第六十五話 段蔵の弟子 その三
急いで書いてしまったため、ちょっと粗い描写になっちゃってるかもしれません
「あれってなんだよ?」
俺は改めて段蔵に聞く。
「北条小田原攻めの際、主と大殿は矢と弾の降る中で呑気に酒を飲んでいたではありませぬか。尚且つ八幡原での武田本陣への突撃と脱出···この話は関東、甲斐だけでなく、畿内にまで伝わっておるようですな」
「いや、あれは政虎に言われて仕方なく···」
「ですが、既に越後の民にはこの武勇伝が広く伝わっておりますぞ」
「やはり本当だったのですね! 流石は主!」
「越中攻めや古河御所も主様と師匠でやられたのですよね?」
二人が興奮ぎみに聞いてくる。
「ま、まぁ···俺は一緒に行っただけでほぼ何もしてないんだけど」
俺は段蔵に顔を寄せ、声を潜めて段蔵を問い詰める。
「お、おいお前···! 何でこの二人、こんなに初期好感度が高いのさ!?」
「かっかっか! まず主はもはや、この越後で知らぬものはいない有名人でありますからなぁ。それにこちら方が主も使いやすいでしょう? ま、精々残念がられないよう気張ることですな···おや?」
段蔵は俺の傍から離れる。
「どうかしたか?」
「話の途中ではありますが、どうやら客が来たようですぞ」
「月夜、迎えに行きなさい」
「はい」
月夜さんは俺に一度礼をすると、席を立った。
戻って来た月夜さんの後ろについて入ってきたのは政虎だった。
「景亮、少しいいだろうか?」
政虎はどこか急いているような感じがした。
「あぁ、いいけど···どうした?」
「これから姉上様の元へ出掛けるのだが、そなたと絶殿にも付いてきて欲しいのだが、頼めるか?」
ほぉ、綾さんの元へ? 何だか珍しく思うのは、いつもは綾さんが此方に来ているからだろう。
「それで···何をしに?」
「義兄上から姉上様が倒れたと聞いてな···姉上様の見舞いだ」
何と! 綾さんが!?
「了解! すぐ支度するからちょっと待ってて! 段蔵、絶さんにも今の話を伝えてくれる?」
「であれば月夜を向かわせましょう。弥彦は馬を用意せい。拙者は主の支度を手伝いましょう」
「よろしく!」
俺の返事に三人は頷き、部屋から出ていった。
準備を終えた俺と政虎、段蔵の三人で屋敷の前で絶さんと馬が来るのを待つ。そんな中、段蔵がお願いをしてきた。
「主、弥彦と月夜も坂戸城へ連れていってはもらえませぬか?」
「え? いいけど···どうして?」
「いやなに、あの二人の訓練の一環として護衛と行軍時の動きについて実地訓練をしようかと思いましてな」
「なるほど···了解。よろしく頼むよ」
そんな話をしていると絶さんと月夜さんがバタバタと屋敷から出てきた。月夜さんの手には大きな荷物がある。
「お待たせして申し訳ありません皆様!」
「来たか絶殿。では後は景亮たちの馬を待つばかりだな」
政虎はいつでも動き始められるように、連れてきた数人の与力に指示を出す。
それから数分もせず、弥助くんが二頭の馬を連れてきた。その馬は俺と絶さん用だ。
「では出発するぞ!」
政虎を先頭に坂戸城へと急いで向かった。




