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【書籍2巻9/25発売】追放後の悪役令嬢は、森の中で幸せに暮らす~うさぎの呪いを解きたくない~  作者: かのん
第二章

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16話

 レイスは薬を採りに行くミラの背を見送りながら息をつく。


 そしてルカへと向き直ると椅子からひょいと飛び降りてその目の前に言って告げた。


「ルカ。お前、実は喋れるとか……ないよな」


「みゃー(喋れねぇよ。てめぇ、どうなってやがる。まさか、俺が人だと気づいているのか)」


 だが、レイスの耳にはルカがみゃーと鳴いているとしか分からない。


「……はぁ。なんて言っているのかわからん」


「みゃ(通じてねぇ……)」


「猫だもんなぁ」


「みゃ(てめぇはうさぎだろ。なんだよ。なんで人間がうさぎになってんだよ)」


「返事みたいに鳴くな」


「みー(俺からしてみればな。はぁぁ。俺以外に動物になる人間がいるのかよ……神罰ってわけじゃなさそうだよなぁ。神の気配がしねぇ)」


「……可愛い黒猫……ねぇ。はぁ……いいか。私の方が可愛い」


「み……(は?)」


「ミラは小さな生き物が大好きだ。だが、一番は私だ」


「……みゃ(てめぇ、頭わいてんな)」


「……とまぁ冗談はおいて置いて……私が傍に居てやれない時にミラの傍に居てくれてありがとうな。ルカのおかげでミラの表情は明るかったのだな」


「……みゃ~(は? 何言ってんだ)」


「彼女は一人に慣れ過ぎている……だが、平気なわけがない。本当は私がずっと傍に居てやりたいが……そうもいかないからな」


「みぃ(……くそ。悪い奴じゃないのが、むしろ腹立たしいな)」


 レイスは、視線を部屋へと移す。


「……森の中で暮らしたいと、彼女は言ったが……私は出来ることならば人の輪の中へと彼女を戻してやりたい」


「……みゃ(はぁ。聖女に一体何があったんだ)」


「とにかく、ここで一緒に暮らす以上よろしくな。だが、私の方が可愛い。それは譲らないぞ」


「みゃ(おいおい……こいつ大丈夫かよ)」


◇◇◇


 私は薬をもってくると、皿へと薬を注ぎ目の前へと置いた。


「薬よ」


 すると、レイス様はちらりとルカの方へと視線をやり、呟いた。


「ミラ、こいつが獣化の呪いにかかっているか確かめる為に、薬を飲ませてくれ」


「え?」


「もし人間で獣化の呪いであれば、人へと戻るだろう」


 私は獣化の呪いではないと思う。


 けれど、レイス様からしてみれば念のために試してほしいということなのだろう。


 私はうなずくと、小皿をルカの前へと置きなおした。


「レイス様専用に調合はしてあるけれど、他の生き物が飲んでも害はないものよ。ルカ、貴方が飲んでも、何も起こらないと思うけれど」


 ルカを見つめていると、ルカは呟く。


「みゃ(念のためか。人間ではないか疑っていたということか。はっ……そりゃあ身近にうさぎになる男がいれば、そう思うか)」


 つぶらな金色の瞳が揺れる。


「みぃ(飲んだから、どうなるのか……人に戻れたらいいが。だが……もし人に戻ったら、聖女の傍に置いてもらえるか? 神にこの身を変えられた、俺が……)」


 じっと小皿を見つめていたルカだったが、小さく息をつくと小皿の薬をぺろぺろと舐め始めた。


「みゃ、みゃ(聖女を守るためには、人間の姿の方がいい。くそ……面倒だが人間に戻れたならば事情を説明し、傍に置かせてもらえないか、相談するか)」


 聖女を守るため……。


 ルカは私の為にここに来たということか。


 そう思いながら見守っているが、その後、一時間立っても、二時間立ってもルカは元の姿へと戻ることはなかった。


 後から薬を飲んだレイス様は、一瞬で人の姿へと戻り、ルカは項垂れているように見えた。


「……獣化の呪いではなかったか」


「みゃ(くそが……やはり神の力を覆すことは出来ないか……はぁぁぁぁ。まぁ、だがこれで人間という疑いは晴れて、傍に置いてもらえるか……)」


 神の力を覆す。


 ルカは神の力によって黒猫の姿になったということ?


 なぜ? そもそも神とはどのような存在なのか……。


 私は頭の中で首をかしげたのであった。



 その日の晩、私はレイス様から受け取った本を見比べてどちらから読もうかなと考えていた。


 レイス様はすでにうさぎの姿になっており、私の膝の上でうとうととしている。


「ふわぁ。どちらを読むか迷っているのか?」


「えぇ。どっちにしようかしら」


 私はまずは聖女の本を手に取ると、それをぺらぺらとめくっていく。


 これまでの歴代の聖女の力についても書かれているところがあり、私はそれを開いて文を目で追っていく。


【聖女の力を相手と共有する場合、密着面が多くする方が効果を発揮する場合がある。また、聖女の口づけは特別である可能性がある】


 私はパタンと本を閉じた。


 口づけ……。レイス様の頭を撫でる手を止め、私は自分の唇に指で触れた。


 もしかしたら……口づけをしたら……レイス様の呪いは……。


「ミラ嬢? どうかしたのか?」


 私は慌てて返事を返した。


「な、なんでもないの。なんでも!」


 急いで私は本をレイス様の冒険の本と入れ替えると、それを開いた。


「やっぱりレイス様の本から読んでみるわ! 楽しみ!」


「君に渡すと伝えたら、友人が喜んでいた。そのなんだ……よかったら今度友人を紹介してもいいだろうか」


「もちろん。貴方のご友人なら私も会いたいわ」


 そう答えると、レイス様は自分から言ったくせに少し渋る。


「だが……あいつは手が早いんだ。美しい女性だとすぐ口説く。だから、友人だから紹介したいんだが、気を付けてくれという想いもある」


 私はそれに笑ってしまったのだった。

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