17話
最初は引っ越しに対して嫌だと言う思いが強かったけれど、レイス様の説得もあり、私は命の方が優先かと引っ越すことを決意した。
リュコスに人が来たら襲いかからず、知らせるようにレイス様がお願いをして、私は引っ越しの準備を始めた。
持っていくものは背負えるだけだろう。
少しずつ増やしてきたお気に入りの物達にもさよならしなければならない。
「……はぁ……」
私が小さくため息をつくと、レイス様が言った。
「別れではないぞ。いいか。私が元の姿に戻ったならば、ここにあるもの全て持っていけるように手配する。だから今は堪えてくれ」
「……えぇ」
レイス様は悪くもないのにそういうものだから、私は気持ちを切り替える。
そうしておおよそ一つのリュックに荷物を詰め終わった時のことであった。
「オオオオオオオオオオオン!」
リュコスの遠吠えが聞こえた。
「隠れるぞ! 誰か来たようだ」
「えぇ」
私達は急いで床下にある、小さな貯蔵庫の中へと入った。
ここであれば、身を隠すことができる。
相手の出方次第で、応戦かもしくは様子見かを決める予定だ。
ウサギ姿のレイス様をぎゅっと抱きしめて隠れていると、家の中に入って来た人達の声が聞こえてきた。
「……帰って来た形跡があるな」
「あぁ。だがどうする。見つけられなければ……俺達は殺されるぞ」
「はあぁぁ。どうしたらいいんだ。どうして……俺達がこんな目に……」
聞こえてくるのは複数人の男性の声であった。
一体どういうことなのだろうかと思っていると、男性達はうめき声を上げたり、怒ったりしながら声を上げる。
「一体、一体どうしたらいいんだよ……」
「俺は、国に家族がいる……家族を置いて逃げるなんてことはできない」
「だけど、見つけられずに戻れば……待っているのは……そもそもこうなったのは令嬢を追放したせいだろう!」
「そもそもご令嬢が本当に生きているのか……俺達……国に帰って死ぬしかないのかな」
「死にたくなんてないよ……」
聞こえてくるのは悲痛な声。
そして声からして探しているのは私なのだろう。
私を連れて帰らなければ、死ぬ? 一体どういうことなのだろうかと思っていると、レイス様が私にちょんちょんと手で触れ、そして首を横に振る。
その様子に、私に絶対に外に出てはいけないと、そう言っているのは分かった。
だけれど、もし私が外に出なかったら、この人たちはどうなるのだろうか。
人間など嫌いだ。
関わりたくなんてない。
だけれど、自分とは無関係の人が自分の為に死ぬかもしれない。
なんと悍ましいことだろうかと、私はレイス様の手に触れ、そして首を横に振り返すと、ゆっくりと貯蔵庫の中から外へと出た。
「……私を、探しているの?」
突然現れた私に、男性達は小さく悲鳴を上げたのちに、幽霊でも見るかのような視線で私のことを見てきた。
私は久しぶりに人間と向き合うことに震えそうになるけれど、レイス様がいる。だから大丈夫と自分に言い聞かせて尋ねた。
「一体どうして、私を探しているのか、教えて」
男性達はやっと私が生きている人間であり、探している張本人だと気づいたのだろう。
驚いた表情を浮かべながらも姿勢を正すと、一人の男性が口を開いた。
「ミラ・ローゼンバーグ様ですか?」
「いいえ。今はただの追放者ミラよ」
その言葉に、そこにいた四人の男性の顔は一気に明るくなった。
「あぁ。神よ……」
「探しておりました。貴女様を、国中が渇望しております」
「どうか、どうか国へとお戻りください」
「私達は貴方様を探していたのです」
一体どういうことなのだろうか。
私は見つかったら縛り上げられて罪人のような扱いを受けるとばかり思っていた。
だけれど男性達はそんな素振りはなく、私に対してとても真摯に対応しようとしている。
意味が分からない。
私は小さく息を整えると尋ねた。
「一体、何があって私を探しているのか、何が目的なのか、教えて」
その言葉に、男性達はうなずき、意気揚々とこれまで何があったのかを話す素振りをみせた。
一歩近寄ってこようとしたけれど、私は後ろに下がり警戒心は解かない。
「私達は貴方様に危害は加えません」
「ですが、王国には戻っていただく必要があります」
そういう男性達。私はハッキリと告げた。
「まずは話を聞かせてください」
そういうと、男性がこれまで何があったのかを静かに話し始めたのであった。
リュコスの出番が少なくて、もっと活躍させたかったです(/ω\)
おっきなわんちゃんって可愛いですよね。もふもふしたーい。






