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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の1 中学3年生編 (ストーカー疑惑)
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美沙の人生初デート

成り行きで付き合うことになった彼氏と、

人生初のデートをすることに・・・

  【美沙】


 その場の軽口だったとはいえ、生まれて初めて『彼氏』というものができてから数日が経った。


連絡先は交換したものの一番最初に『よろしく』と交わした以外にやり取りはしていない。


昨日みんなで集まって話し合った時にもとくに彼からアクションはなく、私はちょっともやもやしている。


軽いノリでこちらが言い出したのだし、やっぱりこちらから誘ったほうがいいのか?とか、ひょっとしたら、週末どこかに誘われるかもしれない?、とか考えた。


そう思って手持ちの服を振り返ってみれば、デートに着ていけるようなものは一着もない事に改めて気づく。


さてどうしたものかと一瞬考えたが、

こういうことは手なれた友達に聞くのが一番!

そう私は結論付ける。


「もしもーし。あたし。なにー?」

「もう家に帰った?なんかしてる?」

「んーん、なーんにも。帰って着替えたとこー。」

「ちょっとそっち遊びに行っていいかな?」

「ん。いーよー、待ってるねー。」


普段着に着替えて紗奏の家まで向かう。


私の家から徒歩5,6分なのですぐと言えばすぐだ。


(ピンポーン)


「はーい、どうぞー。」

「おじゃましまーす。」


  (タンタンタンタン)

玄関を上がってすぐの螺旋階段を2階へ上がる。


紗奏の部屋に来るのは結構久しぶりかもしれない。

最近こやつは梨桜とべったりだったし。(笑)


「それで、相談なんだけどさ。」

「当ててあげよっか。(笑)」

話を切り出した途端に、切り返される。


「む??」


「安藤君とのことでしょ。(笑)」


「むーーー。

 ファイナルアンサー?」


「ファイナルアンサー!」


「正解です!(ビシッ!)」


「やっぱり(笑)」


「やっぱあれだよな、あのノリでとはいえアタシから告ったんだし、デートとか誘ったほうがいいのかな・・・と。」


「Lineとか、電話とか、あんまりしてないの?」

「最初の挨拶だけだな。アタシもなんか二の足を踏んじゃってさ。らしくないけど。」


「そっかー、で?で?

 ノリでとはいえ、美沙が告るってのにびっくりしたよ。

 どこが気にいったの?」


「んー、顔かな。」


「そこかい!(笑)」


「あと、落ち着いてるじゃん。クラスの男子とはえらい違いだ。」

「あー、だねー。やっぱり転校が多いって言ってたから人生経験積んでるんでしょ。」


「でさ、・・・」


  (ピロン♪)

話を続けようとした丁度その時に、携帯がメッセを告げた。

目の前の親友はニヤニヤしながらこっちを見ている。

確認すると、『こんにちは、土曜日って予定空いてるかな?』

そうLineをくれたのは、生まれて初めてできた彼氏だった。


私は紗奏にちょっと返事をすると断ってから、タップしていく・・・

 『うん。空いてるよ。』

・・・そこまで打ってちょっとだけ考える。『何かする?』と、こちらからふったほうがいいのか、待ったほうがいいのか・・・

ちょっとだけ考えて、そのまま送信する。


うん。せっかくだし誘ってもらおう。


「土曜の予定聞かれた。空いてるって答えておいたけど、デートのお誘いかな?」


「それしかないでしょ。(笑)

 うらやましいねー、この、このー。(笑)」


そう言って紗奏は肩のあたりをつっついてくる。


  (ピロン♪)

『それじゃ、お昼でも一緒にどうかな?』



「デートすることになった。」

「よかったね!」


「それでさ、今日はそのことなんだけど・・・

 やっぱ、ジーパンとかじゃあれだよな?」


「だねー、男子的にはやっぱワンピとかスカートがいいんじゃない?」

「アタシそういう服が無いんだよな。

 でさ、

 紗奏、服貸して?」


「いーよー。」


といって、紗奏はクローゼットを開けて見せてくれる。

本当は明日にでも付き合ってもらって買いに行けばいいんだけど、急すぎてちゃんと選べそうもない。

たぶん紗奏のなら外すことはないはずだ。


「これなんて、美沙に似合うと思うんだけど。どう?」


そう言って取り出してくれたのは、青系中間色のワンピースだった。

普段アタシは黒か白しか着ない、下はたいていデニムのパンツだ。

ワンピースなんて着るのはおそらく小学校低学年で親に着せられて以来の気がする。


・・・すげー恥ずかしい・・・


「似合う!」


「・・・なんか着慣れなくて恥ずかしーんだけど、変じゃね?」

サイズはぴったりだ。アタシと紗奏は『胸』以外そう大差ない。


「超綺麗だよ、美沙!」


満面の笑みでそう言いやがる!

