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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
第1章の6 中学3年生編 (痴漢事件)
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麗人の置き土産

ふわりと舞い降り、事件の本質をさらりと述べて帰って行ったその麗人が残したもの。

  【麗人の置き土産】


 皆がその麗人にあっけにとられていた。

立ち居振る舞い、そしてその存在も、とてもただ人とは思えないような気配と言ったらいいのか・・・説明する事すら難しいほどの。


特に女子二人は、それはもうもの凄い喜びようだ。

美しく、ミステリアス、この年頃の女子には格好のスウィーツだろう。

低く抑えた黄色い囁き声が漏れ出している。


と、それはさておき・・・


「なんだか凄い人でしたが、どうやら犯行現場は隣家で間違いないようですね。ただ、令状・・・取れますか?」


「凄いと言うかなんというか、物の怪の類のようだったなぁ。

 しかし、そこに答えがあると分かっちゃいても、どうやっておふだを取るか・・・。

 一回スカッてるからなぁ、よほどじゃないと・・・」


「ちょっと待って。

 縁、剣崎さん、そのパソコンって誰のパソコン?戸田君のだよね?だったら彼に貰ったらいいんじゃない?」


「そうか!普通に貰えばいいんだ。だけど、手順と速度が大事だぞ。それにこれが本郷に漏れたら、すぐに廃棄されかねない。」


「それに今聞いた話だと、家の人にも本人にも相当に信頼されているようだったぞ?それを、俺らが『彼は実はこういうヤツだ』って言ったところで、信じてくれるかね?」


「梨桜の言う事ならあるいは。どうかな?」


「どうだろう?それに、連絡先とか知らないし。

 家の人に聞いたら、きっと本郷君にも伝わっちゃうよね?」


「えーっとぉ、ちょっといいですか?

 そのUSBって、あの麗しの君がパソコンから抜き出した内容なんですよね?きっと。その中に入ってたり・・・しないですよねぇ?」


「いや!それだっ!美織ちゃん!、十分あり得る。

 急いでパソコンとって来る。」


そう言って立ち上がろうとする本間さんを制止して、剣崎さんが立ち上がる。


「パソコンなら何でもいいんだろ?

 ちょっと大将から借りて来るわ。」


そう言って部屋を出て行った。


・・・


 さっきの話から、縁がなぜ私に何も話さなかったのかが分かった。

殆ど一緒に登下校している私と縁、それに紗奏。事前に私たちに知らせていたら相手に警戒されてたかも知れない。

 そう思うと、さっきまでの怒りは何処へやら、彼に抱きついてしまったのが猛烈に恥ずかしくなってきてしまった。

 しかも私泣いてたし!

あーんもう、どこかへ逃げ出したい!


 そんな気恥ずかしさを隠すように、横のお父さんを見上げる。

あ。そう言えばさっきちょっと気になる事を言ってたな。


「お父さん?なに?焼山の黒天狗って?」


「なんだろうな?あの様子だと何かの勘違いでもないんだろうし、心当たりがあると言えば、小さいころお世話になった親戚の坊さんなんだが。あの人天狗だったのかな?実はうちの家系は妖怪か?(笑)」


 ( ( 笑 ) )


場の空気が一気に和んだ。


「それにしても~、なに~、あの麗しの君~」

未だ興奮冷めやらない美織ちゃんが体をくねらせながらそう言った。

その横の茉莉華ちゃんも大喜びだ。


よし!このチャンスに話をそっちに持って行ってしまおう!

私の事は忘れてください!


「美織ちゃん、次の本に絶対描くよね?彼の事。」


「もちろん!

 相手は~・・・」


そう言って、縁とお父さんを交互に見比べる・・・

とっても怪しい目つきだ。


「梨桜のお父さんかな。やっぱり(笑)」


それを聞いてもお父さんはただ笑っている。

オトナだなぁ・・・。


「女子はどうしてこう、男同士が好きなんでしょうか?」

平然とそう言う縁に対して、安藤君は何やらとても恥ずかしそうに顎のあたりを弄っている。

 あなたに髭は無いよね?(笑)

今度彼女たちの漫画を読ませてあげよう、うん、美沙経由で。


「男子だって女の子同士が好きじゃーん。」


( ( 笑 ) )


 (すすーー)


なんだか場が緩み切ったところで、剣崎さんが戻ってきた。


「待たせたな。借りて来たぜ、パソコン。」


 そして、パソコンが立ち上がるまで、戸田君へのアプローチについて相談することにした。


「素直に話して、分かってくれるかな?」

「彼が今、お前をどう思っているかというのに大きく左右されるかもしれないね。」

「でも、もしまだ私のことが好きだとしたら、なんだかその気持ちを利用しているような気がして、なんか気が咎める・・・。」


「うーむ、過去から現在に至るまで、ずっと友達だと思っている人に裏切られ続けている、という事はとても悲しい事だとお父さんは思うよ。だから、お前が今被害を受けていると言う事をきっかけに、彼の本性を知る事が出来れば、少なくともこれからの人生にとってマイナスになるとは思えない。違うかな?」


