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■2024年6月4日
砂糖といえば南方の特産品。だが北方の若者が、寒い荒れ地でも育つ植物から砂糖が取れることを発見する。これで我らも貧しさから抜け出せると思ったが。砂糖が取れると知り、中央の帝国が攻めてきた。以来北方は植民地となり、民は砂糖を作らされている。若者は甘い夢を見たと自らを後悔したのだった。
お題・北糖
■2024年6月4日
起きると彼女は既にいなかった。代わりに口紅で鏡へ伝言が書かれている。知ってる、これ有名な歌のやつだ。あの歌詞はどんなだっけ? 確か家族に会いに行く、浮気をしてるから、みたいな。
思い出して血の気が引いた。ルージュどころか、自分にとっては赤信号じゃないか。
お題・ルージュの伝言
■2024年6月4日
王都は繁栄を願い、大地の気の通り道「竜脈」の上に建てられた。そこで一年に一度、往来を止める。すると道々に大地の気が奔り、都に光の竜がのたうつかの如く見えた。
ゆえに都の大道は人でも王のものでもない。竜のものと語られた。
お題・竜の道
■2024年6月5日
運動音痴で、自転車通学しなきゃいけない時は揉めに揉めた。入学早々、派手に転んだのを男の子に助けられて、それが初恋だった。一緒に帰っていた途中で初めて失恋したり。自転車はいつも私の「初めて」を乗せて走る。今では私もすっかり自転車乗りになったのも「初めて」のひとつなのかもしれない。
お題・初めての自転車
■2024年6月5日
臆病な皇帝は蛮族を恐れた。いかにすべきか。大臣の忠言を受け、高い高い砦を築くことにする。
かさむ建築費に民は重税に苦しむも。官僚や御用商人は賄賂横領で私財を積み上げた。
人々は大臣の甘言に乗せられた皇帝を塁痴と嘲り、こう歌う。
「豚も煽てりゃ城に登る」
お題・塁高痴
■2024年6月5日
上位存在より、宇宙全ての観測者に選定された。ご飯限定で。
流石に野生動物の食事はグロいので早々に見ないことにした。
人類限定では、やはり飢える人も大勢いるが、これから数十年で改善しそうだし。あと千年くらい文明を保っていそうな気配があった。
それだけで私は心配なく美味い飯が食える。
お題・ご飯の観測者
■2024年6月5日
最初はきっと自分でも自分の気持ちが分からなかった。アイツは別にそんなのじゃないのに。
友達にさんざんはやし立てられ、ラブレターらしきものを書いた。けど、どうしても送信できず一時間。末にこれが恋かと気づいた。
きっとあの時、送信ボタンと一緒に自分の背中も押したのだ。
お題・キュンとするエンターキー
■2024年6月6日
道端に表彰台が捨てられていた。表彰台は悲しげに私を見ている。
「最近は私も活躍の場が少なくなり捨てられてしまったのです」
「活躍した人を表彰する役割のくせに?」
「うるせえ」
仕方ないので椅子代わりにでも拾ってやる。
「ただ拾うのに迷ったから優しさランクは三位ですかね」
「うるせえ」
お題・道に落ちている表彰台
■2024年6月6日
「風流といえば春は花、夏は鳥、秋は風、そして冬スライディング」
「月じゃないのかよ」
「月を見ながら歩いているとアイスバーンでツルッと転び、風景が高速で流れたから、これは風流」
「という渾身のギャグも滑って、場が冷えたから、これは確かに冬の季語かもな」
お題・花鳥風スライディング
■2024年6月6日
日本橋に大店を構える旦那さん、入れる物もないのに倉を建てた。するとその秋は豊作で倉は米で溢れかえった。
それを見た隣の旦那さん。先に倉を建てときゃいいんだな、と倉を造ったものの入れる米はない。結局、建築費で身代を傾かせた。
未来の金か、隣の金か。どの金を見るかで分かれた差。
お題・先繁倉