なんつーか、女のアタシがめっちゃ照れる。

コイツの前で正気を保てる男はいないな、絶対!


「アリガト。

 じゃ、これにする。

 サンキュー紗奏、恩に着るよ。」



  【人生初デート】


 身なりを整え、洗面所で確認をして家を出る。

昨日母さんに、今日出かけるからお昼はいらないと告げると、『相手は女の子?』と聞かれたから、素直に頷くと『デートで女の子にお金出させちゃだめよ。ハイ。』と言って1万円渡された。(中学生のデート代にこれは多すぎるだろ)と思っていると、『残ったらちゃんと返しなさいね。』と付け加えてきた。

 父さんは昨日も夜遅く(というかもう明け方)に帰ってきていた。異動になったばかりのころはいつもそうだけど、頭に入れておかなければならないことが多いらしい。


 待ち合わせの30分前に駅前に着き、ベンチに腰を下ろして今日の予定を確認する。お昼はレビュー内容の良かったイタリアンのお店で、そのあとは映画に誘おうかと考えている。

 最近こういったレビューもヤラセなんかがあるらしいのだけど、下調べをしようにもいっしょに行ける友達などいない。


 土曜日のお昼前という事もあり、駅前の人通りは多い。

クラスメイトに見られでもしたら、月曜は弄られそうだなと考えたところではたと思い当たる。


そういえばあの場には5人いたのに、今週僕たちが弄られることはなかった。意外と口が堅くいい奴らなんだと改めて思った。こういっては何だが、向井君はかなり口が軽そうに見えたのだが。(笑)


 「おまたせー。」


と、そんなことを考えていたら、突然声を掛けられ振り返る。


「っ!、・・・やぁ。僕も今来たとこだよ。」


初めてみる私服姿に、一瞬言葉に詰まってしまった。

本当はこういう時上手に褒められたらいいのだけど、なかなかそういう言葉が出てこない。


「あー・・・、その・・・凄く似合ってる。」


「えぁっと、あ・・・アリガト、照れるな。」


そう言ってちょっと照れる彼女はとても同い年の女子とは思えなかった。


電車で駅を3つ行くと繁華街がある・・・のだが、


今、この電車の中でどのくらいの距離感でいればいいのか悩んでしまう。

たしか、女性はできるだけドア付近に、自分はそれをガードするようにすればいいんだっけ?


距離・・・距離は・・・こんなもんかな?


一駅過ぎ、二駅過ぎたところで、電車が切り替えポイントを通過したため少し揺れた。


その時、後ろにいた壮年の男性にちょっとだけぶつかられる。

それで、つり革をつかんではいたものの、体だけが彼女の方にくっついてしまった。


(柔らかい感触が・・・)


「ご、ゴメン。」


「ヘーキ。」


彼女は特に気にしていないようで、ほっとする。


反対に僕の方は心拍がやばいことになる。


気づかれないよう深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

(大丈夫、大丈夫・・・。)



集札を抜けて駅を出ると、春とは思えない日差しが僕らを照らし出す。


「苦手じゃなきゃ、今日はイタリアンにしようかなって思うんだけど。」


「おっ、そういうお店行ったことが無いから、楽しみだ!」

どうやら外してはいなかったようでほっとする。


 横文字のメニューでは僕らは分らないので、日本語メニューがあって僕らが来てもおかしくない、できるだけ気軽なお店を選んでみたのだが、それでもこういう店に二人で入るのは初めてで、とても緊張する。


「じゃ、アタシはこの『アサリと春野菜のパスタ』で。」

「OK。僕はじゃぁこの『菜の花と筍のパスタ』にしようかな。」


注文が決まり、店員さんを呼ぶ。


「安藤君、慣れてそうだな。」

「イヤ全然だよ。初めてだし。」


(慣れてそうだと思われては大変なので、『初めて』のところを強調しておく。)


「あー、そうだ、最初にちょっと謝らせてくれ。

 なんかあの場のノリのような告白になっちゃって、悪い。」


「いや、僕の方こそ。

 正直、凄く打算が働いた。

 あれがノリだっていうことがわかっていながら、

 それでもOKすれば付き合えると思って。」


「ぷっ、アタシと付き合ってもそんなメリット無いと思うけどな、紗奏や梨桜ならともかくさ。」


「そんなことない!

