遊歩道を歩きながら、バイクのこと、最近行ったツーリング先、おすすめの道の駅の話――。会話が止まらない。こんなに自然に笑えるのは、いつ以来だろう。自分でも驚くほど心が弾んでいた。


「こんなふうに、初対面の人と話すのって、ちょっと緊張するんですけど……今日はなんだか楽しくて」


 そう打ち明けると、拓海は少し驚いたように目を丸くして、すぐに微笑んだ。


「僕もです。なんだか不思議ですよね、景色の力かな」


 その言葉に、麻理子の胸がきゅっとなった。たぶん、景色だけじゃない。彼の声や表情、その穏やかな雰囲気――それが、今の自分をこんなにも心地よくしてくれている。


 やがて二人は、ダム名物の「ダムカレー」が評判のレストハウスへ。ご飯で模した堤体と、ルーの湖面がユニークで、思わず顔を見合わせて笑い合った。その笑顔が、やけにまぶしく感じて、麻理子は少しだけ目をそらした。


 食後、テラスのベンチに並んで座る。風が髪を優しく揺らし、湖面がキラキラと輝いていた。静かな時間が二人を優しく包み込む。ふと、隣にいる拓海の横顔を見つめる。自然と肩が近づいていたけれど、なぜか不思議と心地よい。少しだけ、鼓動が早くなる。


(この時間が、ずっと続けばいいのに……)


 そんな願いが胸に浮かんで、自分で驚いた。彼がサーモボトルから注いでくれた温かいコーヒーを受け取ると、その香りがほっとするように心を撫でてくれたように感じた。けれど、どんなに心地よくても、時間は止まってくれない。拓海がちらりと時計を見る。その仕草だけで、麻理子の心に寂しさが広がった。


「今日は本当に、思いがけない出会いがあって楽しかったです」


 できるだけ笑顔で伝えたけれど、声が少しだけ震えていたかもしれない。そんな麻理子を、拓海は真っ直ぐに見つめて答えた。


「僕も……景色も良かったけど、麻理子さんと出会えたことが一番の思い出です。なんて、ちょっとキザですかね」


 その言葉が、胸の奥に深く染み込んだ。名残惜しさを抱きながら連絡先を交換し、互いの無事を祈ってそれぞれのバイクに跨る。拓海が軽く手を振りながら走り出す。遠ざかっていく彼の背中を、麻理子は見送った。拓海の姿が見えなくなった後も、暫くの間、麻理子はその場を離れる事が出来なかった。


 帰り道、風の中に彼の声が混じって聞こえるような気がして、何度も胸に手を当てた。こんな気持ち、いつぶりだろう。自宅に戻ってバイクをしまうと、玄関先でふと立ち止まる。今日のことを思い返すと、頬が自然に緩んでしまった。


 予期せぬ場所での温かい出会い。山間の風に乗って、麻理子の心に芽生えた感情は、まだ小さいけれど、確かな輝きを放っていた。


 明日からの日常が、少しだけ色鮮やかに見える――そんな期待を胸に、こだわりの寝具に身を包み、彼女はそっと目を閉じた。


- キャラクター プロフィール -

名前:津田麻理子つだまりこ

職業:寝具販売

好きな事:ツーリング

年齢:21

身長:162㎝(5'4")

体重:56㎏(124lb)

誕生日:9月23日

星座:天秤座

血液型:O型



・彼女のショートアニメ配信動画はコチラ↓

https://www.youtube.com/shorts/EZNHXO5jvNs


・彼女のイラスト配信動画はコチラ↓

https://youtube.com/shorts/8Lpr3XJz_Mg


・彼女のイラストデータをこちら↓のサイト(SUZURI)で配信しています。携帯電話の壁紙等にご利用ください☆

https://suzuri.jp/teruru4040/digital_products/75564

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