久しぶりの謁見 5
問題の解決、そして次の方針が決まったので解散となった。
正直すぐさま帰りたかったが、さすがに疲れたので一泊し、明日の朝イチで帰ることにした。
※ ※ ※ ※ ※
「なんで疲れてるんだ。ダンジョン調査の方が疲れるだろう」
「あのなボゥロ、オレは独りが好きなんだ。今日だけで知らない人に何人会ったと思う。そっちの方が、気疲れするんだよ」
「慣れだと思うけどなぁ。帰りは飛行機にしないか、数時間ですむぞ」
「3日間安心できる列車か、数時間だけ苦手な飛行機を我慢するか……」
「ちなみに列車を選ぶなら、不特定多数の人と一緒にいる一般車両だからな」
理事長室のソファで究極の選択を迫られていると、部屋を出ていたディフィが戻ってくる。
「サーチ、泊まるところの用意ができたよ」
「……飛行機にするよ」
「はあ? 泊まるところはここの施設だよ」
「こっちの話だ。今いくよ」
※ ※ ※ ※ ※
5階建ての財団本部は、1階が受付・ロビー・一般事務所、2階が簡易宿泊施設と食堂、3階と4階は、なにか大きな設備を建造中らしい。
宿泊施設まで案内してくれるディフィについてきながら、この3日間世話してくれたのを思い出す。
アンのためとはいえ、かいがいしく世話をしてくれるので、ボゥロに「ディフィって仕事はできるわ、強くて働き者だろ。そのうえ世話焼きで家事もやれるんだから[いい女]ってやつじゃないか」と話したことがある。
ただ同性愛者で少女が好みというのが、男に興味がない理由だった。
「ほら着いたよ。サーチの部屋はここ、夜はみんなで食べるから、それまで自由。だからって迷子になるんじゃないよ。時間になったら呼びに来るから。どうせベッドで横になるんだろうけど、その前にスーツは脱いで、そこのハンガーにかけること。皺にしたら承知しないからね」
「わかったよお母さん」
※ ※ ※ ※ ※
言われた通りにして仮眠をとり、呼びに来たのでレストランの個室でアン、ディフィ、ボゥロの4人で食事。
1年前の探検のこと、ここに来るまでの珍道中、そしてクレマ教授との会食であったことを話す。
独りが好みとはいえ、ともに危険を乗り越えた相手との時間は楽しかった。
食事が終わるとディフィとボゥロは自分の住まいに、オレは財団本部まで送ってもらい、アンも自分の屋敷まで帰っていった。
その夜のことである。
※ ※ ※ ※ ※
用意されたパジャマを着て寝ていると、ノックの音がした。
「誰だい」
「開けるぞ」
ロックを外され、中に入ってきたのはガウン姿のアンだった。
「アン──いや、シックスか」
「そのとおりだ。少し邪魔するぞ」
後ろ手でドアをロックすると、ガウンを脱いでこちらに来る。
透けて下着が見える寝間着──ネグリジェというやつらしい──で来るから慌ててベッドから飛び降りる。
「なんの真似だ」
「そりゃこっちのセリフだ。なんのマネだよ」
「警戒するな。話をしにきただけだ」
「アンは? 起きてるのか」
「今は寝ている。今から話すのは従者サーチと私だけの秘密だ」
「……アンに話せないことか」
「そうではないが──とりあえず座らせてもらうぞ」
さっきまでオレが寝ていたベッドに腰掛けるので、オレは備え付けのイスに座る。
「そう警戒するな、まったく──夜中に女性が忍んで来たんだぞ、男なら喜ばんか。
話というのは子孫アンのことだ。私のことはともかくアンにはそう邪険にするな。
あれで繊細なところがあるから、お前のひと言で一喜一憂している。先祖としては可哀想で見ておられんのだ」
昼間泣かしたことを思い出してしまった。
「それはまあ……悪かったと思ってるよ。でもオレだけのせいじゃないだろ。シックスだって」
「そうだな。負担をかけていることは気にしている。だがまあ責任逃れをするわけでは無いが、これは運命だと思っている」
「運命だと」
「不思議に思わないか? 神話時代から今まで私が復活することはなかった。
当然だろう、廃墟にわざわざ探しに来るやつはいないのだから。
だが、私の子孫が現代まで絶えることなく続き、その子孫が探しに来た。
しかも古に絶滅したはずの亜人の血を引く者とともに」
「言われてみれば……」
「ましてや異能力者がふたりもだぞ、おかしいと思わないか」
「偽ジョンと一緒にされるのは心外だが、たしかにそうだな。オレは他の異能力者に会ったことがない」
「私たちの出会いは何かあるはずだ。それが何かは分からないが……」
「偶然……にしては出来すぎか」
「ああ。そして私には[彼の地に行きたい]という強い望みがある。おそらくそれに呼応した何かがあるのだろう。だからなサーチ」
シックスが座り直してオレに正対する。
「私はともかく子孫アンを護ってやってほしい。この子の気持ちは知っているだろう、応えてやれとは言わんが大切にしてくれないか」
それだけ言うと深々と頭を下げる。
「面倒だ、関わりたくねぇ」と普段なら言うところだが、気位の高いシックスがここまで頭を下げられると断りにくい。
迷いに迷ったあげく言えたのは、
「……善処するよ」
という言葉だけだった。
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