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14話

 薬の服用を始めて二週間がすぎ、そろそろ薬の材料が少なくなってきた。


 レイス様が人間の姿でいられるのも五時間と長くなっている。この調子でいけばあと少しでレイス様は完全に人間の姿へと戻るだろう。


 良く働くレイス様のおかげで、家はとても美しく修理された。そればかりか、ぼろぼろであった庭の柵や、使えなくなっていた物置まで修理してくれている。


 最近では用水路を作ろうと画策しているようで、設計図を作ったり色々と楽しそうに動きまわっている。


 ただ、今日はそれもお休みである。


 今日は少なくなってきた材料を補充するためにもう一度森へと入る。


 前回はぴょんぴょことついてきたレイス様だったけれど、今日は横に並び歩いて進んでいく。


「なんだか不思議ね。可愛いウサギさんの姿だったのに」


 そう言うとレイス様は肩をすくめる。


「言っておくが、私は森に入るのも慣れているからな。だから、心配しなくて大丈夫だ」


「そう」


「それにしても、また森の雰囲気が……なんだか変わったな」


「二週間経つだけで、森の中では自生している場所が変わるの。不思議でしょ?」


「あぁ」


「前回の温泉にはいけないから残念」


「そ……そうか」


 どこかほっとしている様子のレイス様。温泉嫌いだなんて珍しいなと私はそう思う。


「だけれど、今日向かう採取場所は、前回の所よりも近いから日帰りで行けるのよ」


「それはよかった。森は危ないからな」


 採取場所まではほどなくしてつき、私は必要なものを採取していく。


 薬が体に慣れてきたようなので、それに合わせて調合も変えて薬草も変わる。私はそれらを採取しおえた時、ふと顔をあげた。


「ミラ嬢、静かに」


 レイス様の声に、私は視線を向けるとうなずく。


 空気が変わった。


 森の中だと、少しの変化が顕著に感じられる。私もレイス様も身構え、それからゆっくりと身を潜めるために移動しようとした時であった。


「ぐるるるるるっぅぅぅぅ」


 獣の息遣いが聞こえ、私は身を固くしレイス様は魔法具のネックレスから剣を取り出すのが分かった。


 そこにいたのは、巨大な狼であった。


 この森の獣は大きく、人の二倍ほどの大きさであった。


「どうやら気づかれたようだな」


 狼がこちらに向かって警戒するようにうなり声をあげている。


 私は近くにある洞窟を指さして声を上げた。


「あそこに洞窟があるわ! そこであれば、奥の方は道が狭いから! 入って来れないはずよ!」


「よし! ではミラ嬢はそっちに向かって走れ!」


「え!?」


「急げ!」


 レイス様は剣を構えると、狼と対峙する。


 私は覚悟を決めると、持ってきていたしびれ粉の粉末入りの小瓶を構える。


「わ、私だけ、逃げられないでしょう!」


「ははは! 勇ましいな。だが安心するといい。私はそれほど弱くない。だが、ミラ嬢が心配だとどうにも気がそれそうなので、避難してもらえるとありがたい。あと、その瓶、もらってもいいか?」


「え? そうなの? わ、わかったわ」


 私は小瓶をいくつか手渡し、レイス様に言われたように急いで洞窟の入り口の所で様子を見守ると、レイス様は片手で剣を構え、そして狼からの攻撃をひらりと宙を舞って避ける。


