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■2024年7月19日
「お前を必ず幸せにする。ビッグになったら結婚しよう」と約束してくれたのも十年前。
バンドはとっくに解散。私とデキ婚。彼は父の工場で働いている。
赤ん坊をあやす私に「約束、守れなかったな」と夫は愚痴る。けど
「幸せにする、て約束の前半部分は守ってくれてるから、いいわ」と返した。
お題・約束は破られて
■2024年7月19日
「先生の小説大人気ですよ。それで今度は出版社のフェスで登場人物のコスプレをしようという企画がありましてね。どうですか」
と渡されたコスプレイヤーの写真に渋い顔。
「イメージと合わない」
「でも既に決定……」
「あのね、僕の作品は我が子も同然、登場人物は我が娘みたいなものなんだよ!」
お題・小説娘
■2024年7月20日
魔法の地図を獲得した。周囲の様子が勝手に描かれ、拡大縮小まで自由自在。
ところがある日のこと、地図を拡大させて大陸の様子を見ていた瞬間、地図の上に鳥の糞が落ちる。ちょうど王都の辺り。汚いなあ。と拭かずに王都へ戻ったら、町はドデカい糞に埋もれていた。
もしかしてこれ、地図じゃない?
お題・オートマッピング
■2024年7月20日
インテリアデザイナーから評論家への転向は上手くいった。それも床が専門の評論家というのがレアで良かったらしい。今やマスコミに引っ張りだこだ。
しかし忙しくなり過ぎた。テレビ出演の予定はぎっしり詰まり、けど床に関する勉強もやっている。
忙しすぎて床に就く暇もない。
お題・床評論家
■2024年7月20日
妻は一日に一度、五分だけ、私に隠れて何かをしている。
ある時、探ろうとしたら、あっさり見つかる。そして本気で怒られた。
以来、妻は秘密の五分間を持とうとしない。それで思い切って訊いてみた。
「一日五分のアレはしないのか?」
「やってるわよ」
「いつの間に?」
「秘密」
お題・シークレット一日五分
■2024年7月20日
やっと一学期が終わった。半ドンの帰校、まっすぐ家へ自転車を走らす。こんな暑くて友達と寄り道とかできるか!
水田の傍を通れば少しは涼しかったのが、今は水抜きされている。土用干し。むわっとした泥の湿気が漂うのみ。
早く帰ってクーラーつけないと、自分が梅干しみたいにされてしまう~。
お題・土用干し
■2024年7月21日
「空襲も始まりました。動物が抜け出すと危ないから殺処分せよと、国からの命令です」
「致し方ない」
「ですが慈悲深い将軍様が動物園は維持してくれるそうです。殺処分した動物は全て剥製、もしくは骨格標本にしてくれると」
「動くモノがいなければ、それはもう動物園ではないだろう……」
お題・死の動物園
■2024年7月21日
勇者は先見、つまり未来を知る能力を持つ。
占い師が王宮に呼ばれた。魔王を倒す勇者はどこにいるか知るため。
「勇者はまだ産まれていません。私が母となり……えっ?」
言ったが、もう遅い。
そして産まれた勇者は
「予知能力なんて持つもんじゃないわよ」
と母に愚痴られながら育ったという。
お題・勇者の予言
■2024年7月21日
家のネズミは知っていた。主人の靴は夜になると空を飛ぶ。それで中に入ると、いろんな場所へ旅に行けた。星の彼方、水晶の砂漠、風巻く海。
だがある日、旅に疲れ靴の中で眠ってしまった。朝、仕事に行こうと靴を履いた主人はネズミがいることに気づく。ネズミは逃げる間もなく叩き殺されてしまった。
お題・ネズミは靴の中で
■2024年7月21日
遠い山は深い青。さらに遠くなると霞み、背後から入道雲が聳える。
納期前だというのにコンピュータのトラブルで、俺は休日出勤。重役は顔面蒼白、まさに天王山だ。
窓の外は真夏。さて、どちらのヤマが高いかな? と俺は仕事を再開した。
お題・雲の峰