 あ、・・・悪い。声デカくなった。」


「・・・。

 名前で呼ぼっか。『クン、サン』付けじゃあれだしさ。」


 そうして、しばらく話をしていると、料理が運ばれてきた。

女子と二人で話をした経験など全くなかったのだが、最初の緊張はすぐに消えた。


彼女はとても話しやすい。


 あと一つ、重大なことを告げなければいけない。

それが心に重い。


 食事中は主に彼女の友達関係の事や、僕の転校履歴とかその間の出来事なんかを話した。クラスの男子が言っていた通り、彼女たち3人はとても仲が良いのだそうだ。ただ、男子が噂していた白石さんと本間さんが付き合っているって言うのは、実際には男子と付き合う気が無い二人が男除けのためにあえてスルーしているただの噂なのだと説明してくれた。


「でさ、道兼、転校多いって言っても、今年中にいなくなるって事はないんだろ?」


驚いた、それがこれから話さなきゃならないと思っていたことだ。

何というか、本当、話しやすいな。


「感なんだけど、今度の転校は早いかもしれないんだ。」


「1年もいられないのか?」


「分からないけど。そのことを丁度話したいと思ってた。

 ちょっと長くなるけど。」


「うん。いいよ。」


「僕らが住んでる地区の警察署あるじゃん。」


「うん。」


「そこの署長が、僕の父さんの一期先輩なんだけど、

 普通じゃそれはありえないんだ。」


「どいうこと?

 それが道兼の転校と関係あるん?」


「うん。たぶんね。

 警察署長って普通は『警視』って階級の警察官がつくんだ。

 それで、父さんとその土井さんっていう署長なんだけど、その人は警視正っていう階級で、めっちゃ切れる人だって父さんが言ってた。だから、ちょっと考えられない。これが県の主要署だったら分かるんだけどね。あそこは『南署』だから。」


「うん。それで?」


「懲戒人事でもなきゃ、めったに起こらない人事がまず先にあって、そのあとすぐに僕の父が呼ばれるようにここに来た。こういう時は経験上なんかあるんだ。」


「なんかって?」


「おそらくこの県警内に何かあるんだと思う。だからそれを片付けたらまた異動になる気がする。」


「なんかすごい話になって来たな。」


「ごめん。」


「それで道兼、来年は受験もあるだろ?

 高校の転校は結構大変じゃないか?」


「高校は落ち着こうって考えてるし、親もさすがに高校までは連れまわさないと思う。」


「だったら中3からそのままこの町にいたらどうだ?

 ってこれは自分勝手な言い草かもしれんけどな。」


「高校生ならともかく、中学生で一人暮らしは許してもらえないと思う。」


「それもそうか。

 ちなみにウチは隣にじいちゃんたちの家があって下宿とかも全然OKだと思うし、紗奏んとこはアパートを社宅に使ってて、空いてるらしい。もしこの町が気に入ってくれたなら、頭の隅にでも置いといてくれ。」


「下宿と社宅かぁ・・・うん。考えてみるよ。」


それから僕らは話題を映画の話題に変え、近未来を舞台にしたサスペンス系の映画を見ることにした。

・・・セオリーは恋愛映画なんだろうけど。



  (そして夕暮れ)


僕らは夕暮れに染まった街を話しながら歩いている。


「いや、ありがちなサスペンスだと思ったら、意外だったな。スゲーよかった。」


「うん。最近のサスペンスって捻りすぎてて見てて分かるもんな。

 あ、こいつは裏切るやつだ!とか。(笑)

 今日のは凄かった。」


そんな話をしながら、彼女を家まで送ってきたのだが、

歩きながらずっと考えていることがある。


(別れ際ってどうすればいいんだ?)


「アリガト。ここがウチで、奥のがじいちゃんたちの家。」


「きれいな家だね。

 今日は楽しかった。また一緒に行こう。」


・・・


「それじゃ。また来週学校で。」


「うん。またな。」


結局、ただそう言って彼女に手を振り、自分も家路につく。


そして、こういう別れ方じゃダメだなと思った。

もっとこう、余韻があるほうがいい。

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