 それから、地面に着地すると勢いよく狼との距離を詰め、そしてしびれ粉の瓶を投げつけると、距離を取った。


 狼は声を上げ、それからふらつきながらもレイス様へと襲い掛かる。


 レイス様は狼の牙を剣で受けると、そのまま地面へと押し倒され、そこから狼の腹部を蹴り上げてふき飛ばすとまた距離を取り体勢を立て直す。


 私はその様子をハラハラとしながら見守っていたのだけれど、レイス様は腕を回し、それから軽くジャンプしながら楽しそうな様子だ。


 まるで遊んでいるような様子に、私は大丈夫だろうかと心配になるけれど、それは無用な心配だったらしい。


 レイス様は剣を使い狼と楽しそうに戦い、そしてその背に乗ると狼が嫌がるのを無理やり乗りこなそうとする。


「レイス様―! 大丈夫ですかぁー!」


 そう尋ねると、レイス様は片腕を上げて言った。


「大丈夫だ! いや、案外こいついい乗り物になりそうだなと思ってな!」


 嫌々ともがく狼と、余裕の笑みを浮かべるレイス様を見て、私は大丈夫そうだなとほっと胸をなでおろした。


 それからしばらくして、狼はゼーハーと地面に横たわり、舌をだらりと地面に垂らしている。


 その上にレイス様は座り、笑い声をあげて、狼の体を撫でた。


「よしよし。さぁ、どっちが上かは分かったな」


 ポンポンと叩かれた狼は、のそりと起き上がると、レイス様の横におすわりして尻尾を振っている。


「いいか。ちゃんと言うことを聞くんだぞ」


「オオン!」


 こちらに向かってレイス様は手をあげると言った。


「ミラ嬢! もう大丈夫だ! こっちへ来てもいいぞ」


「え……ええぇぇ」


 私は恐る恐る向かうと、一瞬だけぐるるるると狼がうなり声をあげる。


 そんな狼の頭をレイス様は鷲掴みにすると言った。


「いいか。よーく覚えておけ。この人は私にとってとても大事な人だ。絶対に傷つけてはいけないぞ」


「く……くぅぅん」


 先ほどまでは狂暴だった狼が、私の方を見てキラキラとした瞳で見つめてくる。


 野生の動物とはこのように賢いものなのだろうかと思っていると、レイス様は魔法具のネックレスの中から、首輪を取り出した。


「この魔法具は収納機能もついているんだ。これは魔法具の首輪だ。ほら、首輪をつけてっと。よし、これで私との主従契約ができた」


「主従……契約?」


「あぁ。さぁこれで私の意向に逆らうことはない」


「待って……じゃあ、触ってもいいの?」


 私がおずおずと尋ねると、レイス様はそれを聞き、一瞬止まる。それから少しばかり悩まし気な表情を浮かべる。


「わ……私の方が、可愛いよな?」


「え?」


「いや。すまん。なんでもない。触ってもいいぞ」


 狼が私の方へとしっぽをぶんぶんと振り、私が手を伸ばすと、手にすり寄るように可愛らしく目を細めた。


「ふわぁ。可愛い」


 私がそう呟くと、レイス様が何故かちらちらとこちらを見てくる。


「どうかした?」


「あ、いや、何でもない。ミラ嬢は、動物が好きなのだな」


「えぇ。ふふふ。可愛い。こうやって撫でられるのはレイス様のおかげね。ありがとう」


 そう伝えると、レイス様は肩をすくめ、それから言った。


「この大きさの狼であれば、背中にも乗れるだろう。これで森の中の移動が楽になるな」


「え……乗って大丈夫?」


 私が狼に尋ねると、任せろとでもいうようにしっぽがブンブンと振られる。


 薬草はすでに取り終わっており、私達は狼の背中に乗ると森の中を駆け抜けていく。


 来た時には時間のかかった道が、一瞬で過ぎ去っていく。


「わぁぁぁ! 速い!」


「さすがだな!」


 森の中を駆け抜け、そしてもうすぐ家につくと言う時、狼が足を止めると、鼻をふんふんと鳴らしてレイス様へと視線を向ける。


 レイス様は狼を降りると、様子を見つめる。


「少し、見てくる。待っていてくれ」


「? えぇ」


 一体どうしたのだろうかと思いながら、狼と共に森の中で待っていると、小走りで帰って来たレイス様は言った。


「何者かが家に来たらしい痕跡がある」


「え?」


 突然のことに、私は一体どういうことなのだろうかと、不安に思った。



美味しいものを食べたいなっていつも、X眺めながら思ってます。

皆おいしそうなもの食べてるんですよね……(/ω\)

私も食べたい。けど、そんなお洒落なお店なんて、入ったことないから……。

今日も目玉焼きとウインナーが美味しいです(´∀`*)ウフフ

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