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突然ですが、娘ができました。2  作者: ほととぎす
序章
1/64

初恋はいつ?

お父さんの初恋はいつ?


そんな風に娘に聞かれたら・・・?

《突然ですが、娘ができました。2 三年生編》


  【初恋】


「ねぇ、お父さん。」


 横から梨桜が話しかけてくる。

今でもたまにこうして、こっちで寝ている。

私たち父娘にはまだまだこうして話す時間が必要なのだろう。

共に過ごしてきた時間が圧倒的に少ないのだから。


「ん?」


「お父さんの初恋の話が聞きたいな~」


「初恋か。」


 初恋、おそらくあれがそうだったのだろう。

深く心に刻まれたままの遠い記憶。


小さいころ濃く短い時間を一緒に遊んだゆうちゃん。

すぐ向かいのアパートに住んでおり、わずかの期間ですぐに引っ越して

行ってしまった彼女。


「小さいころだな・・・

 小学校に入る前だ・・・

 近所に住んでいた同い年の、『ゆうちゃん』

 多分それがお父さんの初恋だ。」


「ふ~ん。

 どうなったの?」


「すぐに引っ越して行ったんだ。広島に。

 必ずまた会うと約束したのにな。

 結局一度も会わなかった。」


 そう、行く手立ては全くないわけではなかったはずだ。

親にねだれば1度くらいは連れて行ってくれたかもしれない。

だが、結局私はそれをしなかった。


「そっか~。

 泣いたでしょ、お父さん。(笑)」


「泣いたな。」


「『ゆう』ちゃんじゃなく『ゆい』ちゃんなら良かったのに。(笑)

 あ。ねぇ、ゆうちゃんの名前は、『ゆう』っていうの?」


 ゆうちゃんの名前、・・・名前は何だったんだろう。


ずっと『ゆう』ちゃんだと思っていたはずだ。だが、どこかで父親が

彼女の名前を呼んだ時、それが本名だったんだと思った記憶がある。

だがそれは『ゆい』だったのだろうか?


なんとなくだが違う気がする。


それから、ゆうちゃんの名字は「さがわ」だった。

それは覚えている。


「『ゆう』じゃなかったな。

 だけど本名は・・・思い出せない。

 ただ名字は『佐川』だったから、残念だけどお母さんじゃないぞ。」


「そ~う?

 お母さんのお父さんとお母さんは亡くなってるから、ひょっと

 したら苗字も変わってるかもしれないよっ?


 前が、『さがわ』だったりして~。」



 そう、唯の父は若くして亡くなり、

女手一つで育てていた母親も亡くなり、

彼女は母親の実家に引き取られたのだと、梨桜が前に語ってくれた。


 その祖父母も梨桜が生まれた頃には既に高齢で、直接会わないうちに他

界していたそうだ。だから唯の病気が重くなるに従い、本当に生きてい

く術がわからなかったと、この子はそう言っていた。


 実家に引き取られ、名字が母親の元の姓に戻ったとしたら?

それが『八月朔日』だったとしたら・・・?

それ以前の名字が『佐川』だったとしたら・・・?


確かにその可能性は完全には否定できない。


限りなく『ゼロ』には近いが。


しかし・・・


「もし、『ゆう』ちゃんがお母さんならそれはもう確実に運命だな。

 ていうかな、梨桜。

 だったら俺はあの当時の俺をぶちのめしに行くぞ。(笑)」


「初恋の人を忘れちゃってたなんて、自分を許せない?」


「許さない。(笑)」


「アハッ。」


「そういえば、梨桜。突然そんな話をしてくるってことは、

 好きな子でもできたのか?」


「ううん、ぜんぜん。

 あっ!、去年一回だけ告られたんだよ!

 でも、・・・私はまだまだ恋愛は早いかな~。」


「そっか。」


「ほっとした?」


「ほっとした。」


「ぷっ。

 じゃぁ、そろそろ寝るね。

 おやすみ。」


「うん。おやすみ。」

お読みいただき、ありがとうございました。


誤植、感想など宜しくお願いします。

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