22話
「い、今、なんと……あ、少々お待ちください。場所を移してもかまいませんか?」
「えぇ。もちろん」
ヴィクター様は立ちあがると、隣部屋へと一度戻り、オリビアとローゼウス殿下に何かを話をして戻って来た。
「隠し通路を通って移動します。二人には、見つかった時がまずいので隠し部屋にミラ嬢を移動させると伝えてあります。ついて来て下さい」
私はうなずくと、部屋に有った隠し扉を通って、長い階段を降りていく。
中は薄暗いけれど、足元はどうにか見えるので歩いて行ける。
湿っぽく埃っぽい空気に、私は本当に大丈夫だろうかと不安が過る。
しばらく歩いた先にて、石像の前でヴィクター様は足を止めると、石像を動かす。すると扉が開き、中におそるおそる入ると明るい部屋であった。
窓の方へと視線を向けると、庭が目に入る。
ヴィクター様はカーテンを閉めると大きく息をついてから言った。
「……ここは、王城の庭にある別館の一室です。ちょっと待ってください。もしや……洗脳されていませんか?」
「はい。されていませんわ」
「どうして!? 初めての事例です……なるほど……だが、これでどうして貴方が追放されたのかの理解が出来ました」
「ヴィクター様はいつからオリビアの力を知ったのですか?」
その言葉に、ヴィクター様はしばらく黙り、それからソファへと私を促す。
「座って話をしましょう」
「その前に確認させて。貴方を味方だと思ってもいいの?」
「えぇ。もちろんです」
ヴィクター様は力強くうなずくと、その後、両手で顔を覆い、それからゆっくりと息を吐いていく。
「すみません……実は、突然のことに混乱していて……ははは。やっと、やっと僕の意見を証明できる人が現れた」
「証明?」
顔をあげるとヴィクター様はうなずく。眼鏡を取ると、厚底眼鏡の下からは思っていたよりも幼い可愛らしい顔の青年が姿を現した。
青みがかった長い前髪を掻き上げ、藍色の瞳で私のことをじっと見ると、にっとヴィクター様は微笑みを浮かべる。
「僕、オリビア嬢と婚約してから何回も、何回も、彼女はおかしいって伝えていたんです。でも、誰も信じてくれなかった。しかも確かめるって言った仲間は皆洗脳されて行って……だから、出来るだけ被害を最小限にするためにこれまで行動してきたんです」
一体いつからヴィクター様は気づいていたのだろうか。
私は傍に居たのにもかかわらず、オリビアの異変など気づいてもいなかった。
これまでどのような苦労があったのだろうかとも思うが、まず、確認しなければならないことがある。
「アレクリード王国の王子を動物に変えたのは、ヴィクター様ですか?」
ここを確認しなければ先へは進めないと思いそう口を開くと、ヴィクター様は一瞬動きを止めたのちにうなずいた。
「何故、ミラ様がそのことを? その通りです……私が、アレクリード王国の王子レイス殿を動物に変えました……」
「どうして知っているかの前に、その理由を聞いてもいいですか?」
「えぇ。実はあの日……オリビア様が……レイス殿の部屋へと忍び込もうとしており、警備の騎士達も操っていたのです……獣化の呪いは未だ不完全なものです。ですが……あぁしなければ恐らく隣国にまでオリビア様の脅威が……それは何としても食い止めなければと思いました。本当はレイス殿を保護する手はずだったのですが……オリビア様の邪魔が入りうまくいかず……レイス殿には本当に申し訳ないことをしました……」
悔やんでいるのだろう。
拳をぎゅっと握りうつむく姿に、私が持っていたカバンをトントンと撫でると、レイス様がぴょこんと姿を現した。
「謝るならば、この呪いを解いてほしい」
突然カバンからレイス様が現れたことに、ヴィクター様は目を丸くして固まる。
「ま、まさか」
「どうやって私に獣化の呪いをかけたのだ?」
「え……えっと、オリビア様が突撃する前に、侍女に命じて飲み物に入れてもらったのです」
「はぁぁ。なるほどなぁ」
「も、申し訳ありませんでした。ですが……ですが、ご無事でよかった。本当に……良かった……私は、私は人を殺してしまったかと……」
ヴィクター様は唇をわなわなと震わせ、そしてうつむくと涙をぼたぼたと流し始めた。
私とレイス様はその姿に小さく息をつく。
「話をしてくれたら……いや、国の重要事項だ。容易くは話せないな」
「申し訳ありませんでした……味方は誰もおらず、誰も信じられなくて……方法も思いつかなくて……僕は、なんていうことを……」
未だに涙をぼたぼたと流している姿に、レイス様はため息をこぼす。
「わかったわかった。とにかく、解呪薬はあるのか? 容易く男が泣くな」
「あ、あります! すぐに家に帰り持ってきます!」
がばりと勢いよく立ち上がるヴィクター様に、レイス様は冷静な口調で言った。
「あるのが分かればいい。とにかく、それよりも先にミラ嬢を安全な場所へと連れて行ってもらえないだろうか」
その言葉に、私は肩をすくめる。
「嫌よ」
「ミラ嬢!」
私は笑顔を浮かべると二人に向かって言った。
「私だけが安全な場所に隠れているなんて、絶対に嫌」
レイス様の想いは分かるけれど、自分だけが蚊帳の外など絶対に嫌だったのだ。
最近、もう春の終わりを感じます。
半袖で生活してます(●´ω`●)
夏だ! 海だ! キャンプだ! あ、思うだけですよ?
インドアに海とキャンプは厳しいです(/ω\)