「そうだよね。信じていたと思っていたら裏切られていたなんて、最低過ぎるし酷すぎる。」


 そんな話をしていると、パソコンが立ち上がり、剣崎さんがUSBを挿入する。


「こりゃまたきれいに整理されてるなぁ。

 ・・・

 ・・・これか、よっと。

 『戸田将太、携帯番号***-****-****』っと。

 良いかい、姫。

 話す順序や、話し方はとても重要だ。

 頼んだぜ。」


「うん。やってみるね。」


 私にとって良いとは言えない感情がある相手、だけどその彼が、事件を解決するカギを握ってるんだ。


・・・ダメ、そんな考えじゃ。

彼の気持ちにならなきゃきっと信じてくれない。


 彼はずっと信じていた友達に裏切られていたんだ。その本郷君のせいでこの町の中学校へも行きづらくなり、たった一人で隣の県へ。そして知らない人だらけの学校へ。それはどれだけ寂しい事だっただろう。だから本郷君に気を許し、家族もまた気を許し、今回の事件に繋がってしまったんだ。

 友達に裏切られていた、という事は言わなくていい。

たとえ信じてくれたとしても、突然そんなことを言われたらどれだけ傷つくか分からない。

私が本郷君にストーカーされて困っている、それでゆっくりとその事実に気が付いてくれれば。


 私は今までにない決意でスマホを手にする。


「あぁ、姫、俺のを使うか?

 警察関係者の携帯って事にしといたほうが相手も納得し易いし、

 自分の番号知られんのも嫌だろ?」


「ううん、大丈夫。そんなことできないよ。」


 (・・・ ・・・ ・・・)


『もしもし。』

久しぶりに聞く戸田君の声は声変りしたようで低い。

昔は怖くて嫌いで・・・。


「あ。もしもし、私、八月朔日梨桜と申します。

 戸田君ですか?」


『え?あ?・・・梨桜?

 梨桜ーーー! ひっさしぶりじゃん!

 どうしたよ? 元気だったかーーー?』


凄いテンション。

やっぱりまだ・・・。


「う、うん。元気にしてるよ。戸田君はどう?元気?」


『おーー、あったりめーよー、

 俺ぁーいっつも元気いっぱいだって!』


「そっか。良かった。

 あのね、ちょっと相談があって。今時間いい?」


『おう、いきなりかけて来る位だもんな!

 なんか困ったことでもあったんか?』


「うん。実はね、今ちょっとストーカーされて困ってて・・・

 本郷君って言うんだけど、知ってるよね?」


『本郷?・・・一夜いちやか?』


「うん、そう。去年の10月に攫われそうになったり、11月には不良グループを嗾けられたりして。」


『ちょ、・・・ちょっと待ってくれ、梨桜。

 それは確かなことなのか?

 なんか信じらんねーんだけど。』


「うん。いきなり言われても信じられないよね。

 でも、確かなの。両方警察沙汰にもなってね。

 ただ、証拠が不十分だったみたいで、本郷君は捕まってないの。

 もしだったら、携帯とかで調べてくれたら分かると思うし。」


『いや、信じる、信じるよ。

 わざわざこうして・・・その・・・嫌ってる俺んとこに電話してくれたんだもんな。』


「あ。その、ごめんね、戸田君なんか怖かったから。

 避けてばっかりで。」


『いや、俺の方こそなんか虐めたみてーになっちゃって、ゴメン。

 そいでさ、俺は何したらいいんだ?

 あいつにガツンと言ってやろうか?』


「あのね、落ち着いて聞いて欲しいの。

 今、とてもそう言う状況じゃなくなっててね。

 私の知り合い二人も、私のせいで事件に巻き込まれちゃって、今さっきやっと警察から帰って来たとこなんだ。」


『マジかよ・・・。』


「ごめんね、友達の事悪く言っちゃって。

 それで、今本郷君って、戸田君の家にも入ったりしてるんだって聞いたけど、本当?」


『あ、あぁ。あいつがなんかその方が便利だとか言うし、親たちもあいつを信頼してるし・・・。だけど、なんでそれ知ってんだ?』


「ほんとにごめんね、いろいろ。気持ち悪いよね。

 彼を見張ってた人から聞いたんだ。

 それで、彼が私にしたいろいろなことの証拠が戸田君のパソコンにあるらしいんだけど、ちょっとだけ貸してほしいなって。警察官に。」


『分かった。今からそっち行く。』


「えっ?だってそうしたら、明日の学校が・・・」


『そんな大ごとになってんのに、学校なんて行ってらんねーだろ。』


「うん。分かった、ありがとう。

 あとね、家や本郷君には絶対連絡しないで。

 パソコンの中身消されたりしたら困るから。」


『あぁ。分かってるって。1時間ちょいでそっちまで行けるし、信濃青山駅で待っててもらっていいか?』


「うん。分かった。8時には駅にいるね。」


・・・ふぅ。

・・・疲れた。けど良かった信じて貰えて。


「お疲れさん。こっちに来てくれるみたいだな。」


「うん。1時間ちょっとって言ってたから、8時過ぎには信濃青山駅に着くと思う。」


 私は本当に安堵して、天井を見上げた。

蛍光灯の光がこんなにも暖かい。


お立ち寄り頂きありがとうございました。


今後ともどうぞ良しなに。m(__)m

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